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とある冒険者の漫遊記  作者: 安芸紅葉
第八章 更なるステージへ「Sランク昇格試験」編
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閑話 我が主(ウィリアム視点)

「そうですか。あなたにもようやく生涯の主と定める方ができましたか」


私の前で自分のことのように嬉しそうにしてくれるのは、私に王城勤めという名誉ある仕事をくれた大恩人で孤児院の大先輩です。


「ありがとうございます、ゲラルト様」


私は今までの感謝を込めて深く頭を下げます。

それを見るゲラルト様は、いつものように目を細めて微笑みを浮かべていらっしゃいます。


これでも私は孤児院出身者の中でも優秀な部類の者であると自負しています。

純粋な戦闘能力だけならば、ゲラルト様に勝っているでしょう。

しかし、今ここで戦闘になった時勝てるとは思いません。


ゲラルト様は既に老人と言ってよい年齢ですが、その所作には微塵も隙がありません。

更には歳を取る過程で培われた経験と知識は、より一層の深みを出しています。

まさに憧れの人です。


「しかし、シュウ様ですか。これから苦労するかもしれませんよ?」

「覚悟の上です」


私の忠誠を受け入れて頂いた後、聞かされたシュウ様の事情は想像を遥かに超えており、魔神との敵対や、妖精女王からの依頼などどう考えても一個人で挑む物ではないと思います。


しかし同時に、そんな規格外の方に仕えられるということを嬉しく思います。

私がそう言うと、ゲラルト様から「貴方も十分規格外ですから大丈夫かもしれませんね」とお言葉を頂きました。

私など少し特殊な魔法が使えるだけなのですが。


そんな私は既に主から仕事を二つ承っています。


一つは普段着の仕立です。


私が仕立てた礼装を気にいっていただけたようで、同じ強度を持つ普段着も仕立ててくれと頼まれました。

あの素材は貴重なものでお値段もそれなりにするのですが、シュウ様にお金の心配など無用なのだと知りました。


使うこともあまりないそうで、貯まるばかりなのだと愚痴る様は他の冒険者から見ると羨ましい限りだと思います。


二つ目は、神聖教国に関する情報です。


私の前職はこちらが主な仕事でしたので、情報に困ることはありませんが、辞めた身としましてはそれらの情報を勝手に開示してもいいものかどうか悩みました。

しかし、国王陛下直々に許可が下り、私は私の知る限りの情報をシュウ様へと伝えることができました。


それを聞いたシュウ様は憂い顔で何やら考えていらっしゃいました。

どうも勇者の動向が気になるようです。


シュウ様も異世界人なので当然と言えば当然かもしれません。

勇者は、神聖教国で力を付けてから魔大陸へと遠征するようです。


人族としては最もなのですが、あの国が本当にそんな考えで勇者を召喚したのか疑問に思います。


あの国の人は魔族を敵視していますが、獣族と我々のような異教徒も蔑んでいます。

排他的で自国至上主義の彼らの主張をそのまま信用していいのかどうか。

信用している人はいないと思います。


「魔大陸に行くか、神聖教国に行くか迷っておられましたよ」

「極端な二択ですね。その二択は絶対に嫌だと言う人が多いと思いますよ」


私もそう思います。


あの方に着いて行くのは本当に大変そうです。

しかしながら、ようやく見つけた我が主。

その背に従い、どこまでも付き従う所存であります。


そして叶うなら、あの方の行きつく先をこの目で見たく思います。


それまで、死ぬことはできませんね。

より一層の努力をせねば。

あの方のお役に立つ為に。

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