第236ページ 孤児院
孤児院までの道中、少女から事情を聴く。
まずは自己紹介からだ。
「俺はシュウ。こっちは相棒のアステールだ」
「エイミー、です」
「それでエイミー、何故一人であんなところに?」
シスターが怪我を負って動けない状態なのはわかったが、だからと言って子ども一人で入っていい林ではない。
そもそもがあのような危険な林近くに孤児院が建っていることも不思議ではある。
「実は…」
やはりあの林は子どもだけで立ち入ってはいけないとシスターにはきつく言われているそうだ。
しかし、シスターが負傷した原因がこのエイミーにあり、運が悪いことにちょうど怪我に効く薬品類が切れていた。
近隣の町まではそれなりに距離があり、大人であるなら一日で往復することも可能だがもちろん子どもには無理だ。
いつも町から物資を届けてくれる配達人が届くのは今からだと一週間は先になるだろうとのこと。
けれど一週間、シスターが動けないままだと流石にキツイ。
そこでエイミーは昔自分が怪我をした時にシスターが塗ってくれた生薬を思い出した。
あれの素材は林に生えている薬草だと、前にシスターが教えてくれたのも思いだした。
そして
「居ても立ってもいられなくなって一人飛び出してきたと」
「はい…」
なんとも。
行動力がありすぎるな。
「あ、見えてきました!」
結局は子どもが徒歩で来れる程度の距離だったので、すぐに林は抜けた。
するとすぐ向こうに木造建築の少し大き目な家が目に入る。
あれが孤児院か。
エイミーも孤児院が見えたことで緊張が解けたのか肩を下ろしている。
俺とアステールが威圧を放ちまくっていたから、林の魔物たちは近づいてこなかったがそれでもやはり怖かったのだろう。
「エイミー!」
そこに鋭い声が響き、一人の少女が駆け寄ってくる。
歳の頃は14,15歳くらい。赤毛を三つ編みにしており、腰くらいまでの長さだ。
「ミーア!」
エイミーはその声に答え、アステールを降りようとしてどうしたらいいかとおろおろしている。
気を利かせたアステールが膝を折り、エイミーが折りやすいように伏せってやる。
「ありがとう!」
アステールにお礼を言いピョンと飛んでミーアに抱きついた。
ミーアもしっかりと抱擁を返す。
が、それは数秒のこと。
「もう!どこに行ってたの!心配したのよ!?」
「ご、ごめんなさい…林に…」
「エイミー…あなたまさか林に入ったの!?」
「ごめんなさい…」
「一人で入っちゃダメってシスターにも言われたでしょ!?」
「で、でもシスターが!」
「でもじゃありません!あなたが林に入って怪我でもしたらシスターがどう思うか考えたの!?」
「う…」
「はぁ、本当に無事でよかったわ」
泣きそうになったエイミーに溜息を吐いて、エイミーをもう一度抱き締める。
そこでようやくこちらに視線を向けた。
「それで、どなたですか?」
溢れ出る警戒心。
「冒険者のシュウ・クロバだ。エイミーとは林でたまたま会ってな」
「冒険者?」
ああ、しまった。
冒険者ギルドは魔族大陸にはないのか。
さて、どう答えようか…
「私を助けてくれたの」
「そうだったんですか。エイミーの恩人さんに失礼なことをしてごめんなさい。どうぞいらしてください。何もありませんが、シスターの焼いたクッキーならありますよ?」
エイミーの言葉で警戒心が霧散した。
それはもう、もう少し警戒した方がいいぞと言いたくなるくらいには。
ただ、もちろん俺にとっては好都合なわけで。
「お言葉に甘えさせてもらおう」
別にクッキーに惹かれたわけじゃないぞ?
ほんとだぞ?
だからアステール、呆れた目をするんじゃない。
お前だって目、輝かせてたの知ってるんだからな?
時間がなくてキリのいいところとすると短くなってしまいます…
295部まではリクエスト募集しているのでどしどしどうぞ。どしどし!!




