第20ページ ランクアップ試験
地竜製の防具を頼んだ翌日。
休養も十分にとったと判断し俺は依頼を受けにギルドへ来ていた。
今の俺はCランク。
討伐依頼も受けられるから楽なもんだ。
俺は掲示板を見てどれにしようか悩んでいた。
目を惹かれるような依頼がないのだ。
今は初秋といった時期であるから魔物たちも冬越えの準備であまり盛んに活動していないのだと他の冒険者から聞いた。
親切に教えてくれたその30代くらいの男は冬に仕事を受けなくてもいいよう金を貯めておくのが冒険者流だといって報酬のよかった護衛依頼をかっさらっていった。
護衛依頼を受ける気はないのでいいのではあるが。
「うーん…」
せっかくだから討伐依頼を受けたいが、すぐに済みそうなものしかない。
かと言って防具の受け取りやランクアップ試験のこともある。
長期間かかるものも嫌だ。
どうするかな…
「あ、シュウさん!来てたんですね!」
「ん?」
頭を悩ましていた俺に声をかけてきたのはレイラだった。
ひょいひょいと受付の向こうから手招きしている。
「どうした?」
「ギルド長が来たら顔を出すようにとのことです」
「わかった」
これはランクアップ試験の詳細が決まったかな?
と、俺は少しだけ気分を高揚させながら、もう行き慣れた執務室へと入った。
「よう。調子はどうだ?」
「昨日も会っただろう。それで?今日は試験のことか?」
「ああ、そうだ。お前の場合少し特別になるからその説明だな」
「特別?」
「本来の試験内容は様々だ。貴族の護衛や盗賊の討伐、魔物の討伐・捕獲、貴重素材の入手なんかだな。だが、時期も時期で試験内容として認められるものがあまりないんだ。そういった場合は高ランク冒険者と何らかの依頼に出てもらい判断してもらったりするんだが、今回は丁度いい依頼が入った」
「ん?なかったんじゃないのか?」
「試験にするようなもんじゃないんだがお前ならいいだろって辺境伯も言ってる」
一冒険者の試験にいくら辺境伯でも口を出したりしないだろう。
つまり、今回は辺境伯が口を出す立場にあった依頼ということだ。
すごく嫌な予感がする。
「その依頼というやつは?」
「この間の魔物の大群…あまりにも不審な点がありすぎる。あれはおそらく人為的なものだ」
そうなのだろうな。
終わった後に聞いたが、ゴブリンキングが地竜を従えることなどできないらしい。
ランクからして地竜の方が上なのだ。当然だろう。
つまり他の誰かが暗躍した可能性がある。
「故に、何らかの証拠が残っていないかを探すために王国は深淵の森に調査を派遣することを決めた」
「その調査が依頼か?」
「そうだ」
「深淵の森は危険な場所なんだろ?いくら試験とは言え一人で行けと?」
「確かに。深淵の森は危険度Aランクとされる区域だ。だがまぁお前なら行って帰ってくるのはわけないだろう。深部まで探索しろとは言ってない。それにな、一人じゃない」
「なに?」
「王都から派遣されてくる人材と一緒に行ってもらう」
「足手まといは御免だぞ」
「心配するな。派遣されてくるのは七星剣の一人だと聞いたぞ」
「七星剣?」
「この国の最高戦力と呼ばれる七人のことだ。その力は一人で一軍に匹敵し、城一つ落とすこともできるって話だぞ。まぁお前も色々規格外だがな」
七星剣ね。
どんなやつかは知らないが貴族とかは勘弁してもらいたいな。
色々うるさそうだし。
「ちなみに一番隊の隊長も七星剣だ。確か序列6位だったか」
あの人クラスか。
直接戦ったことはないが、今の俺でおそらく同等かそれ以上の力を持っているであろう人物。
まぁ目の前のこの男もそれくらいの力はあるだろうが。
なんにしろそれ程の使い手なら特に俺が守る必要もないだろう。
この依頼受けても問題はなさそうだな。
ランクアップはしたいし。
「わかった。それでいつ頃になりそうだ?」
「王都からここまで早くて一週間というところではないかな?休養もいるだろうからまぁ10日後くらいか。調査団が来たら知らせを送る」
「待て。団と言ったか?一人じゃないのか?」
「それはそうだろう。いくら戦力があっても調査ができる人間がいないと意味がないしな」
確かに。
それなりに戦えるやつならいいのだが。
俺は仕事に戻るというグラハムに礼を言い、依頼を受ける気分でもなくなったので宿に戻る。
せっかくディメンションキーをもらったので今俺の所持品は全て胸の鍵の中だ。
それ故に何も置いていない部屋で一週間の予定をたてることにする。
まずはポーション類の補充。
金の節約の為に買えなかったマナポーションや状態異常回復ポーションも買っておこう。
深淵の森の情報もできるだけ集めねばなるまい。
それから、やはり武器の種類を増やそう。
スキルも金もある。
斬鬼に不満があるわけではないが、色々な場面を想定して、だ。
あとは…そうだな、街の探索でもするか。
慌ただしくしていたからまだこの街をゆっくり見て回っていない。
一日かけても見て回れるかわからないしな。
ベッドに寝て考えていた俺だったが、気づけば日が暮れていた。
一階に降り、ファーザに飯を出してもらう。
相変わらずこの店の料理はうまい。




