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とある冒険者の漫遊記  作者: 安芸紅葉
第九章 荒れる海と幽霊船「曇天の港町」編
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第201ページ シュピーツ武具店

「ふぅ騒がしい奴らだったな、アステール」

「クルゥ」


壊してしまった机の代わりを、余っていた木材を使い一瞬で作ってやれば一拍置いて歓声が上がった。

ダンに圧勝したことを褒められ、机を作った魔法に驚かれていた。


そしていつの間にか宴会へと様変わりし、備蓄だという魚を振舞ってもらった。

アステールもご相伴にあずかりすっかり機嫌も元通りだ。


漁師たちの宴会はまだ続いているが、酒を盛られすぎた俺は少し暑くなってきたので風に当たりに出てきた。

桟橋の端に座り海を眺めている。

アステールが伏せて背もたれになってくれており、柔らかな羽毛と潮の香りを含んだ夜風が気持ちいい。


「ここにいたのか」

「オルフォー組合長…」


後ろからかけられた声に振り向くと、オルフォー組合長が腕を組み仁王立ちしていた。

俺が座っている為見上げる形になるんだが、かなりの威圧感がある。


「…ありがとな」

「何の話だ?」


俺の横に腰かけて海を眺めていたオルフォー組合長が唐突に言ってくる。


「ここ最近、あいつらは本当に元気がなかったんだよ。お前のおかげで今あんなに騒げている」

「俺は何もしていないぞ?」

「いや、お前のおかげさ。お前がその力を皆に示してくれたからだ」


俺がダンを腕相撲で圧倒したことで、漁師たちもこいつならもしかしてと思ったらしい。

ダンは漁師の中でも格段に強く、Bランク冒険者としての顔も持っているそうだ。


「だが、力だけで解決できる問題ではなくなってしまっただろう?」

「そうだな…」


クラーケンを倒すだけでいいならば、今すぐにでも向かっていい。

海の中ということでいささかの不安はあるが、まぁなんとかなると思っている。

ただ、その不安を解消する当てもある。

今日行くつもりだったんだが、明日になりそうだな。


「そろそろ戻るか」

「ああ」

「クル」


今は、盛り上がっている漁師たちに付き合ってやるのも悪くはない。


---


翌日。

宿を取り忘れていた俺は、漁業組合の片隅にそのまま泊まらせて貰った。


漁師たちの朝は早く、こんな状況になっても習慣はそうそう変わらないようだ。

バタバタと動く音で目が覚めると、まだ日も上がっていないような時間だった。

相変わらず厚い雲に覆われている為、結局日は見えないのだが。


そんなわけで何かの魚の干物とクーシュエルという名前らしい白粥っぽい物を朝食として頂いた。

白粥っぽいとは言ったが、味はきちんとついており、おそらく魚から取った出汁を使っているのであろう、大変美味しかった。


そして海辺を散歩しながらのんびりしていると、店が開くような時間になった。

俺は水中戦での不安を解消する為にある店に向かう。


人通りがあまりいない道をアステールと二人で進む。


細く入り組んだ道を進んでいき、裏路地を通る。

少し道が開けてきて、その店はあった。


「シュピーツ武具店」と看板が掲げられた店に入る。

当然アステールは入れないので店の前で待っていてもらう。


「こんにちはー。誰かいないか?」

「はいはい、誰かな?」


店内に誰もいなく、カウンターの向こうの扉が開いていた為奥にいるのだろうと声をかけると、返答があり一人の男が現れた。


まだ若く30代くらいで水色の短髪に茶色い瞳。

優しげな風貌で、一見して鍛冶ができるようには見えないが腕は確からしい。

何せガイアの親父さんが紹介するくらいだからな。


家を建ててから親父さんの店を訪ねた俺は、水中で扱える武器はないかと聞いた。

親父さんは悔しそうに「無い」と答え、代わりにこの店を教えてくれた。

水中武器をメインとして扱う変わった店であるが、店主の腕はいいと。


「ガイアのジズマンから紹介された。冒険者のシュウ・クロバだ」

「ほう!あのジズマン翁の紹介かい!君かなりの使い手なんだねぇ…ふむふむ、確かにやりそうだ。僕はこの店の店主シュピーツだよ。よろしくね」


シュピーツは俺の全身を下から上まで見て、特に手のひらを観察していたようだ。

何も感じなかった為特にスキルを使ったわけではないのだろうが、その口ぶりには自分の目利きに自信があるようだった。


「それで、今日はどういったご用かな?」

「水中で取り扱える武器が欲しい。クラーケンを討つ為に」


シュピーツの顔が真剣なものに変わった。


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