第32ページ 40層ガーディアン「冥界の番犬」
昨日だけでアクセス数が一昨昨日の十倍くらいになってました。
何があったのでしょう?
やっぱり話数ですかね?
とにかくありがとうございます。
感想や指摘等遠慮なくどうぞ。
至らぬ点も多々あると思いますが、これからもよろしくお願いします。
サラの発言を『』に変更しました。
それに伴い過去の話も『』に変更、言葉遣いなど微修正しておりますが、内容は変わりませんので再読の必要はありません。
「おいおい…」
「帰る?」
『帰りましょう』
「帰った方がよいかと思います」
40層に降りた俺たちを待っていたのはだいたい100m×100m程の広さの空間。
壁全面に松明が焚かれ、本来暗いであろうその部屋を明るく照らす。
その部屋のちょうど真ん中。
うずくまる大きな黒い影。
俺たちが降りてきた気配に気づいたのか、のっそりと巨体が立ち上がる。
四本足の大きな獣。
黒の体毛に一目で危険とわかる爪。
何より三つあるその頭が、その獣の名前を知らしめていた。
全知眼で視るまでもない。
俺でも知っているその獣は
「ケルベロス…」
「ガァルル」
[ケルベロス]ランクS+
三つ首を持つ冥界の番犬。
三つの頭はそれぞれ異なった意思を持つが、戦闘時は意思を共有する。
太陽の光が苦手なため、地上に現れることはない。
肉を喰らい、魂までも喰らうその食欲が満たされることはない。
「シュウ…みんなを連れての転移は時間がかかる。時間稼げる?」
「無理だ!諦めろ!来るぞっ」
「「「ガルルルゥゥゥ!!!」」」
猛然としてケルベロスが雄叫びながら突進してくる。
どうやら時間をくれる気はないようだ。
迫り来るその巨体を受け止めるようなことは俺たちの誰にもできない。
俺は左に、ベンはトマスを抱えて右に、サラは上へと緊急退避する。
ケルベロスは急停止できなかったようで階段の入口へと突っ込む。
ドンッというものすごい音がしたが、ケルベロスは全く堪えた様子がない。
「くっトマス、自分の身だけ考えて下がってて!」
「申し訳ありませんベンジャミン様!」
トマスが自分の周囲に風の防壁を展開、できるだけ遠くへと離れていくが、実際あの程度の防壁では意味をなさないだろう。
『風よ!』
「奔れっ〈光矢〉!」
サラの生み出した旋風と俺の生み出した5本の光の矢がケルベロスへと命中した。
しかし、それも効果がないようで何か当たったかという感じでブルブルと首を振るだけだった。
『絶対に闇属性の魔物なのに光魔法が通じないなんて…』
魔物にははっきりと分かれているわけではないが、属性と言われるものがある。
わかりやすいものもいればわかりにくいものもいるが、ケルベロスはおそらく闇属性だろう。
にもかかわらず光魔法が効かなかったことにサラが戦慄している。
俺も少なからず驚いたが、すぐに意識を切り替える。
ケルベロスがこちらに向かって走ってきている。
一瞬、腐竜と戦ったときのようにかわしながら斬ろうかとも思ったが、体躯が違いすぎるため紙一重で避けるということができない。
止むなく大きく回避を行うことになるが、今回はそれを見越していたのか、一つの頭が俺の避けた方向へと躍り出る。
「チッ!?」
「ガルゥッ!」
大きく口を開け、俺を噛みちぎろうとしてきている。
避けた直後で態勢が整っていない俺にはもう一度回避することができない。
ヤバいと思った瞬間
「はぁ!!」
「ギャンッ」
いつの間にか転移してきていたベンが俺に迫っていた頭に横から蹴りを叩き込んだ。
その間にどうにか態勢を整え、斬鬼を振るう。
「ギャッ」
目元を切りつけるが、浅かったようだ。
しかし、斬鬼の刃は通るな。一安心だ。
『はぁぁあ!!』
更に横からケルベロスの胴に強力な突風が吹きつけられた。
少しの間粘っていたが、耐え切れなくなったのか、ケルベロスの巨体が吹き飛ばされる。
が、ケルベロスは空中で態勢を整え、ズザザザザと音を立てながらも難なく地上に着地した。
「悪い。助かった」
「遅れてごめん」
『あんなのどうすればいいのかしら』
視線をケルベロスからそらさずに会話をする。
「何かいい手は?」
『空間魔法はどうなの?愛しい子』
「ダメ。あいつの魔力に干渉されて飛ばすのも割り込ませるのも無理」
空間魔法は強力だが、もちろん制限がある。
そのひとつが他者に作用させるときの魔力干渉だ。
他人を飛ばす場合、相手が飛ばされることに同意していればすんなりいくのだが、敵を飛ばす場合は相手の魔力をかなり上回っていなければならない。
そして割り込ませるというのは相手の体内などに異物を直接転移させる方法。
空間魔法は転移先に現存する物体を押しのけて転移が実行されるため、他者の肉体に直接転移させてしまえば、結果は火を見るよりも明らかだ。
だが、この場合も相手の魔力を上回っていなければならない。
今回の場合はケルベロスの魔力がどうやらベンや俺と同等以上にはあるらしく制限にかかりそういった方法が使えない。
まったく厄介な。
「土の精霊よ、我に力を貸したまえ〈土精霊の槍〉」
ベンが土精霊へと願い、精霊魔法を行使。
地面から無数の刺が生まれ、ケルベロスの腹に直撃した。
「「「ガルルッ!?」」」
「やったか!?」
土煙が立ち込める。
サラが魔法を使うのは見ていたが、ベンが精霊魔法を使うのを見るのは初めてだな。
『いいえ…』
土煙が晴れていき、そこには破壊された土の刺と、ダメージを受けたもののまだまだピンピンしているケルベロス。
「土属性もダメか…」
「その身を焦がし舞い上がれ〈炎鳥翔華〉!」
俺の作り出した炎の鳥が踊り出る。
だが、上級魔法並の威力は出たと思うそれにケルベロスは突っ込み、ダメージを受けながらもかき消してた!
そのままこちらに向かってくる。
ベンが転移し、俺とサラは風で浮き上がることでそれを避ける。
急停止し、ケルベロスは忌々しげにこちらを見てくるが、届かないことはわかっているのか見てくるだけだ。
「どうするよ」
『炎も効果なしとはね。そうなると地味に削っていくしかないんじゃないかしらね』
「しかないか」
俺とサラが今後の方針を決め、どうやらベンも同じ結論に達していたようで風でできた矢が飛んでくる。
それは寸分違わず飛び、ケルベロスの頭に命中する。
が、やはり際立ったダメージは与えられていない。
「…サラ、あいつの目に当てられるか?」
『かなり難しいわね…でも、やってみるわ』
「頼む。足止めくらいはしておく!」
俺はサラにそう言うと、ベンに向け走り出していたケルベロスの前へと飛び出し、ケルベロスの足元に水魔法を使い泥状態にする。
今度は土魔法を使い、どうにかケルベロスの速度を緩めることはできた。
しかし、完全に止めることはできない。
そこへサラが作った風の矢が飛んでくる。
何本かの矢が頭に命中し、その内の一本が目に突き刺さった。
「ガルルルルゥゥゥ!?」
「よしっ!」
初めてダメージらしいダメージを与えられた。
ひとつの頭のひとつの目に過ぎないが、潰したことも大きいだろう。
追い討ちのように、ベンも風の矢を放つ。
今度は足の指の付け根へと命中したようだ。
「「「ガルルルウゥゥッッ!?」」」
どうやらわかってきたな。
「ベン!サラ!こいつ、身体は頑丈なようだが局所的に脆いところがある!目や指の付け根なんかだ!そこを狙え!足止めは俺がする!」
「了解!」
『わかったわ!』
「大地よ、その雄大な力を今解き放て!〈剛地剣〉!」
地に手を付き、詠唱により更にイメージを固めながら魔力を通す。
イメージ通り、無数の剣が大地から突き出て、まるで柵のようにケルベロスを囲む。
この程度の障害など一瞬の足止めにしかならないとは思うが、それでいい。
その一瞬の間に、ベンとサラが生み出した無数の風の矢が降り注ぐ。
下手な鉄砲なんとやらだ。
「「「ガルルルゥ!?!?」」」
これにはさすがにこらえたようで、ケルベロスの悲鳴が聞こえてくる。
着々とダメージを蓄積させる。
どれくらいの時間が経ったか、全員魔力が付きそうになる頃にはケルベロスはボロボロの姿で立っていた。
しかし、まだ立っているのだ。
倒れるまで油断はできない。
「これで決める!サラ!」
『ええ!』
「我と契約せし風の精霊よ!我の魔力を糧に限界を超えよ!」
『我と契約せし主よ!我の力を使い、汝の力と成せ!』
「『来たれ!全てを蹴散らす嵐の戟よ!風精霊の災戟!!』」
ベンが意識して通常渡している魔力よりも多く魔力を渡し、更にサラ自身の魔力と同調させて放つ精霊魔法。
契約した精霊との高い信頼関係と、相手の魔力に完全にシンクロさせる魔力操作能力が必要となる取得困難な上級合同魔法。
生み出された強大な力を持つ戟は、既にボロボロの状態のケルベロスの身体を貫き、衝撃を辺り一面にまき散らしながら、地面へと食い込んだ。
強靭であったケルベロスの肉体も度重なる攻撃により限界を迎えており、最後の一撃とばかりに叩き込まれた魔法により力を保っておれずドシンと音を立て崩れ落ちた。
断末魔の叫びも上げず、ケルベロスは消滅していく。
あとに残ったのは皆似たように満身創痍の俺たちだった。
ここが部屋で本当によかった。
もう無理だ。
野営の準備はトマスに任せよう。
戦闘が終了し、張り詰めていた気を解いた俺たちはドサりとその場に倒れ込んだ。
迷宮探索シーンが内容薄いとご指摘いただきました。
私としてはカットしたら味気ないけれど、このメンツですのでそんなに大したことない戦闘を長々と書くよりテンポ重視でさっさと苦戦するところにという感じだったのであんな感じにしていたのですが要望があるなら細かく描写したものに差し替えるかもしれません。
差し替えた場合も戦闘描写や細かい描写が増えるだけですので特に再読の必要はありませんがいかがでしょうか?
ご意見お待ちしております。




