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とある冒険者の漫遊記  作者: 安芸紅葉
第十一章 最も危険なピクニック「目的地は魔王城」編
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第249ページ 危険な森

「世話になったな」

「またいつなりと来るがよい。もう二百年くらいは儂も死なん」

「そんなに俺は生きないよ…多分」


朝になり、俺達はケミリアスさんの造った空間から出ていく。

ケミリアスさんと猫たちが見送りをしてくれている。


「そうじゃ、其方にこれも渡しておこう」

「これは鈴?」


―・―・―・―・―・―


【神器】猫呼びの鈴

品質S、レア度8、妖精猫ケミリアスの作。

その音は世界に響き、妖精猫へと伝わる。

猫の手も欲しい時に便利。


―・―・―・―・―・―


…なんだこの説明?


「鳴らせば儂に伝わる。何かあれば使うがよいぞ」

「あ、ああ。ありがとう」


使いどころがいまいちわからないが、貰っておこう。


「それと…な、其方が今連れておる子じゃが…」

「わかってる」

「そうか…ならいいんじゃ」


猫の王は心配そうにこちらを見てくる。

俺はそれに苦笑して首を振った。


「色々ありがとう、じゃあ」

「ああ、元気での」


空間から出ていくのは簡単で、自分の意識をずらすだけでいいようだ。

入るのも今度からは自分の意思で行けそうだな。


「せめて其方の痛苦が少ないことを」


一瞬にして俺は、雑踏の中に戻っていた。


---


「ふーん、それでずっと別の空間にいたのね」

「ああ。そっちはどうしてたんだ?」

「ちょっとね」


あのあとすぐどこかから現れたエシルと合流した俺達は、無事に町を抜けた。

どこかで見られたようで、慌てて近付いてこようとしていた赤の光点がいくつかあったが、さすがに町の外へは出て来れないようだ。


アステールに二人で乗り、魔都への道を往く。


「次はどこになるんだ?」

「うーん…危険だけど近い道、安全だけど遠回りになる道、どっちがいい?」

「近道」

「わかったわ。ならこのまま直進して森を突っ切りましょう」


眼下に広がるのは広大な森。

深淵の森を思い出させるように広大で、鬱屈としたそこはいかにも何かが潜んでいると言っているようなものだ。


そして、当然のように魔力の反応が確認でき、中には笑えないような大物の反応もある。


「…本当にここを行くのか?」

「空からなら少しは安全だと思うんだけど…」


まるで自信が無さそうなその言葉に思わずジト目を向けてしまうが、エシルは目線を合わせず口笛を吹き始めた。


「はぁ…悪いがアステール、行ってくれ」

「クル…」


アステールも嫌そうにしながら森の上空へと進んでいく。

その瞬間、森から多数の魔物が飛び立ってきた。


「まぁ予想通りだな」

「あはは…」


―・―・―・―・―・―


[フォレストバット]ランクC

森に生息する蝙蝠型の魔物。

人、魔物問わず集団で襲いかかり吸血を行う。

襲われたものは体中のあらゆる水分を吸われ絶命する。


―・―・―・―・―・―


俺は両手に双月を召喚し、空中に氷の槍を生成する。

同時にアステールも風の矢を形成し、一緒に放っていた。


後ろでエシルも魔法を発動させる気配が伝わってくる。


「何もするな」

「あら、優しい」

「ふん。お前の護衛が仕事だからな」


フォレストバットの群れは、撃墜されていく仲間のことなど見向きもせず、こちらへと向かってくる。

だが心なしか怒っているようではある。


「アステール、上昇だ」

「クル!」


俺の声と合わせて、アステールが更に上空へと駆けあがる。


「ここでいい!」

「クルゥ!」


俺の意思を受け、即座に反転。

アステールがあまりスピードを出さなかったこともあり、フォレストバットは先程よりも近くに迫っていた。


「燃えろ!」


魔力に任せた広範囲火炎放射。

アステールに上空へと上がってもらったのは、森が焼けるのを防ぐ為だ。


「ギィッ!」

「ギギッ」

「ギギガァッ」


全てのフォレストバットを焼き払い、多少の疲れを感じながら、アステールへ先に進むように言う。

残念ながらこのフォレストバットはこの森で弱い部類である。

空を飛ぶ魔物もまだまだいるだろう。

さっさと森を抜けてしまいたい。


「次が来たわ!」

「チッ!アステール!お前は走り続けろ!全速力だ!」

「グルゥゥゥ!!」


アステールが風魔法を用い、自分にかかる空気抵抗を減らしていく。

その光景を見ながら、俺は飛び出てきた敵の相手だ。


―・―・―・―・―・―


[フォレストワイバーン]ランクA

森に生息する翼竜型の魔物。

一般的なワイバーンとは違い、木の上で休む為身体は小さめ。

ただしその分速度は速くなっている。


―・―・―・―・―・―


「天は我が手に。雨よ、降り注げ!」


初めて発動したユニークスキル<天は我が手に(グラスプウェザー)>。

莫大な魔力が消費され、雲が雨雲となりスコールの如き雨が降り注ぐ。


俺達には届かないよう、魔法で雨避けを平行発動しているが、アステールのスピードに合わせた雨避けはなかなか難しい。


「凍れ!氷棺砕破!!」


雨に濡れたフォレストワイバーン達は一瞬で凍りつき、次いで砕け散った。


「まだまだ出てくるわ!」

「<万有力引(エナジードレイン)>!」


消費していた分の魔力がかなりの勢いで回復していく。

意識して発動した<万有力引(エナジードレイン)>は、無意識化で発動していた時よりも回復量が跳ねあがっているようだ。


「轟け!豪雷滅国!」


雷鳴が轟き、(いかづち)が降り注ぐ。


アステールが夢中で駆け、俺も飛んでくる魔物達を撃滅し続ける。

いつまで続くのかと思った頃、唐突に襲撃が止み、雨が止んだ。


森の上空を抜け切ったのだとわかった。


「まずいわ!」


同時にエシルの叫びが響き、


「クルッ!」

「ガァッ!」


地面から人狼が跳び上がってきた。

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