表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
とある冒険者の漫遊記  作者: 安芸紅葉
第十一章 最も危険なピクニック「目的地は魔王城」編
331/358

第283ページ 王都震撼

ここから数話をかけて王都での話となります。

日曜は予定があるため更新をお休みさせていただきます。

その日、マジェスタ王国王都サンデルスは震撼した。

突如として出現した王都を囲む無数の魔物。

それも一体一体がランクB以上の力を持つ魔物たちだ。


サンデルスは騎士団、冒険者を含めその質は他の町を凌駕している猛者揃い。

しかし、それらが総出で当たったとして、被害は甚大な上駆逐しきれるかは五分五分、むしろしきれない可能性の方が高いだろう量が展開されていた。


もちろん、それは通常ならの話だ。


王都には人外と称される七星剣が三人いる。

魔導士長も含めた四人の戦力は一国の軍事力をも上回るといわれる程の者たち。


更に、B,Aランクの魔物がどれほど集まったところで破れる筈のない結界がある。

先の王都襲撃の際から、結界の強度は格段に跳ね上がり、瞬間修復機能が付け加えられた。

万が一結界が傷つこうと一瞬で再生するこの機能。

つまり、結界を壊そうとするなら一撃で破壊するしかないが、そんな攻撃は七星剣第一位アレキサンダーにも不可能と、本人は語る。


この二つの原因によって、その絶対的な存在感によって、王都の民たちは都市を囲む魔物に恐怖を覚えながらも恐慌に陥ることはなかった。


だがしかし。

そのようなことは敵側としても織り込み済みの話であった。


「どうだシェンツィアート」

「シェシェシェ!計算内の発展ですね!まぁーったく面白くもない!もう少し期待していたのですが、がっかりですよ」

「そうか。お前にとっては残念でも我々にとっては朗報だな」


魔物の軍勢の奥から王都を見下ろす六人の影。

彼らは奇妙な乗り物に乗り、空に浮かんでいた。


彼らはある目的を果たしにここへと来ている。


「なんだって俺が下手打ったメーアの救出になぞ行かねばならんのだ」

「暴れられるって喜んでたくせに」

「それはまぁそうなんだがよ…」

「すみません。俺が失敗したばっかりに」


六魔将第三席シュテルク・エスパーダ。

六魔将第四席ビオ・スパティウム。

六魔将第六席ラビエス・クーストス。

魔王軍開発部門主任シェンツィアート・カイデベルト。

六魔将第五席副官ダルバイン・クエーデ。


「計画通りにいくぞ」

「あぁ?なんだってお前に従わねぇといけねぇんだ」

「陛下の命だ」

「けっ!」


そしてもう一人。


「ごめんよ、ベン、アレックス」


人影の前にゲートが開く。

奇妙な乗り物は、ゆっくりとその中へと入っていった。


---


「状況は?」

「かなり厳しいと言わざるを得ません」


サンデルス中心王城の最上階「星天の間」。

最も安全であるからという理由で、現在全ての王族と閣僚たちが集まり会議中であった。


「やはり七星剣の方々の力を借りねば対処は難しいでしょ」


この場にいるのは王国に勤める者以外ではもう一人。

冒険者ギルドサンデルス支部支部長フィリップ・ミスティシアだ。


「現在王都にいるBランク以上の冒険者は103人、また彼らに率いられているパーティーメンバーを合わせても300人には届きません」

「外の魔物たちはいずれもBランク以上、それが群れとなっており突撃などしようものならばSランクの者でも帰ってこれるかどうか…」


冒険者ギルドではパーティー単位でもランクを付けている。

ただしそれはパーティーの連携がきちんと取れていた場合であって、今回のように分断されてしまうことが目に見えているような戦場で戦えるパーティーが一体どれほどいるのか。


「俺が出る」


そんな中、一人の男が落ち着き払った声で言った。

よく通るその声に、その場にいた者たちは一斉に注目する。


「アレックス…」

「それが一番被害が出ないだろう」

「ならば私も!」

「私も!」

「フィオナ、ベン、お前たちはここを守れ」

「そんな!いくらなんでもアレックス様だけを行かせるわけにいは…」

「俺が負けるとでも?」


口角を釣り上げ、不敵に笑うアレックスにフィオナは言葉を詰まらせる。

事実、どのような魔物の軍勢が相手だとして彼が負けることを想像できなかったせいだ。

この男ならば竜の巣からでも単身笑顔で帰還するだろうと予感させるものがある。


「敵の本命は外ではないだろう。王を守ってくれ」


アレックスは笑みを止め、真剣な表情で二人に言う。

その頼みを断れるはずもなかった。

黙って頷く二人に、アレックスも頷く。


「しかしながらアレックス様一人だけでは対応できないでしょう」


そこに、極めて冷静な声が落ちる。

フィリップはまっすぐにアレックスを見つめ、この世界有数の力の持ち主に対して事実だけを淡々と告げる。


「あの軍勢とアレックス様では勝負にならないことは事実。ですが王都は囲まれています、アレックス様が一か所で戦っているうちに他の魔物が万が一にも王都に侵入すれば被害は甚大。あなたが二か所同時に存在することはできないのですから」

「では、一方は私が担当します」


なんのこともないように言い放ったのは、今まで黙って話を聞いていた宮廷魔導士長ポラリスだった。

その言葉に、今度は彼女に注目が集まる。


「北と南を我々が担当し、東と西を騎士と冒険者で担当していただく。それならば如何ですか?」

「…確かにそれならば…しかし大丈夫なのですか?」


それはアレックスと同様に一つの方角を一人で受け持つなどできるのかという、実力を疑うにも等しい質問。

しかしそれにポラリスは顔色を変えることもなく返答する。


「得意なんです。凍らせるの」


温度が一瞬にして下がったような感覚を、その笑顔に全員が感じた。


「陛下、ご命令を」

「…うむ。其方らばかりに負担をかけて面目もないが、頼んだ」

「「お任せを」」


やることが決まったとなればそこからは早い。


軍務卿ルビウス・フォン・アームストロングは肩を回しながら足早に星天の間を出ていく。

騎士団に指示を与える為だが、あの様子では本人が陣頭に立つのであろうことはこの場にいた誰もがわかった。


続いてフィリップも冒険者ギルドへと戻る為に出ていく。

既に主要な冒険者、パーティーには招集をかけているため集まっているはずだ。


アレックスとポラリスもそれぞれの持ち場に就くため移動を始める。

その途中、アレックスはふと見知った気配を感じて後ろを振り返った。


「来ているのか、エイブ」


普段見せない寂しげな顔で呟くアレックスの声は誰にも聞こえなかった。

感想返信も誤字訂正も追いついておらず申し訳ありません。

年内一杯忙しそうです…

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ