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とある冒険者の漫遊記  作者: 安芸紅葉
第十章 海の底の楽園「竜宮城と人魚姫」編
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第229ペ-ジ 傷心中

アノマウスを斬ったあと、俺はキャプテンとの約束を守りオルケアノス号を火葬した。

キャプテンが俺にとくれた物は驚くことに神器であった。

俺も加護をもらっている大海と天候を司る神が太古の昔に人へ与えた羅針盤。


―・―・―・―・―・―


【神器】導きの羅針盤

品質S、レア度10、大海と天候を司る神マーレアスの作。

求める場所の方向が示される羅針盤。

汝、迷うことなく導く者たれ。


―・―・―・―・―・―


どうやら自分の行きたい場所の方向がわかるようだ。

距離などはわからないが、まだ行ったことのない場所だろうと具体的なイメージや名前がわかっていれば方角がわかる。

識図展開(オートマッピング)>と併用すれば道に迷うことはないだろう。

まだ行っていない場所に行くのには便利だな。


それとキャプテンたちが記録していた膨大な海図、そして航海日誌も受け取った。

一緒に置いてあった封書に必要なものがあるならと書かれていたので遠慮なくだ。

キャプテンの航海日誌は読んでいて飽きない。

それが何百年分とある。

意外と筆まめだったようで呪いによって蘇生されたあとも書き続けたようだ。


その日誌の中でわかったことがある。

アノマウスについてだ。


アトランティカ以外にも色々やっていたようだが、そのどれもアノマウス自身の独断であったようだ。

破壊神から指示が出ていたといったことはなく、自らの欲望に従っただけのこと。

それはアノマウスと戦っていたマーリンさんの証言とも合致していた。


マーリンさんは、オルケアノス号の火葬を見届けた後、意識を失った。

限界まで気力を振り絞っていたのだろう。

命に別状はなく、今は順調に回復中だ。


「無茶をしましたね、マーリンさん」

「ふふ、女王様に見舞いに来ていただけるとは」

「もう!やめてください!」

「これは失礼」


マーリンさんはアマンダが女王になる前から宮廷魔導師長の地位にあり、アマンダへの魔法指導をしたりもしていたそうで頭が上がらない存在らしい。

王女から女王になっても態度を変えたりはせず、さりとて甘やかしもしなかった。

一貫して彼女はアマンダの成長を見ていた。


「ところで…アルテンシアはまだ?」

「見つかっていませんね。心配はしていないが」


心配そうにするアマンダとは対照的にマーリンさんは本当に心配していないようだ。


「アルテンシア?」

「私の妹だ。少し前に行方知れずになってね」

「大丈夫なのか?」

「大丈夫さ。あいつは私よりも強い」


不敵に笑いだからそう心配するなとアマンダに告げるマーリンさんが嘘を言っている気配はなかった。

マーリンさんより強い妹となると俺も興味があるが、いないのならば仕方ない。


戦いが終わったあと、俺はいまだアトランティカに滞在していた。

アマンダが報酬として提示した饗竜祭の料理をまだ食べていないからだ。

というのも饗竜祭自体がもうすぐ行われるそうなのだ。

どうせならばとその祭を見てから帰ることにする。

祭りの雰囲気は決して嫌いじゃないからな。


オルケアノス号を火葬し、アトランティカへと帰還した俺たちを待っていたのは国民を含めた熱烈な出迎えだった。


マーリンさんとアノマウスとの闘いが海上へと移ると同時、アマンダは自分も闘いの行方を知る必要があると浮上しようとしたが、臣下によって止められもしもの時の為に国内へと戻り国の守護へと移行した。

国民の避難はすでに終わっており、竜宮城へと全員が集められていたために守護を固めることは簡単だったそうだ。


すぐに闘いの音は聞こえなくなり海も静まった。

結末がどうなったのか、確認の為何人かの兵士を遣いと出したアマンダが聞いた報告は俺がオルケアノス号を燃やしているところだったという。

その背から話しかけるべきではないと空気を読んだ兵士はそのまま戻りアマンダに勝利の報告をした。


「あなたの背中はとても勝利を喜んでいるようには見えなかったと報告を受けました」


アマンダはそう言って複雑そうに笑う。

自身にも共通する感情だからだろう。


叔母の真実を知ったと同時に喪った。

アマンダにとっては唯一残る肉親だったのにだ。


ムーレミアのことは緘口令がしかれ、ひっそりと葬儀をするようだ。

キャプテンも一緒に。


だが、それとは別にして英雄の凱旋を何もせず迎えるわけにはいかない。

国民たちにも触れを出し、闘いが勝利に終わったこと、勝利をもたらした英雄が戻ってくることを伝えるとああなった、ということらしい。


結局国内に被害は無し。

兵に死者はおらず、あとに残るような重傷を負った者もいなかったようだ。

これは純粋に喜ぶべきだろう。


ただし、真相を知っている面々には複雑な感情を抱いている者が多くいるようだ。

こればかりは時間が解決してくれると信じるしかない。

俺もその一人だからな。


とは言え、饗竜祭が近いことも重なり国はすでにお祭り気分で浮かれているようだ。

アマンダにも笑顔が戻ってきている。


それを見て、国を探索しながらその日を迎えた。


国の上を蒼い鱗の竜たちが飛び交う。

あらゆる方面から飛んできた竜たち祭りの開催を告げた。

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