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第17ページ プロローグ
二章開始です。
深き深き森の奥。
深淵と呼ばれる森で胎動する何か。
ドクンドクン
怪しく口を開け、近寄るものを飲み込むそれは誰にも気づかれぬままに広がり続ける。
「グル?」
今また、犠牲になるモノが一匹。
何も知らぬそのモノは不用意にもそこに近づく。
不穏な気配を感じながらも身体が言う、「入れ」という声に従い獣は歩みを進める。
「グル!?」
突如膨らんだ闇が獣を包み中へと飲み込む。
何が起きたのかわからず、悲鳴をあげることするできなかった獣はそこで完全に意識を失った。
すでに囚われた獣にはここから出るという考えはない。
あるのは保護本能。
ここの最奥にあるアレを守らなければならないという存在理由のみ。
それだけのために自らは存在しているのだと、獣は理解している。
それが何かに与えられし理由だとは考えもしない。
何かは次を待つ。
それは自らを守る傀儡と為るものか。
もしくは自らを壊しに来るものか。
次に来るのは果たして餌か従者か。




