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とある冒険者の漫遊記  作者: 安芸紅葉
第十一章 最も危険なピクニック「目的地は魔王城」編
310/358

第265ページ 自分

「うわーん、うわーん!」

「どうした、周?お兄ちゃんに言ってみな?」


俺が泣いていると必ず来てくれた兄ちゃんが、俺は大好きだった。

だが、兄から見た俺は決していい弟ではなかった筈。


12歳、俺が中学生に上がった時、兄は15歳の中学3年生だった。


当時俺は、自分の能力を自覚し、大いにそれを振るっていた。

その行為が、周りの人にどんな影響を与えるかも知らずに。


---


あれは、いつだったか。

中学にもようやく慣れてきた雨の日だったように思う。


いつもは一緒に帰る兄が笑って「用事があるから先に帰る」と言ったから、俺は少しさびしく思いながらも笑って頷いた。


そして、いつもの帰り道を独りで歩くいつでない帰り道。

その声は聞こえてきた。


「お前さぁ、全部弟に負けて悔しくないわけ?」

「俺だったら絶対無理だけどなぁ」

「プライドねぇんだな?」

「お前、死んだ方がいいんじゃねぇの?」


その、色んな感情を含んだ声に、胸がスッと冷たくなっていって、自分が言われたわけではないのに足が震えた。

けれど何故か気になって、俺はその声の方に近付いて行き、物影からコッソリとそちらを見た。


四人の男の子に囲まれていたのは、どこかで予感していた通り、兄だった。


その時俺は初めて、自分が兄の迷惑になっていることを知った。

俺は逃げた。

男の子達が怖かったんじゃない。


男の子達に兄がなんて言うのかが怖かったんだ。


「…ザァー…うのこと…ザァー…うな!」


傘を放り出して、走って帰る俺に兄の声は届かなかった。


それから、俺は兄と少し距離を置いた。

両親はそれを思春期特有のことだと微笑ましく見ていたけど、兄だけは心配そうに見ていたことに気付いた。

でも、俺は気付かないふりをしていた。


そんなある日、いつものように一人で帰っていた俺の前に影が立ちはだかる。

それはあの時、兄を囲んでいた男の子達だった。


「お前さぁ、調子乗ってんなよ?」

「てめぇ自分が兄貴にどんな迷惑かけてっかわかってんのかよ!?」

「年下が舐めてんじゃねぇぞ!」


どの口が言うのかと思った。

確かに兄に迷惑はかけてしまったかもしれない。

でも、お前達とは話すのも初めてで、舐める舐めない以前の話だ。

俺がお前達に何をした。


俺は怒りで頭が真っ白になり、思わず腕を振りかぶった。

負ける気はしなかった。


けれどそんな俺の腕を、後ろから誰かが掴んだ。

それにイラッとした俺は、振り向きもせず後ろに蹴りを放つ。

子どもの力だ。

それ程の威力はなかったと思うが、無防備な腹へと直撃を受けた後ろの奴は「うっ」と呻いて膝をついた。


そこでようやく振り向いた俺は、目を疑う。

腕を掴んでいたのは兄だった。


「や、やめろ、周。こんな奴ら、周が殴る価値もないよ」


お腹を押さえながら目尻に涙を浮かべながら、それでもニカッと笑うのはいつも通りの兄だった。


「な、なんだよ!」

「おいやっちまおうぜ!」

「お、おう!」


こちらへ襲い掛かってくる男の子達をキッと睨む。

相変わらず腕は掴まれているので視線だけを向けたんだけど、男の子達はそれに何故か恐怖を覚えたようだった。


「い、行こうぜ!」


一人がそう言って背を向けると、残り三人もそれを追う。

俺はその背が見えなくなってから、兄の前に膝をついた。


「大丈夫!?ごめん!ごめんね!」

「はは、周は強いなぁ」


兄はそう言って、俺の頭を撫でてくれる。

俺はそれで、堰を切ったように涙が溢れてきた。


「ごめん、ごめんね、兄ちゃんっ…!」


色んなごめんが溢れて止まらなくなった俺を兄は優しく抱き締めてくれた。


「何を謝るってるんだよ。あいつらの言ってたことなんか気にするな!兄ちゃんは周が迷惑だったことなんてないんだからさ」


ぐしゃぐしゃに顔を歪めて、兄の顔を見る。

優しく笑む兄の顔がそこにあり、ああ本当のことを言ってるなと信じられた。


「周、周は自分のやりたいようにやっていいんだよ。周は、一人より才能がいっぱいあるだけなんだから。兄ちゃんはそんな周が誇りなんだから」

「うんっ…!」


その二年後、家族は事故で死んでしまった。

それから俺は、自分の才能を嫌い、何をするにも手を抜くようになった。


---


そして今、ウルデルコの言葉が兄の言葉と重なる。


他人にどう思われようと、「自分」さえよければいいと言うウルデルコ。

他人がどう思おうと、「自分」はお前が誇りだと言ってくれた兄。


思い出した兄の言葉、ウルデルコの言葉、それが思考を駆け抜け、俺の中の何かが切れた。

それが現実であるというように


《オリジンスキル「魔法」のロックが一部解除されました》


と頭に声が響く。

俺の魔力で満たされた空間が震え、空間魔法がまた使えるようになったと感覚的にわかった。

本日のQ.

今回の返答ですと知っていれば重力魔法などもできるということですか?

SSSランクのイザベラは真理を知る者とありました

このオリジンスキルの「魔法」とはどこまでのことができるのでしょうか?

また、真理とは知ればなんでもできるのでしょうか?


A.真理については本編でいずれ触れますのでお答えしません。

重力魔法なども知っていればできます。

オリジンスキル「魔法」は人の想像し得ることならばなんでもできるとお答えしますが、もちろん魔力量・かかる時間・作用する範囲などの制限は存在します。

ついでに言ってしまいますが、魔法属性の適正は知識がなくとも使えるという理解で構いません。

生まれた時から本能で理解している、生まれ持った資質ですね。

属性「重」として重力魔法を使う人も中にはいます。

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