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とある冒険者の漫遊記  作者: 安芸紅葉
第九章 荒れる海と幽霊船「曇天の港町」編
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第197ページ 南からの依頼

「ふぅ。やっと終わったな」

「左様でございますね」

「手伝ってくれてありがとな、グラハム」

「これくらいはどうってこともねぇよ。力仕事は得意だしな」


冒険者ギルドのギルド長という身分にありながらそう言ってニカッと笑えるグラハムはいい奴だ。

ただその笑いが堅気(かたぎ)にはまったく見えないことが残念だな。


全ての部屋に買い揃えていた調度品を置き、内装も完璧に仕上げた後、外で暇そうにしていた辺境伯も中に入れて簡単なお披露目とする。

地下室以外を見学させると上々の反応が返ってきた。満足だ。


「それにしても、こんなことまでできるようになっているとは…」

「そのうちできないことなんてなくなりそうだな」


辺境伯とグラハムが呆れたように笑うのを、俺も笑って流す。

見るだけでできるようになるので、やろうと思えばやれてしまうだろう。

特にそんなつもりはないが。


「ところで魔道ポストはまだなのか?」

「今注文中なんだ。在庫がなくてな」


魔道ポストというのはポスト内に魔法陣が刻まれているポストのことだ。

魔法郵便局という役所が管理しているもので、魔法郵便局に手紙やら荷物を渡すと任意の相手のポストに転送することができるという便利な物だ。


ただ、ガイアでは新たにポストが必要になると思われていなかったようで在庫が無かった為発注という形になった。


このポスト、便利だからこそとてもお高いのだ。

俺の使っていなかった貯蓄もそこそこ吹っ飛んだ。

個人でポストを設置する人はなかなかおらず、貴族であろうと本家に一個あればいい程度なんだそうだ。


グラハムには家を建てると告げた際に、魔道ポストを設置する予定だということも伝えてあった。

魔法郵便局を経由するより直接来た方が早いとは思うが念のためだ。


それに冒険者ギルドに伝えておけばポストに指名依頼書などを直接送ることもあるそうだ。

本当に便利だ。


その後、談笑していると来る予定ではなかったマインスが訪ねてきた。

辺境伯とギルバートがこっちにいるのでマインスは城に留守番という話だったんだがどうやら緊急らしい。

それもマインス本人が来なければならないと思う程の。


「南の辺境伯ユース・フォン・クインテス様より緊急の手紙が届きました」


マインスが差し出したのは一通の手紙。

緊急といっても極秘というわけではなかったらしく、監査の為に一度開封された形跡がある。


難しい顔で手紙を受け取ったラッセン辺境伯は、読み終えると更に難しい顔をしながらその手紙を俺へと差し出す。


「ん?」

「お前宛と言ってもいい内容だ」


「読みなさい」と言われたので、言われた通り手紙に目を通す。


内容はクインテス辺境伯が治める港町に出現したクラーケン討伐を俺に依頼したいということだった。

近いうちにギルド経由で指名依頼として入るらしいが、ラッセン辺境伯からも俺に口添えしてくれれば嬉しいとある。


ふむ。

港町か。

ということはつまり海鮮だな?


この世界に来てから新鮮な魚料理を食べる機会はあまりなかった。

これは期待できるか?


「どうするんだ?」


俺が読んでいる間に今いるメンツに辺境伯が手紙の内容を簡潔に説明してくれていた。

グラハムが興味深そうに聞いてくる。


「行ってもいいと思ってる」


ちょうど季節は夏だ。

海水浴というわけではないが、この世界の海を見てみたいという気持ちもある。

それになんだかこういう魔物討伐依頼ってのはザ冒険者みたいで心惹かれるものがあるんだ。


「わかった。なら、ギルドにも届いてるだろうから確認してここに届けさせよう」

「頼む」


面白そうに笑ってグラハムが言う。


「引き受けてくれてよかった。クインテス辺境伯は友人だからな。私からも礼を言う」

「まだ討伐に成功したわけじゃないぞ?」

「お主が出るなら討伐間違いなしじゃろう」


呆れたようにギルバートが言う。

もちろん負ける気は無いが、海の中で戦うなんて初めてだからわからないぞ。


「出発はいつになさいますか?」

「…緊急で連絡をしてくる程なんだ。急ぎなんだろう。明日出る」


武器屋の親父さんのとこに行ってみるか。

刀で戦えるのかは確認の必要がある。

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