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とある冒険者の漫遊記  作者: 安芸紅葉
第八章 更なるステージへ「Sランク昇格試験」編
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第182ページ 別行動

昨日は投稿できずにすみません。

最近どうにも忙しくて…

なるべく頑張ります。

予感というのは外れるものだ。


昨夜は結局何も起こらなかった。

新しい死体が出ることも、犯人らしき目撃証言もない。

夜通し見回りをしたものの手掛かりゼロで宿に戻った。


今日は日中にしっかりと休息を取り、また日が暮れてから巡回を開始することにした。

それまで解散だ。

俺とアステール、ウィリアムは宿へ。

シッケルとブリッツは寄宿舎へと戻っていった。


「ウィリアム、この事件どう思う?」

「長年諜報部に携わっていますが、あまり記憶にない事件ですね。一つだけわかるとすれば犯人は異常だということですか」

「異常か…」


確かにそうだ。

あれだけの狂気を発していながら、死体の損壊はひどく少ない。

そこに犯人のヒントがあるような気もするが、やはりわからない。


イギリスで昔起きた似たような事件を知っているが、結局あの犯人も捕まっていない為ヒントにはならない。

確かあの事件の犯人は色々と推測され、医者であったり孤児であったりしていたのだったか。

真相は謎に包まれているが。


「私はもう少し情報を集めてみます」

「頼む」


こいつ元気だな。


---


ゆっくりと休息を取り、日が沈む前に俺達はまた集まった。

昨日と同じメンツであるが、ブリッツとシッケルの二人はしんどそうだ。


「どうした?」

「どうしたじゃねぇよ…俺達は通常業務もあるんだから昼に休めるわけねぇだろ!寝てねぇんだよ!」


昨夜は巡回の当番だったというわけではなく、プライベートの時間を使っていたので、今日も普通に朝から出勤だったのだそうだ。

そこで文句を言われても知らん。

勝手に付いてきたのはそっちだろう。


「ウィリアム、何かわかったことはあったか?」

「いいえ、特には。ただ、全員妊娠経験があったようです」

「妊娠?」

「ええ。ですが全員中絶しています」

「それは共通点ではないのか?」

「それはそうなのですが…」

「中絶なんて珍しくもねぇよ。街娼してる奴らなんて大抵してるぞ?それを共通点なんて言うのはなぁ」


この世界にも避妊具はもちろんあるが、街娼など身売りをしている人は使うことがないそうだ。

避妊具を持ち込む客もいないし、避妊具をしてもらうと客が取れないのだと。

仕方ないのかもしれないがなんだかなぁ。


「それで今日はどうしますか?」


ウィリアムが聞いてくる。

これは昨夜全員で行動し結局何も手掛かりが掴めなかった俺に対する嫌味なのだろうか?


「今日は別れて行動しよう。俺とアス」

「ちょっと待ってくださいっす!」

「…なんだ?」

「俺はシュウ様と行動する為に来たんす!シュウ様と一緒がいいっす!」

「…わかった。ただし様はやめろ」


俺がそう言うと、シッケルは顔を輝かせ、逆にブリッツは顔をしかめる。


「ちょっと待てよ。なら俺は…」

「悪いな、アステール。頼むよ」

「クル…」


アステールがブリッツの方を一回見てやれやれと首を振る。

もし人であったら溜息でも吐いていそうな仕草だ。


「うっ…ちょっと待てよ!俺もシッケルと!」

「それだと別行動にならないだろう。ウィリアムは一人でいいな?」

「かしこまりました」


本当は俺だってシッケルとブリッツで組ませたかったがシッケルが引こうとしないんだからこうなる。

アステールを一人で行動させるというのは色々問題があるのだ。


「各自何か発見しても安易な行動はするな。犯人がどんな奴かは知らんが危険な奴だってことはわかる。油断するなよ?」

「はい!」

「クル」

「承知しました」

「…わかったよ」


三手に別れて俺達は二番街の巡回を開始する。

二番街全てを回るわけではないが、それでもかなり広い。

夜になり明かりがなくなったことで、道の複雑さが増しているようにも思う。


もっともそんなこと俺には関係ない。

衛兵隊の盗賊職で一番の実力があるというシッケルも夜目は利くし、アステールやウィリアムも当然大丈夫だ。

問題があるとすればブリッツだけだが、アレは別に良いだろう。


「今日こそは何か手掛かりが欲しいっすね」

「そうだな」


この事件、わからないことが多い。

何より気になるのは俺が覚えた犯人を知っているような感覚。

あれが一体なんだったのか突きとめるまではこの仕事を降りる気はない。


だが、これが試験である以上当然期限が設けられている。

今回の依頼は特殊なので解決が合格に必要ということではないらしいが、全く手掛かりも得られず協力にならなかったのでは評価が低いことは間違いない。

別にどうしても受からなくてはいけないわけではないが、どうせやるなら捕まえてやるくらいに思っておいた方がいいだろう。


何よりも俺のプライドが許さない。


「シッケル。この街のことはお前の方が詳しい。何か気付いたことがあればすぐに言え」

「はいっす!」


俺達は注意深く辺りを見回しながら巡回を続ける。


識図展開(オートマッピング)>を発動している為道に迷うことはない。

アステール達を示す青点や、巡回している衛兵達を示すのであろう緑点もあるが赤は確認できない。


今日も空振りであろうか、と思い始めた時。


「キャーーーーー!!!」


夜の静寂を破るように、女の悲鳴が響き渡った。

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