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とある冒険者の漫遊記  作者: 安芸紅葉
第九章 荒れる海と幽霊船「曇天の港町」編
235/358

第200ページ 腕相撲

想像以上に深刻な内容だった。

キャプテン・ショーンは、彼らは死した後も神によって海の平和を守るように義務付けられた。


それはもう呪いだ。


だが、この話には少しおかしな点もある。

全てを信じることもできないな。


「親父!何を悠長に昔話なんかしてやがる!そんなガキとっとと追い出せ!」

「うるせぇ!ガキはてめぇだ、このバカが!」


話が終わり俺が考え事をしていると、ぶち破るような勢いで扉が開かれた。

入って来たのはこちらも浅黒い肌をした筋骨隆々の30代だろう男。

薄紫の髪を振り乱しながら、目尻を釣り上げてこちらを睨んでいる。


「おいガキ!どうせてめぇにゃあここの問題を解決なんてできねぇ!恥かく前にとっとと帰んな!」

「黙れっつってんのがわかんねぇのかてめぇには!」


オルフォーが手加減なしで男の頭に拳を落とす。

男の方がオルフォーよりも長身なので落とすというよりは振り下ろすという感じだったが。


「ってぇな!このクソ親父!」

「黙れこのバカ息子!」

「ぶっ」

「「ああん!?」」

「はっはっははは!!」


その漫才のようなやり取りに俺は思わず吹き出してしまい、声を揃えてこちらを振りかえった親子にもう我慢できなかった。


「あーお腹痛い。はっはは」

「この野郎ぉ…」

「よせ!こいつはこんな(なり)しているが国王が信頼を寄せる程のSランク冒険者だぞ!」

「なにぃ!?」


こんな形は余計だ。

というか面白いなこいつら。


「シュウ、こいつは俺の一人息子でダンだ」

「シュウ・クロバだ。一応これでもランクS冒険者だよ」

「ふん!ランクSがなんだってんだ!あいつらでもクラーケンには手も足もでなかったさ」


クラーケンに懸賞金が付き、あらゆる冒険者がいた。

中にはSランク冒険者もいたらしいが、結局水中のクラーケンに対して何もできなかったようだ。


「男なら力を示せ!」


ダンッと音を立て、ダンが机に肘をつく。

どうやら腕相撲らしい。


ダンの腕の筋肉を見れば、俺に勝ち目があるとは思えない。

だが、それは見かけ上だけの話だ。


俺は正面に座り手を組む。


「おおー」

「いいぞ、ダン!」

「やっちまえ!」


いつの間にか集まっていた漁師の男達が俺達を取り囲む。

狭い部屋に大人数だからかなり暑い。

オルフォー組合長もやれやれと首を振りながらどことなくわくわくしているようにも見える。


完全に審判役に徹するようだ。

俺達の手の上に自分の手を重ねて「準備は?」とか言っている。


「いつでも」

「いい度胸だ、小僧」


ニヤッとダンが笑った瞬間、「始め!」と声がかかる。

ダンが一気に力を込めて俺の腕を押し倒そうとしてくるが俺の手はフルフルと震えるだけで全く傾かない。


周りに強力な奴が多すぎて忘れそうになるが、俺の身体は異世界補正がかかっている。

腕力も常人以上なのだ。


ダンの顔と腕に血管が浮かび、汗が出てきている。

身体を見ても分かる通り、漁師の中でもダンは腕相撲が強い方なのだろう。

周りからどよめきが聞こえてくる。


俺はプルプル震えているダンと目を合わせ、ニヤリと笑うとダンの腕を机に叩きつけた。

ダンが力を込めた際にミシミシと軋んでいた机は、それが致命傷だったように叩きつけられた瞬間にバギッと盛大な音を立て真っ二つに割れた。


「「「「「あ…」」」」」


机が全ての衝撃を吸収してくれたようで、ダンに怪我はなさそうだ。

茫然としてこちらを見てる。

他の皆は机だったものを凝視している。


「…じゃ、俺はこの辺で」


片手を上げて俺は踵を返す。

ガシッと俺の肩を誰かが掴んだ。


「ちょっと待て」


オルフォー組合長のいい笑顔が振り向いた視界に入ってくる。

どうやら机を一つ作る必要がありそうだ。

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