第287ページ 援軍到着
北の戦場。
王国魔導士長ポラリスと、魔国六魔将第五位メーア、第六位ラビエスの戦闘は魔物の戦闘による魔力の消耗もあり、ポラリス劣勢のまま進んでいた。
「ほらほらほらぁ!あの時のような軽口はどうしたのぉ!?」
「あなたそんな下品な喋り方をする人でした?」
「このっ…!口だけは達者なようねぇぇぇ!!」
氷と闇が衝突するその戦場で、ラビエスはむしろ目の前で繰り広げられる女同士の舌戦に引いていた。
口はおろか魔法を挟むのもビビるほどに。
「ラビエス!!何してるの!?」
「い、いやぁ…僕ここにいるの嫌だなぁって…」
「馬鹿なこと言ってないで早く手を貸しなさい!」
「は、はい!」
普段は軽口を叩きあう間柄であるのに、ラビエスは従順にメーアの言葉に従い魔法を使う。
ポラリスの足元が膨れ上がり、地面から太く鋭い木の根が飛び出した。
「木属性魔法!?」
「さすが偉大な魔導士、レア魔法でもよく知ってるね!ルートウィップ!!」
「ダークウィップ!」
「くっ!」
闇と木の根が鞭となりポラリスを襲う。
ポラリスは氷の壁を出しながらそれらを防ぐが、魔法への親密性が人族と魔族では全く違う。
前回戦った時も感じたことだが、魔法を構築する速度が段違いだ。
魔族の中でも最上位といっていい力の持ち主である二人に対し一人で対応できているポラリスも人族としては十分なのだが、対応できているだけであり反撃の隙はまったく伺えなかった。
(まずいですね…魔力量もあちらが上です。このままではいずれ…)
自分が負けることは大した問題ではない。
しかしもしここで自分が負ければこの二人が野放しになってしまう。
(せめて一人だけでも…)
刺し違えてでもと覚悟を決めるポラリス。
だが現状、防御をやめればその瞬間に殺されかねない。
特級魔法を使おうとすれば相手も使ってくるだろう。
そして自分よりも早く、その魔法は完成してしまう。
八方ふさがりの状況で、ポラリスはどうにか凌いでいた。
そこへ
「お師匠様ーーー!!」
大波が、闇と木の根を力技で押し流した。
ポラリスは声が聞こえた瞬間に魔法によって氷のドームを形成、流されずに済んでいた。
「いいタイミングで帰ってきましたね、シリカ」
氷越しにポラリスが見たのはこちらへと飛んでくる自分の弟子と、その後ろを駆けてくるのは弟子と同じ職務についていた者で、その更に後ろから一人地を走ってくるのもそうだったはずだ。
シリカ、クイナ、イザークの三人は、キラヴェイア火山島の監視任務を解かれ、たまたま王都へと帰還したのであった。
シュウによって火竜たちの危険性が皆無であると報告され、その後も特に問題はなかった。
それどころか魔族の襲撃など問題は多く、王国の戦力内でも上位の実力者である三人を監視任務においておく余裕がなくなったということもある。
「無事ですか!?お師匠様!」
「ええ。ですが助かりましたよ、シリカ」
ポラリスに褒められ嬉しそうに顔をほころばせるシリカ。
その表情はすぐに引き締められ、敵へと向かう。
「お師匠様、こいつらは」
「魔族、それも六魔将という魔王軍の幹部です。シリカ、それに皆さんも、手伝っていただけますか?」
「はい!」
「承知しました」
「うんだ!」
四人は魔族へと向き合う。
その魔族はというと、シリカの大波によりびしょ濡れにされたことでプルプルと震え怒りをあらわにしていた。
特にメーアの方は。
「どこの誰か知らないけど…雑魚がいくら集まろうと敵ではないのよぉ!!」
言葉尻に合わせて、メーアの全身から闇が噴き出す。
それはメーアの体へと纏わりつき、急所部分を覆い隠していく。
闇は手首を取り巻き籠手へと腰からは大きく広がりスカート状に変化した。
「魔人兵装」
隣のラビエスも静かに結晶を握る。
魔力が彼も覆い込み、漆黒のローブと杖に変わった。
二人の魔人兵装はダルバインの物とは違い全身鎧ではない。
メーアの能力で最も特徴なのはその肢体を用いた魅了系スキルであり、それを全て覆い隠すことはむしろ逆効果となる。
ラビエスにしても肉体戦はそもそも得意ではなく、なれば動きやすく特性を上げた方がいいということでこの装いになった。
しかしながら、魔人兵装の使用法や効果などは知っていても、メーアが使うのはこれが初めてだ。
彼女が捕らえられていた間にこの魔人兵装は完成したのだから。
ラビエスにしても、動作確認や試作段階では使っているが、実戦で用いるのはこれが初めてであった。
「さぁやるわよぉ」
「いくよ」
その言葉に、四人も臨戦態勢をとる。
だがこちらも、ポラリスは既に疲弊しており、ほかの三人も王都への帰還という長旅による疲労はたまっている。
決して全快とは言えないコンディションではあったが、戦闘は激しさを増していった。
間に合わなかった…
今日中にもう一本あげます。




