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とある冒険者の漫遊記  作者: 安芸紅葉
第二章 友との出会い「深淵の森」編
34/358

第29ページ 21層から29層

「お疲れ様ー」

「今回はベンがやった方が早かったんじゃないか?」

「そうかもね」


転移が使えるベンなら空を飛ばれたところで問題ないだろう。

これからのことも考えて空中戦の訓練はしておかないといけないな。


今回も少しだけ休憩を取り、21層へと進む。

降り立ったそこは


「墓地?」

「墓地だね」

「墓地ですね」

『墓地ね』


21層は外国風の共同墓地の様相を呈していた。

その層は暗く、まるで夜のようであった。


「これは・・・」

「出るね」

「出ますね」


そんな声が聞こえたのかどうか。

どこからか呻き声が聞こえてくる。


「っ!?」


地面が持ち上がったかのような光景。

しかし、持ち上がったのは一時、土だけであり幾本もの腕が地中から出てくる。

次いで頭、身体、と現れ、ついにゾンビの全体が出てきた。

その数は100には満たないだろうが少なくはない。


「…焼き払う」

「いや、やめておいたほうがいいかもしれない」

「どういうことだ?」

「土から火薬の匂いがする。この層、火気厳禁だよ」

「チッ」


炎は使えない。

となると光か。


「それもやめておきましょう。どんどん追加されてますが、土の下に光は届かないでしょう。キリがないです」

「じゃあどうするんだ?」

「…サラ、お願い」

『ええ。飛ぶわよ』


サラの風が俺たちを包む。

ゆっくりと4人の身体が浮き上がり、


「うわっ!?」


一気に加速した。

まるで小さな竜巻のような暴風となった俺たちはゾンビたちの群れを突っ切った。

が、俺は目が回ってそれどころではない。


『ふぅ』

「ありがとう、サラ」

『お礼はいらないわ、愛しい子。私の力はあなたの力よ』


二人が微笑み合っている様子が視界の隅に映るが、それどころではない。

風酔いというのは初めてだ。


「いつかは慣れますよ」


おそらく体験談なのだろうトマスが背中をさすってくれながら言ってくる。

こいつも苦労してるんだな。


「意外だね」

『そうね、だらしないわ』


誰のせいだと思っているんだ。

やるならやるで先に言え。


文句を口に出すこともできず、俺は恨みがましくベンたちを見るが、涼しい顔してやがる。


21層から25層はかなり大変だった。

もっとも敵自体はたいしたことない。

問題は仲間だ。


今までの迷宮や洞窟のフィールドとは違い、空間がある21層よりはサラの風で空を飛んでの移動となったのだが、これがひどい。

容赦というものを知らないのか一切スピードを緩めなかった。そのおかげでこっちは散々だ。


ベンとトマスは平気そうな顔をしている。

やはり慣れなのか。


様子が変わったのは26層からだ、墓地は墓地なのだが空を飛ぶ魔物が出てくるようになった。

一度巻いてしまえば追ってはこれないし、風のまま跳ね飛ばすこともできるのだが、一斉に襲ってくるアンデッドバットなどもいて視界がふさがれることもでてくる。

仕方ないからと迎撃に切り替えたが、26層を抜けるまでに疲れきってしまった。


と言うのも、そもそも下層へと続く階段の場所がわからないのだ。

迷路や洞窟は一定の道順が存在した。

それなりに入り組んではいたが道を間違えれば戻ればいいだけの話だった。


だが、この墓地フィールドはそういうわけにはいかず、フィールドの端から端まで探さなければならない。

偶に、すぐ見つかることもあるのだが、そんなことは希だった。


魔物の数も多く、疲労が溜まっていく。

俺とベンとサラはまだいいが、トマスはそろそろ限界ではないのだろうか。

それでも何も言わずに付いてくるあたり、さすがといえる。

従者の鑑だな。


ここらで切り上げるべきなのだろうか。

だが、まだ謎の魔力の素を見つけていないのだ。

下に行くほどに強くなっているようではあるが。


ベンも心配したようでトマスへと声をかけていたが、気丈にも大丈夫だと言い張り、出る気はないようだ。

こうなったら聞かないのはもうわかっていたので、俺たちはゆっくりと階段を探していた。


そして遥かに長い時間をかけ、ようやく30層へと続く階段を発見した。


本当なら、そろそろ野営の準備をするのだが、墓地で野営なんて死んでも嫌だ。というのが俺たちの共通意見だった。

まぁ墓地にいる人は死んだ人なので毎日野営状態ではあるのだが。


21層から29層で出会ったのはゾンビ、レイスに加え


―・―・―・―・―・―


[ゾンビ・リーダー]ランクC

通常のゾンビよりも強靭な身体を持つが、知能は変わらない。

食欲に従い行動する。


[グール]ランクB

悪しき力を取り込み、アンデッドとなった人間の末路。

強大な力に自我を失い、生きる屍となった。

ゾンビよりも遥かに強い肉体を持つ。

自我は無いが、若干の知性を有する。


[レイス・マスター]ランクB

レイスを操る死霊。

複数のレイスを操り、生者を取り込むことで力を増す。


[レッド・レイス]ランクC

炎を操るレイス。

物理攻撃は透過し、火に耐性を持つ。


[ブルーレイス]ランクC

水を操るレイス。

物理攻撃は透過し、水に耐性を持つ。


[リッパー]ランクC

鎌を持ち人を襲う死霊。

その姿は視認しにくく、不幸の象徴と言われる。


[シャドウ・リッパー]ランクB

影に潜むことのできるリッパー。

大鎌を持ち、背後からひっそりと首を狩る。

発見することは困難。


―・―・―・―・―・―


などだった。

このうち厄介だったのはレイス・マスターとシャドウ・リッパー。


レイス・マスターは持っている鈴でいくらでもレイスを召喚できるようで、倒すのに時間がかかってしょうがなかった。


シャドウ・リッパーは直前まで危機察知にもひっかからず、気づくのが遅れてしまう。

サラが敏感に反応してくれるのでありがたいが、自分一人なら何太刀かもらっていたかもしれない。

それに、ゆらゆらと影のようで斬撃が効きづらいというのも苦戦した原因だった。


というわけで、これまでとは比べ物にならないほどの疲弊を残し、俺たちは30層へと足を踏み入れる。

さっさと倒して野営としよう。

40層超えるまではポンポン行きます。

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