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とある冒険者の漫遊記  作者: 安芸紅葉
第十章 海の底の楽園「竜宮城と人魚姫」編
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第224ページ 扱えぬ力

「アマンダ」


声をかけた俺に対しアマンダはどこか困ったものを見るかのようにこちらを見る。

その目は後ろの家臣団にも共通しており、呆れも含んでいるようだった。


「アマンダ!」


その視線に納得いかずにいると俺の後ろから更に声が飛ぶ。

その声に対して、みなは一様に顔を険しくさせ声の主を見た。


「…お久しぶりです、叔母様」

「ああ、アマンダ!迎えに来てくれたのね?私の代わりを今までありがとう。でももういいの。私が戻ったからにはもういいのよ」

「…どういう意味でしょうか?」

「ああもう!私が女王なんだからあなたはお役御免ってことよ!」


その言葉に、アマンダの後ろにいた家臣団の表情が更に険しくなり、何かを叫ぼうとするもアマンダがスッと手を挙げたためにぐっとこらえた。

アマンダは俺が何度も見たあの少女のような顔ではなく、真剣で凛とした女王の風格を持ちムーレミアを静かに見ていた。


「叔母様、間違いが二つあります」

「間違い?」

「ええ。一つ目、私の今の名はアマンダではなくサグリアです」


その名は女王にのみ受け継がれる名。

ムーレミアの眉がピクリと動く。


「そして…この国の女王は私です!」


アマンダが言い切ると一拍おいて家臣からも兵士たちからも歓声があがった。

家臣団の中には泣いている者もいる。


「き、貴様っ!」

「あなたには女王になる資格はありません。お引き取りいただけますか、ムーレミア!」


アマンダの宣言に俺は自分の顔がにやけるのを感じた。

今までは仕方なく、国が好きだという思いと母親から受け継いだからという思いだけで女王としてやってきたアマンダ。

それが、自らの意志で、ここは自分の国だと。

自らが治める国家であり自分が守る国なのだと宣言した。

その意味は大きく、アマンダはこれより先女王として立派にこの国を治めていくことだろう。

彼女が女王としての自分に戸惑うことはもうないのだ。

彼女はもうサグリアなのだから。


「黙れ黙れ黙れ黙れ黙れぇぇぇっぇ!!!」


だがそれに納得できないものが一名。

ヒステリックに振り回され、アマンダへと向かっていた蛸足の一本を抜き放った斬鬼で斬り落とす。


「がっ!?」

「クロバ様…」


咄嗟に腕で防御しようとしていたアマンダが聞こえた悲鳴に恐る恐るといった風にこちらを見てくる。

俺の存在を確認し茫然として声をかけてくる。

そして、何かを決意したように一つ頷くと口を開いた。


「冒険者シュウ・クロバ様、改めて国家元首サグリア・アマンダ・アトランティカの名において依頼します。ムーレミアを捕縛して下さい」

「報酬は?」


善意でやる予定であったが依頼されるとなれば報酬が要る。


「饗竜祭でしか出されない竜宮城のシェフが腕に依りをかけて作る特別な料理を」


一応聞いてみただけなんだがその報酬は俺にとってとても魅力的なものだった。

自然と顔に笑みが浮かぶ。


「引き受けた!」


地を蹴り、浮き上がると魔法で水を固め蹴りつけることで更なる推進力を得る。


《スキル「水脚」を習得しました》

《条件を満たしましたのでユニークスキル「天地無用(バリアフリー)」を習得しました》

《スキル「水脚」、「天足」を統合しました》

《称号「不道」を獲得しました》


完全なる完結ジ・エンド・オブ・パーフェクト>の効果によって新しく習得したスキルの内容が感覚的にわかる。

どうやら空中だろうと水中だろうと地面と変わらず駆けることができるようだ。

並列思考により足場を魔法で作ることは別に手間でもないが、その必要がなくなればまた違うことに思考を割ける。

強敵との闘いであるならばそれが勝敗に直接結び付きそうだから有り難いスキルであるとはいえる。


「く、来るなぁ!」


とはいえ、今はこの相手だな。

やけになったのか残り7本となった蛸足の内5本を俺に振るってくる。

斬鬼を腰に挿し、両手に双月を召喚することで蛸足に対処。

別々の軌道で襲い来る蛸足のすべてを断ち切った。


「観念した方がいいと思うぞ?」


自慢の蛸足を切られ、残る蛸足は2本。

しかし、俺に対してあまり効果がないとわかった今あれを使ってくることはないだろう。


八岐蛇(やまたのくちなわ)を取り出し苦々しい表情を浮かべたムーレミアに一歩一歩近づいていく。

するとふいに、ムーレミアが口角を引き上げた。


「ふっ、あんたは私では敵わない。それはわかったわ。でもね、それで私の負けが決まるわけではない。私が、女王なのよ!」


ムーレミアの額にあった第三の眼がその意思に反応し開眼する。

同時に、三つの瞳から黒い何かがあふれ出し、ムーレミアの体を包んでいく。


「あ、ああぁぁぁ!?」


ムーレミアの表情が苦悶に染まり、彼女の体で起きている変化が強烈な痛みを伴っていることがわかる。

俺は警戒し、大きく距離を取った。

何か変わるまでに斬ってしまうという選択肢をとれない程に、その闇は得体が知れなかった。

だが、どこか破壊神の気配と似たものを感じる。


「な、なんなの!?これは!?話が違う!私の力になるって!私こそが女王だって!」

『あれだけの力を貸してあげたのに、うまく使いこなせなかったのは貴方でしょう?』


突然ムーレミアが誰かに向かって話しかけたかと思えば、それに答える声が聞こえてきた。

俺以外にも聞こえているようだが、その姿は見えずマップにも表示されていない。


「いや、いやよ!私は女王になるの!姉さんよりも私の方がふさわしいのよ!」

「ぐっ!?」


唐突に頭に流れ込んでくる映像。

それはおそらくムーレミアの記憶。


幼少の頃より能力では姉よりもムーレミアの方が上であった。

当然ムーレミアが女王になるものと周囲も思っていたし彼女の姉、アマンダの母である前女王もそのつもりだった。


しかし、彼女の王位継承は水竜王によって拒否される。

どうやらこの国の王位は代々水竜王によって授けられるようだ。


水竜王は彼女が王に相応しくないと言った。

だが、具体的な理由は述べなかった。


彼女は、別にそれでもよかった。

ただ、彼女の姉は王に向いてなかった。

姉は優しすぎ、その重圧がストレスとなってのしかかっていた。

姉の体調は日に日に悪くなっていった。

その不調を周囲に隠し、執務に取り組んでいた。

知っていたのは実の姉妹であるムーレミアだけ。


ムーレミアは懇意にしていた当時の近衛副隊長に相談した。

その相談した相手が悪かったのだ。

近衛副隊長は隊長の座を狙っていた。


ちょうどいいと思った近衛副隊長は、ムーレミアに玉座簒奪を提案。

当然拒否するムーレミアであったが、どういうわけかその頃から記憶が曖昧になっていく。

そしてムーレミアは姉を殺し玉座から解放することが姉の為であると妄信。

犯行に及ぶ。


それからは聞いた通りであるが、聞いた話と内情では差異がある。

これならば何かしらの方法でムーレミアは利用されただけということだ。


「叔母様…」


後ろからアマンダの悲痛なつぶやきが聞こえてきた。

どうやらこの映像は彼女たちにも見えているようだ。


一方的に追放された後は、玉座簒奪の機会を待ちわび復讐だけを考えていたようなので今回のことについて同情の余地はないようにも見える。

しかし、それにしたってあまりに強い感情である。


『愚かね、貴方のその感情が植え付けられたものだとも知らずに』

「…え?」


その言葉でムーレミア以外の全員はことの真相を理解した。

ムーレミアだけが何を言われたのかわからないというようにポカンとする。


『貴方のその負の感情は、貴方を利用する為に私が植え付けたもの。あの男と同様、貴方には素養があったからね』

「そんな…」


全ては、何者かわからないこの声の主が仕組んだこと。

あの男というのが当時の近衛副隊長だとすれば、彼も利用された一人ということか。


「いや、いやよ…だって私は!」

『いい加減諦めなさいな。そして私に体を寄越しなさい!』

「いやぁぁっぁぁぁぁ!!!」


ムーレミアの悲鳴がひどくなる。

彼女の動揺につけこみ一気に体の支配権を奪うつもりのようだ。

この声の主はムーレミアの体を欲しているのだと理解した。


俺は地を蹴り、ムーレミアへと駆け出す。

もう彼女を助けることはできないだろう。

だが、誰ともわからない者にムーレミアの体を使わせるくらいならば。

どんな結果になろうと俺が斬る。


「悪いな、アマンダ。依頼は果たせない!」


抜き放った斬鬼がムーレミアへと届く寸前。

轟音が轟き、俺目がけて砲弾が飛んできた。


その威力を目にしたことがあった為、斬鬼では受けきれないと判断した俺はやむなく一度退くという選択を取る。

そこで運命は別れた。


「ああ…姉さん、ごめんね」


ムーレミアの体から力が抜けていく。

ふらりと揺れた視線がアマンダへと向けられた。

力なく手が延ばされる。


「ごめんね、アマンダ」


ムーレミアの目から一滴の滴が流れ落ちた瞬間。

彼女の体を闇が包んだ。


「叔母様っ…!」


アマンダの悲痛な叫びもむなしく、闇が晴れたとき、そこにいたのはムーレミアの体をした何かであった。


「戻った!戻ったぞ!この私が!海の女神が戻ったぞ!」


声だけ聞こえていた存在が、そこにいた。

黒葉周 19歳 男 

種族:半?半?人

冒険者ランク:S

HP:11200

MP:∞

魔法属性:全

<スキル>

格闘術、剣術、槍術、棒術、弓術、刀術、棍術、投躑術、暗器術、斧術

身体強化、完全回復

馬術、水中行動、天足、解体、覇気、看破、危機察知、魅了、罠解除、指揮、並列思考、変則剣技、四足機動

耐魅了、耐誘惑、耐幻惑、恒温体

礼儀作法、料理、舞踊

<ユニークスキル>

天衣模倣マスターコピー完全なる完結ジ・エンド・オブ・パーフェクト識図展開(オートマッピング)天の声(アナウンサー)竜の化身(ドラゴンフォース)万有力引(エナジードレイン)千変万化(カモフラージュ)優しき死者達(ディアフレンズ)天は我が手に(グラスプウェザー)存在消去(ステルス)天地無用(バリアフリー){水脚(new),天足}(fusion)

<オリジンスキル>

魔法、全知

<称号>

「知を盗む者」、「異世界からの来訪者」、「武を極めし者」、「竜殺し」、「下克上」、「解体人」、「誘惑を乗り越えし者」、「美学に殉ず者」、「魔の源を納めし者」、「全能へと至る者」、「人馬一体」、「無比なる測量士」、「翼無き飛行者」、「竜の友」、「破壊神の敵」、「半竜」、「湯治場の守護者」、「妖精の友」、「底なしの動力源」、「戦闘狂(バトルジャンキー)」、「深淵へ至りし者」、「神の???」、「人を辞めし者」、「奔放不羈」、「千の貌」、「憤怒を乗り越えし者」、「魔工匠」、「蛸殺し」、「海賊王の友」、「南港の救世主」、「水蛇の契約者」、「天を統べし者」、「全てを…???」、「我が道を往く」、「存在しない存在」、「不道」(new)

<加護>

「??神の加護」、「創造神の加護」、「破壊神の興味」、「戦と武を司る神の加護」、「知と魔を司る神の加護」、「生と娯楽を司る神の加護」、「死と眠りを司る神の加護」、「大海と天候の神の加護」、「鍛冶と酒の神の加護」、「炎竜王の加護」、「妖精女王の加護」

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