第279ページ 魔王の力
「ぐっ…」
振り下ろした神刀は、魔王の身体を袈裟掛けに斬り裂いた。
魔王相手に、手加減する余裕はなく、その傷はもはや致命傷となってしまうだろう。
「貴様っ…なんだそれは…!?」
「俺のスキルだ。それよりも治療を」
即死でなければ物的外傷は治癒できると判断している俺は、途中から動けない程の致命傷を負わせた上で傷を癒す方向にシフトした。
その為、先だって神から授かった新たなスキル<無限の幻夢>を使ってみたんだが、これは使い勝手がいいな。
「必要ない!」
パキンとどこかで音がしたかと思えば、魔王の身体がまるで時を巻き戻すかのように癒えていく。
「…それがお前のユニークスキルか?」
「ああ、忌々しい力さ」
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ヴァントゥース・シングレイブ 1006歳 男
種族:魔族
HP:176000
MP:8806738
魔法属性:水
<スキル>
格闘術、剣術、弓術
基本六属性魔法、氷属性魔法、雷属性魔法、無属性魔法、神聖魔法、暗黒魔法、召喚術
身体強化、魔力制御、完全回復、気配察知
覇気、完全耐性
<ユニークスキル>
「 æ–‡å—化ã ' 」
<称号>
「ajhb&aqa8#"hi?oa」、「竜殺し」、「絶望を知る者」、「復讐者」、「人族の天敵」、「魔物の天敵」、「魔王」、「頂点捕食者」、「群れを率いる者」、「不死者」、「妹狂い」、「破壊神の申し子」
<加護>
「死と眠りを司る神の加護」、「破壊神の加護」
―・―・―・―・―・―
どういうわけだか読み取れないユニークスキル。
その効果がわからず戦闘中にも使って来なかった。
最後の切り札なのかと思っていたが、実際、その通りだったようだ。
<不死>か?
いや、ユニークスキルというくらいだ。
<不死>とも違う能力だろう。
問題はその能力だけが文字化けしていることと、俺がスキルを習得できなかったこと。
<黄金の秘法>の系列であったからか。
あるいは、スキルが既に発動済みだったからか。
「さぁ、第二ラウンドといこうか?」
魔王は先程までの怪我など感じさせず、不敵に笑った。
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「がっ!?」
魔王の剣を受け止めきれず、俺は後ろへと吹っ飛ばされる。
既に<竜の化身>、<鮮血の月夜>も発動しており、今の俺が持てる全力であると言って良い。
事実、俺は既に魔王を4回殺している。
その度に魔王は、傷を癒し立ち上がってくるのだ。
そしてその度に、魔王の力は増していく。
「シュウ!」
後ろからエシルの声が届く。
チラリとそちらに視線を向けると、球体の結界を転がしてこちらに近づいてくる姿が見えた。
随分と扱いに慣れたようだな。
「兄さんの能力は、<輪廻巡る分御魂>!あらかじめ自分の魂を裂き、その魂のストック分は蘇生が可能、蘇生する度に強くなるスキルよ!」
「魔王っぽいな」
なるほど、だから殺しても殺しても強くなって生き返るというわけか。
間違えて殺す心配はなくなったが、これキリがなくないか?
「俺が何故死なないか、不思議に思っていることだろうな」
「いや、それは今お前の妹が教えてくれた」
「…なに?」
すまない、魔王。
そんな間抜けな顔をさせるつもりはなかったんだ。
「…まだ、そんな虚言が吐けるか」
「お前の能力は<輪廻巡る分御魂>っていうんだってな」
「なっ!?いや、だがお前は人のステータスを視ることができるんだったな」
そんな情報まで持っていたか。
これでエシルの存在を信じてくれればと思っていたが、そう甘くはないな。
「さて、余興はここまでだ。<召喚>魂の協奏曲」
魔王の足元から特大の魔法陣が生まれ、俺の前に数十の鎧騎士が現れた。
その全てから、魔王と同じ波長を感じる。
「俺の魂を鎧に憑依させている。全て倒せるものなら、倒して見せろ」
エシル、そんな能力聞いてないぞ?
鎧騎士たちが一斉に、俺へと進み始めた。




