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とある冒険者の漫遊記  作者: 安芸紅葉
第十一章 最も危険なピクニック「目的地は魔王城」編
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第270ページ 夢殿

ミスって別の作品に投稿してましたorz

ふと気付くと、俺は真っ暗闇にいた。

その中にあって何故か自分の身体だけははっきりと見える。


「ここはどこだ…?」


識図展開(オートマッピング)>は発動しない。

それどころか<全知>や<魔法>でさえも発動せず、スキルの全てが使えないことがわかった。


「…」


だが、俺はそれに不安を覚えず、むしろそれが当然であるかのよう思った。

おそらくこれは夢だ。


夢の中であるならば、スキルが使えないことに何の疑問もない。


「不思議な夢だな」


暗闇の中にたった一人。

それなのに心は静かで、落ち着きが感じられる。


「それはここが夢殿(ゆめどの)だから」


不意に聞こえてきた少女の声。

そしてこちらに近づいてくる人影。


「ここは夢殿。あるいは幽世(かくりよ)。あの世とこの世の間。生者と死者が交わる場所」

「誰だ?」

「私はレーシア。死と眠りの神レーシア」


吸血鬼の王、冥王ときて神様ときたか。


少女の見た目は、白いネグリジェを着た7歳くらい。

寝癖なのか金髪のウェーブがかった髪が爆発している感じで、くまのぬいぐるみでも持っていればそのままベッドから抜け出してきたようだ。


普通は神だと言われて納得できるものでもないが、その神ではない感が逆に神かもしれないと思わせる。


「その神様が俺に何の用だ?」

「我々神は、貴方とコンタクトを取る方法を模索していた。貴方が神殿に来ないから」

「あ」


そういえば来いと言われてたっけな。

完全に忘れていた。


「今、貴方の意識は深い眠りの中にある。無理な連戦により肉体面でも精神面でも貴方は休養が必要だった。それだけの、普通ならば生死を彷徨うレベルの眠り。私が介入するのは容易だった」

「そうまでして俺にコンタクトを取ろうとする理由は?」

「初めの内は、直に話して貴方の性情を知ることが目的だった」


ふぁ…とレーシアが欠伸をする。

夢の中でも寝たいというのは、さすが眠りの神か?


「今は?」

「…貴方は力を付け過ぎている。それもこの短期間において。その力と、運を我々は危惧している」

「運?」

「そう。貴方の力は確かに強大だった。しかし、その力を短期間にそこまで押し上げることができたのは、あらゆる強者たちとの出会いのせい」


確かに。

俺は今まで色んなトラブルに巻き込まれてきたが、その度に強者と敵対し、あるいは共に闘った。

そしてその度に、俺は強者の技術を力として自分に吸収していった。


「極めつけは<全知>。この力を貴方が身に付けたのは、完全に我々の予想を超えていた」


<全知>は、現状身につけている者はこの世界で一人しかおらず、その一人が身につけれたのは神々が誘導したからだという。

オリジンスキルは普通、人が自身の力で身につけれる物ではなく、<魔法>はいずれ辿り着くと思っていたが、<全知>は看過できなかった。


「<魔法>の時は、真理を知らぬ貴方がその力によって死なぬように介入をさせて貰った。けれど<全知>は一部だけ使えたとしても強大すぎる力となる。特に、知れば使える貴方にとって」


それは先のウルデルコ戦で証明された。

空間の情報を掴むことで「空間魔法」を使用可能となった俺だ。

それ以外でも<全知>を使えば使えるようになるスキルは多々あるだろう。


「故に危惧している。貴方の牙が、いつ我等に向くか」

「今のところそのつもりはないが?」

「是。けれどそれがいつまで保つかわからない。貴方の場合」


俺の性情を今まで観察した結果、俺は自身の意にそぐわないならばそれが神であろうと敵対するだろうと結論付けた。と言われる。

その時になってみないとわからないが、確かに俺が折れることはないだろう。


「それで、どうする?俺を殺すか?」

「…否」


俺の問いに対する答えは明確な否定。

フルフルと首を横に振り、少女は真剣な顔で言葉を続ける。


「貴方を殺すことも考えた。しかし、将来的な脅威であるからと貴方を殺すという結論は、我々には出せなかった。貴方の力が、我等の力でも容易に殺せ得ないものであることも理由ではある」


神からお前の力は大きすぎると言われ、少し戸惑う。

ああ俺はもう人の域ではいられないんだというのを、はっきりと自覚した。


「なので我々は、貴方が敵対しないようご機嫌を取ることにした」

「は?」


いや、いやいや待て待て。

神に機嫌を取られるってそりゃなんの冗談だ?


「自覚がないかもしれないけれど、貴方は既に我々が認めている最強の一角を崩した」


ウルデルコの顔が思い浮かぶ。


「貴方の意思と合わせて、我々は貴方が破壊神ルベルベンを斃してくれると判断した」

「…初代勇者が破壊神を封印した時、何故斃さなかった?」

「あの時は、破壊神を斃すことによって世界のバランスが崩れてしまうことを懸念した。創造神と破壊神は二柱一対。破壊が必要な時もある。しかし」


破壊神はこの世界全てを破壊するつもりだ、と。

幼い見た目の神が重く吐き出した。


そしてまた新たに、一から作ればいいと考えていると。


「きっかけは、貴方も知っている。別の世界、我々は魔界セルネイと呼んでいるあの世界と異相が重なってしまったことだった」


それによって世界は人の知らぬところで大きな損害を負った。

神々の力によって外見上変化はないが、その内情はひどいことに今もなっているのだと。


創造神たち多くの神は時間をかけ再生させる方針を取ったが、破壊神は違った。

完全再生は不可能だとし、新たに造り直すと。


世界の容量を100パーセントだとすると、70パーセントは使用済みであった。

その70パーセントを前後し、世界は回っていたが、異世界と重なったことにより世界の容量100パーセントのうち30パーセント使用不可となった。

限界ギリギリの飽和状態だと、いずれ世界そのものが壊れかねない。

そうなる前に、全てをフラットにし、残る70パーセントを100パーセントとして新たな世界を構築しようと。


「我々は反対した。我々神々が在る神界はその100パーセントに含まれないが、下界、つまりこのアルファリアという星の全ての生物、いや生物以外も、海や地面などを除き全てを破壊するなど…」


それは到底許容できるものではないと。

ましてや原因は、この世界の者ではないのだから。


「封印し目覚めた時、世界が多少なりとも回復していれば、破壊神の考えも変わると思っていた」


しかし、アキホで俺が破壊神の心臓を斬った時、一時的に神の座へと戻った破壊神の考えは変わっていなかった。

その考えが、呼び水となり、眠っていた筈の破壊神の力の欠片が胎動を始めた。


「もはや封印は不可能、というよりもしたところで無意味。それで救われるのは、同胞を殺さなくて済んだという我等の心のみ。自分たちでできぬこと、貴方に背負わせなければならないことは大変申し訳なく思っている。でも、どうか」


そう言って、レーシアは頭を下げた。

顔を歪め、誠心誠意。


「…俺は俺のやりたいようにやる。あんた達が何を言ってきても、俺は自分が決めた時から、破壊神を斬ることを決めている」

「……ありがとう」


俺が言うと、レーシアは頭を下げたまま礼を言ってくる。

見た目が幼女なだけにその行為そのものが脅迫じみているのがわかっているのだろうか。


「ではご機嫌を取る」

「おい、待て。やると言ってるだろう?!そんなことをするつもりはない!何をするつもりだ!?」

「まぁまぁ。楽にしろ。悪いようにはしないから」

「おい!?近づくなっ!こっちへ来るなっ!?」

「ふふふ」


手をニギニギしながら近づいてくるレーシアから必死に逃れようとするが、何故か俺の身体は動かない。


「わー!?!?」


暗闇に、俺の悲鳴が響き渡った。

昨日の感想を誰もくれず不安ですが、さすがに連戦で勝てる程甘い相手ではないので展開は譲れません。

明日は別視点の閑話です。

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