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とある冒険者の漫遊記  作者: 安芸紅葉
第十一章 最も危険なピクニック「目的地は魔王城」編
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第291ページ 切り札

「覚悟はいいか?」


重く低い声が響いた瞬間。

この場の誰もが理解した。

今この瞬間、形勢は完全に逆転したと。


「…アレックスさん、ここをお願いしていいですか」


そんな中で、ベンが決意を込めて発言する。


「どうするつもりだ?」

「…師匠だけは、俺が」

「できるのか?」

「やります」


死んだ筈の師。

敵となってしまった師をこのままいさせるわけにはいかない。

ここで決着をつけなければ。


その思いを、七星剣の二人とエイブラハムははっきりとわかっていた。

ビオは、この流れはまずいとこの隙にと行動しようとするが


「動くな。何もするな」


アレックスが視線と共に放った覇気によりその場に縫いとめられる。


「ぐっ」

「ぬっ」


それは横にいたシュテルクも同時にであり、二人ともが改めて理解した。

この男には、勝てないと。


「場所を変えようか」


動かない二人を見て、エイブラハムがゲートを開く。

ベンの方をチラリと見てその中へと消えていくエイブラハムのあとを、ベンも迷うことなくついていく。

その後ろ姿に懐かしさを覚えながら。


---


「ねぇねぇ、おかしくない?」


北の戦場、ラビエスの前には蹂躙された魔物たちの死体が並んでいた。

ラビエス自身も幾多の傷を負い、騎乗していたテンは、その身を地面に横たえていた。

胸が動いているため死んでいないことはわかるが、足を傷つけられており癒えるまでは動くこともできないだろう。


「君らなんでそんなに強いのさ?僕らある程度この国のことは調べてきたけど、君らの情報まるでなかったよ?ビオさんがこんなに強い存在見逃すとは思えないんだけど…」

「我々の存在は秘匿されていましたし、王都を離れていましたから」


一方で、クイナはその身にかすり傷すら負っておらず、イザークは傷だらけであるが、重傷なものは存在せずどこか満足そうに顔を緩めていた。

久しぶりに暴れられてスッキリしたようだ。


「諦めてください。あなたでは、我々には勝てませんよ」


それは紛れもない事実だった。

これまで放出したものも含めるとラビエスは既に従えている魔物の9割以上を失ってしまっている。

ラビエス本人の戦闘能力は低い。


勝負はついたかのように思われた。


「これは…使いたくなかったんだけどね」


ラビエスは、一見観念したかのように見えていた。

もちろん油断はしていなかったが、クイナにラビエスを殺す気がなかったことも原因と言えるだろう。

魔力が充填され、ローブが広がる。

それは、先ほどの発動とは違い、横にではなく上。

複数ではなく、大きな一つの魔法陣が輝いていた。


「この魔力…今すぐ発動を止めなさい!」

「もう遅いよ」


殺害も止む無し。

そう判断したクイナがラビエスに近づこうとした瞬間、それは現れた。


「Gyaooooooo!!!」


魔法陣から最初に見えたのは、白く鋭い牙。

雄たけびを上げながら現れたのは真っ黒な竜。


「黒竜系・暗黒竜(ダークネスドラゴン)ジーヴァ。僕の言うことなんてまったく聞いてくれない問題児だよ」


暴力の権化が顕現し、その咆哮を轟かせた。


「イザーク…いけますか?」

「…やってみるど」


目の前に現れた竜は、自分たちが監視していた火竜たちよりも強い存在だとわかっていた。

それでも、二人は逃走という手段にはうつらない。

それを選んでしまえば、この竜が次にどういった行動にでるかわからない二人ではなかった。


「任務中にはなかった竜との闘いですね」

「怖か?」

「ええ、ゾクゾクします」

「…おいにはお前さんの方が怖か…」


口角を釣り上げたクイナを横目で見て、イザークは恐れを感じながら呟く。

長年一緒にいた同僚の久しく見なかった本性を、彼は見なかったことにした。


「では行きますよ、イザーク」

「うんだ!」


二人は魔力を高め、それぞれの武器を構えた。

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