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とある冒険者の漫遊記  作者: 安芸紅葉
第十一章 最も危険なピクニック「目的地は魔王城」編
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第245ページ 魔大陸道中

「私の名前はエシルよ。まずは仕事を引き受けてくれることお礼を言うわ、運び屋さん」

「シュウ・クロバだ。それで?仕事内容を詳しく聞こうか」


あのあと、俺達はとりあえず俺が泊まっている宿へとやってきた。

「雄羊の娯楽亭」は、安価でうまい飯を出すと評判の宿だった。


最後に軽い飯を一人分俺の部屋へ運んでくれるように頼んだ。

彼女はいらないそうだ。


「私、普通の食べ物は摂取できないのよ。そういう種族なの」

「…わかった」


そう言うエシルは少し寂しそうだった。

食事を摂れないというのはなんとも悲しいな…


「さて!私の依頼は私を魔都まで連れていくこと。その間の護衛よ。さっきも言ったように食事もいらないし、寝床はあなたと同伴でいいわ」

「俺はいいが、いいのか?」

「今更気にしないわよ、って違うわよ!?別に誰とでも寝てるとかそんなんじゃないからね!?」

「ああ、わかってるわかってる」


うるさくなりそうだが、雇い主が言うならそうしておこう。


「報酬は?」

「…魔都に着いたら望みの物を支払うわ。お金でもそれ以外でも、お兄ちゃんなら支払ってくれる筈よ」

「会いたいというのは兄か」

「そ。馬鹿兄貴よ」


言葉とは裏腹に、兄のことを語る彼女の表情はとても優しく、楽しそうだった。


「それから報酬に魔都までの道案内も付けといて」

「なるほど。それは助かるな」

「でしょう?で、いつ出発するの?」

「飯を食ったらな」

「ならその間に準備してくるわ」


エシルはそう言って部屋を出ていく。

俺はこれからどういう旅になるのか思いを馳せた。


---


「アステール、こいつはエシル。魔都まで同行することになった、一応依頼人だ」

「わぁ!綺麗な子ね!こんにちわ、アステール!撫でてもいいかしら?」

「クル」


どうぞと身を寄せるアステールを嬉しそうに撫で始める。

アステールは不思議そうにしていた。


「ありがとう!」

「クゥル」

「それじゃあいくぞ」

「ええ!ここから一番近い町はブシュカね!馬車で一週間くらいよ。アステールだと3日くらいかしらね」

「そうだな。ならそこまでは野宿か」

「私のことなら心配いらないわ。野宿には慣れてるもの。さ、行きましょう!」


俺達はエシルの案内でブシュカへの道を進む。

当初俺は、魔都の方角へ向かって空を突っ切ればいいと思っていたが、街道沿いに進まなければ思わぬ災害に襲われることがあると脅された。


街道沿いの安全はだいたい保証されているが、そこから逸れるともはや安全地帯は限られるそうだ。

それは魔物に限らず天候やその他の要因にも言えることであり、道から外れて森を通ろうとした旅人が森に迷わされ、毒沼にはまるような事件は数えきれないらしい。


俺達は大人しく街道の上を飛んで進む。

道行く人からは驚かれてしまうが勘弁してほしい。

高度を上げすぎるのも問題なのだそうだ。

避雷針になりたくなければ止めておけと言われれば止める他ない。


夜になれば当然野宿をすることになるのだが、これも街道沿いにある休憩スペースで取るするように言われた。

そこには簡易的な魔物避けがしてあり他の旅人もそこで野宿をするので見張り的な意味でも都合がいいんだそうだ。


ただし、これはあまり知られていないことだけどと前置きをしてエシルは大人数で固まる本来の意味を教えてくれた。


頭のいい魔物は灯りに寄ってくる。

それは人の熾したもので、そこに餌があると知っているから。


人が多ければ多いほど、魔物はその気配を感知しやすくなる。

音や匂いが隠しきれなくなるから。


人が多く集まるのはもちろん助けあいの意味。

だが本来は、魔物に襲われた時に周囲の者を囮として逃げることができるようにという考え方であるそうだ。


もっとも現在は、町の外へ出る人を組合が管理している為、一定以上の戦闘能力の持ち主であることは間違いではなく、出てきた魔物を協力して狩るという意味が強いのだそうだが。

魔物が出てくるかどうかは運次第だけれど、狩った魔物の取り分で揉めることもあるというから、何が良いのかわからない話だ。


そして、エシルは俺がラッセン伯から貰ったテントに呆れ、「これはもう野宿じゃないわ」と呟いていた。

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