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とある冒険者の漫遊記  作者: 安芸紅葉
第十一章 最も危険なピクニック「目的地は魔王城」編
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第247ページ 猫の国

別空間は思ったよりも広大で、これだけ街並を完全再現しているというのに人っ子一人いないというのはすごく不思議な気分になる。

それはまるで白昼夢のような、夢の世界に迷い込んだかのような出来事だ。


「ミャー」

「ん?」


誰も何も、俺とアステール以外はいないと思われたような空間に、ふいに珍客が現れた。

それは黒い一匹の猫。

ただしその猫は、普通の魔物でもあまり持っていない程の魔力を感じる。


「これは…」


自分の胸元から光りが漏れている。

見ればいつぞやティアから貰った「妖精の雫」が反応している。

つまりこの猫は…


「ミャー」


猫は一声上げるとピョンと乗っていた窓枠の上から飛び降り、テクテクと歩いて行く。

少し行ったところでこちらを振りかえり「ミャー」と鳴き、また歩き始めた。


「これは、着いてこいということかな?」

「クル」


俺達はその後に続く。

猫はテクテクと歩き続ける。

その速度はのんびりとしたもので、俺達は追いつかないように注意しなければならなかった。


やがて猫は裏道を通り、細道を通り、町の中心部へと向かっていく。

そして、辺りには黒猫だけでなく様々な種類の猫が増えていき、道の両サイドからこちらを見てくる。

その目には感情が宿っていないような気がして、少し薄気味悪いが、猫は好きだ。


と、黒猫は一件の店の前で止まり、「ミャー」と鳴いてくる。


「中へ入れということか?」


そう聞くと黒猫はコクリと頷き、身を翻して屋根の上へと跳びあがった。


大きさ的にアステールは入れる広さではないので待っていてもらい、俺だけ中に入る。

カランカランとベルが鳴り、俺の来店を告げた。


中は魔道具の店のようだが、少し様子が違う。

ここにあるのは魔石に魔法を注入しているタイプ。

ジェムと呼ばれる物だ。


いや、魔法以外でも様々な効果が封入された魔石のアクセサリーが多い。

ここはそういった補助アイテムも売っているところのようだ。


「いらっしゃい」


俺が商品を見ていると、いつの間にか受付には一人の老人が座っていた。


「ああ、黒猫に案内されてきたんだが…」

「ノアじゃよ。儂が其方を呼んできてもらったんじゃ。この世界に客など珍しいからの」


老人はふいに閉じていた目を片方だけ開け、こちらを見てくる。

白くなった垂れ眉に隠されていた目がしっかりと俺に向けられ、何を感じ取ったのかニヤリと笑った。


「なるほどの…竜との混じり。それも妖精女王の加護持ちとな。儂の結界が効かんわけじゃな。反則じゃろうて」

「そうなのか?」

「そうなんじゃよ」


老人は再び目を閉じる。


「この空間はなんなんだ?」

「儂が余生を静かに生きる為に造った場所じゃ」

「一人でじゃないだろう?」

「もちろん。みんなの力を借りておるよ」


「ミャー」といつの間にか老人を囲むように何匹もの猫がくつろいでいた。


「どれ、お前さんに必要そうな物をあげようかの。ここまで来れた褒美じゃ」


老人はスッと立ち上がると奥へ消え、何やら箱を持って戻ってきた。


「これを其方にやろう」

「俺に?」


箱を開けると、中には黒色の魔石を使った数珠のようなブレスレットが入っている。


―・―・―・―・―・―


【魔道具】闇衣の腕輪

品質A、レア度6、妖精猫ケミリアスの作。

装着している者の魔力を完全に隠蔽する効果がある。

隠蔽しているだけなので、魔法を使うことは問題なく使えるが魔法発動を悟られない。


―・―・―・―・―・―


「これは…」

「この大陸では其方の魔力は目立ち過ぎる。役に立つ筈じゃよ」

「ありがたいが、いいのか?」

「言ったじゃろう?ここに来る客は少ないのじゃ。この店に置いてある物たちは行くべき所に行くのじゃよ」


微笑んで、腕輪の入った箱を撫でる老人に礼を言う。


「ありがとう、ケミリアスさん」

「ほっほっ、ティアによろしくな」

「ああ、伝えておくよ」


老人は、銀色の大きな猫は、尻尾をパタリと揺らし、柔らかく笑った。


―・―・―・―・―・―


[猫妖精(ケットシー)]ランクS+

名「ケミリアス」

百年を生き、妖精と化した猫の王。

膨大な魔力を有し、多彩な魔法を使うことができる。

あらゆる情報に精通し、知識も豊富。

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