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とある冒険者の漫遊記  作者: 安芸紅葉
第十一章 最も危険なピクニック「目的地は魔王城」編
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第256ページ 人狼との共闘?

「囮?」

「あいつはお前を警戒している。今、地中から出て来ないのはそういうことだろう?」


ワームが地中から出て来ないのは、俺が魔力を全開にして威圧しているからだ。

このまま去るようであれば無視していいんだが、その気配は無い。

未練がましく機を待っているのがその証拠だ。


あいつが地中にいる状態で月無花を採りに行けば、一瞬も気を緩められない。

その負担はジルガの方が大きいだろう。

平静を装っているが既にジルガは限界が近いことがわかる。


それに放置しておけば最悪森の外まで来る可能性もある。

逆に森の外まで出せば強引に倒せそうではあるんだが、もしもの危険性が拭えない。


「俺が囮になれば、あいつは出てくるだろう?」

「…今のお前の状態じゃ、反応できない。死ぬかもしれないぞ?」

「この森に来て、俺はもう二度死にかけている。今度も頼むぞ、シュウ」


ジルガは、狼の口許を緩め、笑みを浮かべる。

その表情に驚き、俺も似たような笑みを浮かべて頷いてから空中を駆けあがる。

ジルガが拳を握りしめていたのは、見なかったことにしてやろう。


上空へと上がった俺は、魔力の吸収と放出を抑え気配を断つ。

ワームは地面を伝わる振動と魔力によって生物を感知する。

これで俺のことは感知できない。


ちょっとでも知恵があるならば、唐突に消えた気配を逆に警戒しそうだが、所詮は地蟲と呼ばれるような魔物。

どれほどその図体がでかくなろうと、脳まで大きくなってはいないだろう。


かくして予想通り、その時は来た。


地中の様子まではっきりとわかる<全知>に、奴の動きは丸見えだった。

一度地中深くへと潜り、勢いをつけて地上へと上がってくる。

出現地点はジルガの真下。


「チッ」


さっきの失敗を考える程度の頭はあったようだ。

出現と同時にジルガを食ってしまう算段か。


「だが、もう終わりだ!」


ワームの口が出てくるか来ないかの一瞬。

俺は取り出しておいた八岐蛇(やまたのくちなわ)を発動。

ジルガを絡め取り、力任せに引っ張り上げる。


Booooooo

「うわぁぁっぁぁ!?」


ジルガを囮というよりも餌のようにし、ワームを一本釣りした俺は、ジルガをそのまま空へと放り投げ入れ代わるようにワームの前へと躍り出る。

既にここは空中。

森への被害を考える必要はなし。


「派手に逝け!」


ワームの周囲に大き目の氷の槍が何十と形作られ、一斉に射撃された。

四方八方からの直撃を受け、串刺しにされたワームは、その内の一本が魔石を破壊し、ズドンというワームが力を喪い、地に落ちる音が戦闘の終わりを告げた。


「うわぁぁぁっぁぁ!?!?」

「おっと、忘れてた」


空を蹴り、落下死寸前だった人狼を回収。

涙目の人狼に咆えられながら、俺達はそのまま空を進む。

最初からこうしていればよかったと気付くのは、すぐあとだった。


月無花にある場所は本当に近くであり、辿り着いた俺達はちょうどよく開花の瞬間を目撃した。


「すげーな」

「ああ」


月の光りを十分に貯め込んだ花は、花そのものが神秘的に輝きながら薄桃色の花弁が開いて行く。

似ている花と言えば、蓮の花だろうか。


幻想的な光景に俺達は一瞬心を奪われた。

姿の定まっていない下位の精霊や妖精たちも何やら喜んでいるのが伝わってくる。


「…これ摘まないといけないのか」

「そ、そうだぞ!」


少しもったいないような気がしなくはないが人命には換えられない。

それが依頼でもある。


俺達は花弁と、念の為に株ごと月無花を採取する。

人数分と予備にと多めに採取をし、任務は完了だ。


「帰るか」

「おう」


久しぶりにカメラを取り出し、写真を撮った後、俺達は再度空を駆けあがった。

飛行系の魔物がまったく出て来ないのは、アステールと俺達が狩りまくったからか。

狩り尽くしてはいないと思うが、なんにしても今は有難い。


何の事件も起きず、俺達は人狼の集落へと帰還した。

カウントをミスっておりまして300部は明後日ですね。

明日は普通に通常話の投稿。

明後日に記念SS投稿となります。

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