第220ページ 人魚姫の混乱
完全に間違えた投稿をしておりました。
内容を改変しておりますので一からお読み下さい。
申し訳ありませんでした。
人魚姫視点です。
「叔母様が…?」
そろそろ寝ようかと思った矢先に届いた報告はとても信じられるものではありませんでした。
突如鳴り響いた敵襲を告げる鐘。
これが鳴り響くのを聞くのも私は初めてです。
本来魔物は接近し次第防衛部隊によって駆逐されます。
群れをなす魔物であろうとも問題ありません。
我が国の防衛部隊は凄いのです。
その鐘が鳴り響いた意味を即座に理解した私は、跳ねあがるように寝床を飛び出し謁見室へと向かいました。
非常時には其処に集まるようにと言われていたのです。
謁見室の中には既にこの国の主だった者が集まっていました。
「姫様!」
「トルーマン!状況は!?」
「わかりませぬ!今人が!」
「報告します!」
扉を開け放ち兵が入ってきます。
彼は確か門に勤めている防衛隊で泳ぎのスピードに定評のある方です。
非常時の伝令として訓令されていたのでしょう。
「国門に異常なサハギンの大群が出現!特殊固体のようで通常のサハギンとは比べ物にならない力を有していると思われます!」
「サハギンの特殊固体だと!?」
「そんなものがいるのか!?」
サハギンはこの辺りでもよく見る魔物で駆逐しても駆逐してもキリがありません。
群れでいることもありますが大群ということはありません。
4、5体といったグループ程度です。
それに特殊固体など聞いたことありません。
詳しく聞けば身体に黒いオーラのようなものが纏わりついていて通常のものより一層凶悪な見た目をしていたのだそうです。
それがざっと数百。
「班長クラスの方達なら一対一でもなんとかなるでしょうが一般兵では4人は必要かと」
「むぅどうしたものか」
我が国の兵達は精鋭ぞろいです。
しかし人数はあまり多くはありません。
大群に攻められたことなどなかったので今まではそれで問題がありませんでしたが…
「水竜様達にお願いするべきでしょうか?」
「無理です。水竜様方は今…」
そうでした。
水竜様達は今ここにいないのです。
毎年この時期はとある用事で皆さんがあちこちに動かれます。
水竜王様もです。
「狙ったようなタイミングですな」
「まさかこのことを知っていたというのか?サハギンが?」
「それなのですが…」
チラチラと私を気にしながら兵は私にサハギンを率いるように現れたというムーレミア叔母様の存在を聞きました。
叔母様は母様の妹で母様が王位を継がれた際、この国を出奔なさりました。
正直私は叔母様の目が怖かったので、それ自体は申し訳ありませんがよかったです。
ただ、母様が亡くなった時どういうわけか叔母様のことを思い出しました。
王宮にいれば力になってくれたのでしょうか?
それがこんなお帰りになるなんて…
「ムーレミア様が…まさか…」
「いや、あの方なら有り得ぬことではない。水竜王様もあの方には警戒なされておいでだった」
この国の王は血統で決められますが、最終的に王位を決めるのは水竜王様です。
水竜王様が現存している王族の中から最も最適だと思われる女王を選びます。
母様が女王となった時、私はまだ幼かったのであまり覚えてはいないのですが水竜王様は迷うことがなかったと聞いています。
どういう判断基準で選ばれているのか私達は知りませんけれど。
「しかしだとするならこれは単なる魔物の襲撃ではなく…」
「王位簒奪…クーデターと言うべきということか」
けれど今いらっしゃらないとはいえ武力で王位を奪おうと水竜様達が戻ってくればそのような王を許すとは思えません。
そもそも私は王位を望んでいたわけではないのでそれが認められるのならば叔母様が女王の座に着くことも…
いえ、やはり駄目です。
成り行きでなってしまったとはいえ、今は私が母様の跡を継ぐ女王。
民達の為、私が屈服するわけにはまいりません。
武力による支配など誰も望んではいないのだから。
昼間に泳いだ街並が思い浮かびます。
国民の笑顔を思い出し、私は震える手を押さえようと自分で握りしめ胸に押しつけました。
逸る鼓動が感じられます。
ああ、駄目ですね。
やはり私はまだ女王とは言えません。
こんな時なのに上に立つ私がこれ程恐怖しているなど。
こうしている今も防衛隊の皆さまは戦ってくれているというのに。
母様なら、お婆様なら、率先して陣頭に立っていることでしょう。
そしてトルーマンや他の方から怒られていることでしょう。
ふふ、そう想像すると少しだけ気分が和らぎました。
私は今自分にできることをしましょう。
「大変です!」
「今度は何だ!?」
先程とは別の兵士が駆けこんできました。
その顔には驚きと喜びが見えます。
何があったというのでしょう。
「客人であるクロバ殿が単身でサハギンの群れに特攻!一瞬にしてその全てを屠りました!」
……はい?




