第28ページ 20層ガーディアン「蘇りし竜」
今回も短いです。
「俺は…竜種というやつに縁があるらしいな」
―・―・―・―・―・―
[ドラゴンゾンビ]ランクA
劣竜がアンデッド化した魔物。
アンデッド化により瘴気を発し、毒を持つ。
生前よりも総合力は衰えているが、優っている部分もある。
俗に腐竜と呼ばれる。
―・―・―・―・―・―
「じゃ竜殺しさんに任せて見学していようか。戦ってもどうせ途中で持って行かれそうだし」
…ベンのやつまだ根に持ってやがる。
20層は想定通りボス部屋だった。
ただ、今回は取り巻きの雑魚はおらず、ドラゴンゾンビ単体がとぐろを巻いて待っていた。
ベンたちは、本当に手を出すつもりはないようで、部屋の隅へと移動し見学に入っている。
別に問題はないのだが、なんだかなぁ。
「Guruuuu!!!」
おっと、待たせすぎて怒ったか。
しかし、咆哮はできるんだな。
となるとブレスもあると見るべきか?
俺は斬鬼を抜き、魔力を纏わせる。
属性は火。
アンデッド系にはやはりこれだろう。
腐竜は翼をはためかせ、飛ぶ。
…おい、待て。お前飛ぶのか。
「GAaaaaaaaaaa!!!」
いきなりのブレス攻撃。
それも地竜よりも範囲が広い気がする。
寸前で回避し、なんとか避けることができた。
が、ブレスが触れた地面からジュウという何かが溶ける音が聞こえてくる。
絶対に触れるわけにはいかなくなった。
地竜は上空を旋回しながら時々俺の方を睥睨している。
思ったよりも知能があるようだ。
幸いなのはここが天井がきっちりあるということだろう。
この20層も洞窟エリアの延長なのかその容貌は大きく開けただけの洞窟だ。
ただし、一種の広場のようになっており、東京ドームくらいの広さと高さはある。
高さに関してはもう少しありそうだな。
4階建てのビルがギリギリ入るといったところだろうか?
高さに制限があるものの、腐竜が飛んでいることが問題なのは変わらない。
魔法で攻撃してもいいのだが、万が一外れた場合に落盤とかしてきそうで嫌だ。
チラッと視線を送るとベンたちは談笑中だった。
あいつら…
「とりあえずは、あいつを引きずり下ろさないとダメか」
追尾効果のある魔法を放つのはどうだろうか。
できそうな気はするが、確証がない。
そんな博打をする場面ではないな。
10層で使った光属性の魔法なら落盤の心配もないかもしれない。
しかし、これだけ距離が離れているとなるとそもそも光が届かない可能性がある。
方法は一つしかない。
「飛ぶか」
風属性魔法を利用し、空を飛ぶ。
サラの魔法を見て思いついたことだ。
実践したことなどないが、失敗してもどうってことはあるまい。
俺は上昇気流イメージし、身体を吹き上げる。
風を纏い、どうにか空中で態勢を整えることに成功した。
ぶっつけ本番だったがうまくいったらしい。
このまま腐竜に向かって飛んでいこうと、目を向ける。
「っ!!」
ちょうど腐竜がこちらに向かってブレスを吐いてくるところだった。
回避することはできたが、咄嗟だったためにいつもより多めに魔力を使い風によって回避してしまった。
まだまだ練習が必要なようだ。
ブレスを避けられた腐竜は、こちらに向かって飛んでくる。
その毒の牙により俺を害そうというのだろう。
まだうまく飛べる自信はなかったので、下手な回避などせずにすれ違いざま切り裂いてやろう。
「GuRuuaaaaa!!」
「うるさいっ!!」
腐竜が口を開き突進してくる。
ガキンという音を立て、斬鬼と牙がぶつかり合う。
「ぐっ!?」
空中での戦闘は慣れてないこともあり、衝撃を相殺しきれずに俺は下方に吹き飛ばされてしまった。
どうにか地面との衝突は避けられたが、腐竜は特に被害を受けた様子はない。
「にゃろうっ」
俺は再度上昇気流を発生させ、一気に腐竜へと近づく。
だが、腐竜の羽ばたきが思ったよりも力強いようで、腐竜に近づくほど気流のコントロールが難しくなってしまう。
「Gurau!」
「おらぁっ!!」
再度鉄と鉄がぶつかりあったような音を立て、斬鬼と牙が交差する。
今度は吹き飛ばされるようなことはなかったが、刃が入った感触もない。
「腐竜といえど牙の硬度は竜種か」
ならばと俺は更に上昇し、翼に向け炎の斬撃を放つが、腐竜は幾度か翼を羽ばたかせ、更に腕を振るい斬撃をかき消した。
「これでも…喰らえっ!」
この距離ならばと光球を生み出す。
「GuAaaaaaaaa!!??」
光は腐竜へと突き刺さったが、スケルトンたちのように即死させるというわけにはいかなかった。
だが、初めてダメージらしきものを与えられたことに満足するべきだろう。
それからは、まるでどちらが先に力尽きるかといった感じであった。
腐竜の突進を受け、ブレスを避け、牙をかいくぐり、爪と剣を打ち合わせる。
俺の光球と炎の斬撃が着々とダメージを蓄積させる。
こちらにも相応のダメージがきている気がするが、地竜戦とは違う鎧の安心感が、俺の行動を制限なくさせてくれる。
段々と風の扱いにも慣れた俺が腐竜を両断するのには、あまり時間がかからなかった。
攻撃が届かないというアドバンテージがなくなれば、俺と腐竜の力の差は歴然だったのだから。
「Gurauuuu…」
腐竜の断末魔と言えるような短い咆哮が口から漏れる。
風を操りゆっくりと着地した俺は、背後でズシンという音と共に巨体が墜落したことをチラッと確認し、静かに歩を進めた。
戦闘描写が本当に難しい。




