第232ページ 水竜の祈り
あっという間に城へと戻った俺達は、英雄権限として許されたバルコニーからの入城を敢行する。
そうは言ってもいつもは門からきちんと入るが、今は特別ということで。
「食堂へ直接いらっしゃるようにとのことです!」
後ろで息を乱しながら言うセレックの声を聞き、まっすぐに食堂へと向かう。
ここに滞在して半月になる現状、勝手知ったる他人の城というわけだ。
それにしても食堂で待つとは…
俺がすぐに見つからなかったり来なかったりしたらどうするつもりだったのか。
いや、楽しみにしていたから聞けば飛んできたとは思うが、行動を読まれているようで複雑だな。
食堂の前にはアマンダの護衛騎士二名が扉の両サイドに立っており、速足で近づいてくる俺を何やら微笑ましい顔で見ている。
その顔が若干イラつきながらもノックして返答を聞いてから中へと入った。
「準備ができたと聞いた」
「ええ、お待たせして申し訳ありませんでした」
挨拶も抜きに切りだした俺に、アマンダも笑みを浮かべて首肯する。
見れば隣りには水竜王と包帯を巻いたマーリンさんの姿もあった。
「ほんにこれ程早く来るとは思わんかったえ」
驚きと呆れを含んだその言葉には答えず、俺はカトラリーが用意してある席についた。
俺が着席すると共に、アマンダが給仕のメイド達に合い図を送る。
四人に一人ずつ給仕担当が付き、一皿ずつ料理を運んできた。
「それでは、海中都市アトランティカの安寧を願いしフルコース『水竜の祈り』をご賞味あれ」
アマンダの声で、クロッシュが取られる。
一品目は前菜。
『有明の福音』と名付けられたそれは、フリッタータに近いだろうか。
イタリアのオムレツであるフリッタータであるが、もちろんこれに使われているのは鶏卵ではない。
では何の卵であるかと言うと、「アイペルネ」と言う魔物の卵だそうだ。
調理法によっては毒にも成りえるというそれをうまく料理することでMP増幅効果がある。
ふわっふわなオムレツとシャッキとした水レタスの触感がとてもいい。
「美味い」
二品目のサラダは、『活気ある朝』。
陽のあたる海底というほとんど矛盾した条件下の場所でのみ生育されるという陽生草、これはHPを増量・回復する効果がある。
おまけに水トマトや、様々な香料を用いた特性のドレッシング。
こちらもシャリっとした触感が特徴的であり、滋養強壮溢れる一品だ。
「美味い」
三品目のスープ『白昼の睡微み』は、ブイヤベースのように魚介をふんだんに使ったものだった。
だが魚の臭みを消す為に強烈な味付けをしているわけではなく、微睡みの名にふさわしいマイルドな味付けになっている。
一時的な状態異常無効化効果があり、
「美味い」
四品目は魚料理『夕景宴』。
様々な魚介の刺身盛り合わせであるが、大皿に盛られたそれはまるで一輪の花のように広げられ、見事なグラデーションを形作っていた。
種類は本当に様々であり、一般的な鯛やマグロに加え魔物の刺身なども含まれている。
HPを除くステータスを大幅強化することのできる料理である。
「美味い」
五品目はメイン『王の晩餐』。
「北海の主」とも呼ばれる鯨の魔物、「セトゥポース」の肉を使ったものだ。
水竜でさえ狩るのが容易くないというこの魔物を、年に一度狩りに行くのも水竜の仕事であるようだ。
肉料理と言われてもいい程の濃厚な肉汁と、それでいて油っぽさは感じない味わい。
《スキル「王威」を習得しました》
《条件を満たしたのでスキル「覇気」、スキル「王威」が統合されユニークスキル「覇王の権勢」を習得しました》
《称号「王」を獲得しました》
《称号「頂点捕食者」を獲得しました》
ヘルシーでありながらインパクトのある味は、何とも形容しがたい。
ただ一つ言えることは、
「美味い」
六品目にデザート『ミニュイベネデクション』。
祝福の名の通り、それは正に天上の祝福と言ってもいい甘美な味だった。
水竜たちしか到達できない深海。
世界の海において最も深い海溝にのみ生息する提灯を持った白魚の卵を使った氷菓だ。
《スキル「破邪」を習得しました》
「美味い」
そして通しであったドリンクは「天の雫」と言われる水。
そう、ただの水である。
ただの水が、全ての料理にマッチする極上の味となっている。
この水はエンゼルフォールと言う海中に存在する滝の水であるそうだ。
滝と言ってもそれは複雑な地形が生みだした下降海流のことであり、エンゼルと名の付く割にその脅威は水竜達ですら近付くことを忌避するレベル。
ただ、海のミネラルをたっぷりと含み、遠心分離機の要領で巻き込まれた魚介からも栄養素を抽出。
更には塩分も極端に少なく、まろやかな味をしている。
まず間違いなく俺が飲んだ水の中では最高の味だ。
「ご馳走さまでした」
食後に俺が言えたのはそれだけだ。
この味に、無駄な言葉は必要ない。
ただ、力がみなぎるような感覚が体中を巡っている。
とてつもない満足感が俺を支配していた。
黒葉周 19歳 男
種族:半?竜人
冒険者ランク:S
HP:21200(+10000)
MP:∞
魔法属性:全
<スキル>
格闘術、剣術、槍術、棒術、弓術、刀術、棍術、投躑術、暗器術、斧術
身体強化、完全回復、破邪(new)
馬術、水中行動、天足、解体、看破、危機察知、魅了、罠解除、指揮、並列思考、変則剣技、四足機動
耐魅了、耐誘惑、耐幻惑、恒温体
礼儀作法、料理、舞踊
<ユニークスキル>
天衣模倣、完全なる完結、識図展開、天の声、竜の化身、万有力引、千変万化、優しき死者達、天は我が手に、存在消去、天地無用、覇王の権勢{王威(new),覇気}(fusion)
<オリジンスキル>
魔法、全知
<称号>
「知を盗む者」、「異世界からの来訪者」、「武を極めし者」、「竜殺し」、「下克上」、「解体人」、「誘惑を乗り越えし者」、「美学に殉ず者」、「魔の源を納めし者」、「全能へと至る者」、「人馬一体」、「無比なる測量士」、「翼無き飛行者」、「竜の友」、「破壊神の敵」、「半竜」、「湯治場の守護者」、「妖精の友」、「底なしの動力源」、「戦闘狂」、「深淵へ至りし者」、「神の???」、「人を辞めし者」、「奔放不羈」、「千の貌」、「憤怒を乗り越えし者」、「死者を悼む者」、「魔工匠」、「蛸殺し」、「海賊王の友」、「南港の救世主」、「水蛇の契約者」、「天を統べし者」、「全てを…???」、「我が道を往く」、「存在しない存在」、「不道」、「王」(new)、「頂点捕食者」(new)
<加護>
「??神の加護」、「創造神の加護」、「破壊神の興味」、「戦と武を司る神の加護」、「知と魔を司る神の加護」、「生と娯楽を司る神の加護」、「死と眠りを司る神の加護」、「大海と天候の神の加護」、「鍛冶と酒の神の加護」、「炎竜王の加護」、「妖精女王の加護」、「水竜王の加護」




