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とある冒険者の漫遊記  作者: 安芸紅葉
第十一章 最も危険なピクニック「目的地は魔王城」編
276/358

第235ページ お約束

視界を飛ばしここが魔大陸だと改めて確信した俺は、魔王城を目的地と決め、とりあえず人の反応がある方向へと向かう。

そこを視てはいないが、光点の反応からすると一所に20人は集まっているようだ。


しかし、どうにも光りが弱い。子どもが多いのか、生命力が少ない者が多いのか。

どちらにしろ問題はありそうだ。


「行こう、アステール」

「クル」


直線距離ではそれほどないが、目の前の林を抜けるかどうかが問題だな。

視た感じまだゴブリンしか確認できてないが、ゴブリンの装備が少しおかしくなっている。

ただのゴブリンが剣持ってるってどういうことだ?


「クル」


俺が迷っているとアステールが乗れと促してくる。

そうだな、空から行くのが楽で確実か。


「よし、頼んだアステール」

「クルゥ!」


俺が乗ると駆けだし、大きく羽ばたく。

そういえばアステールに乗って飛ぶのも久しぶりだな。

こんなに湿度が高くなければ気持ちいいのだが。


高度を上げ、アステールは行く。

が、すぐに急降下をすることになった。


「キャー!!」

「アステール!」

「クル!」


林に悲鳴が響き渡る。

アステールが俺の考えを見通し全力で空を駆ける。

木々が近づいたところで俺はアステールから飛び降りる。

俺が身体を縮めれば通過できる枝たちもアステールで突っ込むには狭すぎるし、無駄に鋭利だ。


降り立った先には、六体の狼に囲まれた一人の少女。

どこかで見たような光景だが狼の危険度はあの比ではない。

そして少女に、守ってくれる騎士はいない。


しかし、俺が来たことは一緒だった。


剣閃が閃く。

銀色の跡を残し、双月を振るう。


初撃で二匹の頭を落とす。


「ひっ!?」


怯える少女を無視し、更に隣りの一匹に風の矢を撃ち込む。

矢は一匹の頭を貫通し、奥のもう一匹をも貫いた。


同時に地を蹴り、頭上から更に一匹を仕留めた。

が、もう一匹は対応し、俺に飛びかかってくる。


そこに、風を纏ったアステールが飛びこんできて、その前脚で狼の頭蓋を踏みつぶした。


これで少女を囲む六頭は終わった。

だが、まだ全てではない。


林の闇の奥に、光る双眸がまだいくつもあり、中には一際大きい気配もあった。


「来るか?」


双月の一本をそちらへ突き出し構えるが、相手は実力差をきちんと把握できているようで一声上げると踵を返す。

それに、周りの全員が従った。

見事な統率力だ。


「ふぅ…大丈夫か?」


あのまま戦っても負けるとは思わないが、こちらは少女を守りながら。

楽な戦いにはならなかっただろう。


少女に手を差しのばすと、ビクッとしたあと恐る恐る手を取った。


「あ、あの、ありがとうござます…」


歳は12歳ほど。

栗色の髪を左右に括って、少し茶色い肌の…魔族の少女。


「何故こんなところに一人で?」

「え!?あ、あの…これを取りに…」


見ると少女の足元にはバスケットが転がっている。

中身を鑑定してみると薬草のようだった。


「誰か怪我人がいるのか?」

「はい…シスターが…」


シスター…?

魔族領でそれを聞くのはなんとも不思議な気分だ。

誰に仕えているシスターなんだろうか…

破壊神なら顔合わせづらいんだが…


だがまぁ、放っておくわけにもいかないか。


「行こう。アステール、この子を頼んだぞ」

「クル」

「え?え?」


少女を抱え、アステールの上へと座らせると少女が面白い程慌てている。


「シスターの元まで連れて行こう」

「い、いいんですか?」

「俺が行こうとしてたのもそこだからな」


20個ほどの弱い光点反応。

少女から発せられたシスターと言う言葉。


行こうとしているのはおそらく孤児院。


孤児が増えた原因の多くは、この環境のせいだとは思う。

だがしかし、その原因のいくつかに人が関係していないとは限らない。


ならばやはり俺は、この地で見るべきだろう。

魔族の本来の姿を。その生き方を。

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