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とある冒険者の漫遊記  作者: 安芸紅葉
第八章 更なるステージへ「Sランク昇格試験」編
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第178ページ 衛兵隊二番詰所

フィリップに頼み裏口から外へ出た俺は、そのままギルドから程近くにある衛兵詰め所に来ていた。

一番街から三番街までに一つずつ詰め所があり、衛兵の休憩スペース、事務室、取調室、簡易牢なども設置されている。


衛兵本部は一番街の王城付近にある詰め所なのだが、今回は娼婦を狙った連続殺害事件である為、娼婦の多い二番街に対策室が置かれているそうだ。


「依頼を受けてきたシュウ・クロバだ。責任者に会わせてくれるか?」

「こちらへどうぞ」


案内してくれたのは若い衛兵だった。

だがどうにも歓迎という雰囲気ではない。

冒険者に頼るのは不本意です!と彼が醸し出す空気が言っている。


これが彼だけならば若いからだと理由づけられるが、他のベテランと言った感じの兵からも同じ空気が出ている。

依頼を出したのは衛兵からで間違いないんだよな?


「ああ、よく来てくれた」


俺が案内された場所は小さな会議室のようなところだった。

街の地図を広げ何人かの衛兵と、騎士団の者が話合っている。

最初に気付き俺に声をかけてくれたのは知っている顔だった。


「ご無沙汰しております、シュタイナー保安部長」

「ベッケルでいい。それより早速手伝ってくれ」


暗い赤髪に引き締まった体躯。

鋭い目を光らせ皆を見まわしているの40代くらいの男は、ベッケル・フォン・シュタイナー。

王国軍保安部部長。

王国の治安維持を任される者で、星天会議にも出ていた為顔見知りだ。


「こっちはエッケルス・フォン・ディアス。王国騎士団衛兵隊隊長だ。衛兵のトップだな」

「よろしくお願いする」


紹介されたエッケルは、金の長髪にひどく静かな顔。

美形ではあるが、感情がわかりにくい。

彼は30代後半といったところか。


「それでこっちが衛兵隊所属のシッケル。冒険者でいうところの盗賊技能を持っている。衛兵隊の中では彼が一番だな」

「よろしくっす」


こっちはまだ若い男。

といっても俺よりは上で20代半ばといったところ。

その顔には俺が呼ばれたことに対する不満がアリアリと見える。


「冒険者のシュウ・クロバだ。よろしく。それにしても俺が来ることがわかっていたような言い方だな?」

「もちろんわかっていたからだ。君がSランク昇格試験を受けに来ていることは知っていた。ちょうどよく実践試験となってくれてよかった」


当然というように頷くベッケル。

俺の実践試験がこの依頼になることはどうやら決まっていたことのようだ。

別に問題はないが。


「では事件について説明してくれるか?」

「うむ」


最初に事件が起きたのは今から二週間前。

被害者は娼婦ばかりであり、現在7名の犠牲者が出ている。


一番街には遊郭と呼ばれるような高級な店があるが、この店子達は襲われていない。

被害に合っているのは所謂街娼ばかりであり、それ故に二番街に被害が収まっていると言える。


被害者の七名には街娼という以外の共通点は発見できず、被害者全員が交流があったわけでもない。

何人かは顔見知りということもあったようだが、まったく交流のない者もいた。


年齢もバラバラであり、出身もバラバラ。

王都出身もいれば、孤児でどこの者かわからない者もいる。

外から流れてきた者もいた。


被害者の遺体はひどい状況のようだが、殺しは一瞬。

殺した後で死体の腹をかっさばき子宮を摘出し持ち去っているそうだ。


二番街では夜の見回りを強化しているが、二番街に人員を集中させるわけにもいかない。

だが二番街は王都の中で最も広く、どうしてもカバーできない部分が出てしまうという。


犯行日にも規則性がなく、連続で犯行が行われたこともあれば何日か開いてから行われたこともあった。

衛兵隊の警邏の穴をつくように行われることで衛兵の警邏情報を知ることができる内部に犯人がいるのかとも思われたが、二人一組となり見張らせてもそれをあざ笑うかのように犯行は行われた。


殺したあとで子宮摘出などわざわざ時間のかかるようなことをしている為、当初犯人を見つけるのは容易であるとされていた。

証拠もあるだろうと。


しかし、一向に犯人を捕まえることができず証拠も発見できていない。

業を煮やした国王は、ベッケルと相談の上ちょうどSランク昇格試験を受けに来る筈の俺に依頼を出すことを決定。

今に至る、と。


「なるほど。上が勝手に決めたことであり衛兵隊は納得していないということか」


国王ならばベンや辺境伯から俺のスキルについて報告を受けていてもおかしくはない。

むしろ彼らの立場からすると当然だろう。


国王にとってはこれ以上の犠牲者を出す前に手っ取り早く俺の眼を使って片付けたい。

だが衛兵隊からすると自分達が無能であると言われたように感じたのだろう。


けれど俺はこの衛兵隊が無能であるようには思えなかった。

ステータスを確認したわけではないが、中には強そうな者も、頭の切れそうな者もいる。


決して無能ではない衛兵隊が捕まえられない連続殺人鬼か。

一体どんな奴なんだろうな。


「それを見つけるのが君の仕事だ」


眼を使わなければならないなら、使うのは吝かでもないが、このまま俺が解決してしまうと衛兵達がどう思うかわからないから怖いな。


まぁそんなことは国王がどうにかするべき問題だ。

とりあえず現場に行ってみますか。

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