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とある冒険者の漫遊記  作者: 安芸紅葉
第八章 更なるステージへ「Sランク昇格試験」編
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第177ページ 特殊依頼

翌日。

実践試験を受ける為にギルドを訪れた俺は、案の定囲まれていた。


「是非うちのパーティーに!」

「一緒に依頼を受けてやってもいいぞ」

「お付き合いしている人はいらっしゃるんですか!?」

「爆発しろ!」

「あらぁんイイ男ねん」


ぞくっとした。

さっさとここを離れたいが、ギルドを出るわけにはいかない。

進もうにも進めないし誰も俺の話を聞こうとしない。

めんどうな!


「シュウさんではないですか!?」


そんな時にかかる助けの声。

俺は助かったと思いそちらにいる受付嬢に目を向ける。


「ギルド長がお呼びです!支部長室にどうぞ!」


…めんどうな!!


---


「いやいやー大変でしたねぇ」


冒険者ギルドサンデルス支部支部長室は、書類が山のように積み重なっていることもなく、きちんと整頓された綺麗な空間だった。

ガイアやアキホの支部長室は書類が山積みだった為、あれが普通なのかと思っていたが、そういうわけでもないようだ。


「あんたがギルド長だったんだな?」


目の前にいるのは昨日カフェで同席したギルド職員だった。

フィリップと名乗った彼だ。


「ええ。名乗らなくて申し訳ありません」


まったく申し訳ないと思っていない笑顔で謝ってくる。

昨日の周囲の様子からもフィリップが立場を名乗らず行動することはよくあるのだろう。


「随分若いギルド長だな」


フィリップはどう見ても20代にしか見えない見た目をしている。

エルフなのかと思ったが、耳は尖っていない。


「私はハーフエルフなのですよ」


ハーフエルフは人族とエルフ族の間に生まれた子であり、人族よりも成長が遅いがエルフ程長命ではないらしい。

エルフのように尖った耳は持たず、精霊が見えるかどうかも個人によって違う。

魔力は人族よりも高いが、それも個人差があるそうだ。


「それにしても救国の英雄はさすが大人気のようですね」

「望んでいない」

SS(ダブル)ランクに試験試合とはいえ勝たれたのですから、繋がりを持とうと思う者が出てくるのは当然でしょう。貴方の場合貴族方から召喚状が届かないだけましではないですか?」


確かに上位貴族と最初に繋がりを持ったため、あまり貴族から何か言われることはない。

それは幸いだと思うが、だからといって冒険者ギルドに来ていちいち揉みくちゃにされるようでは堪らない。


「それで、俺の実践試験はどうなるんだ?」

「実力的に必要ないのはわかるけど、受けてもらいますよ。一応規則ですから」


Aランクまではギルド支部長が認めれば飛び級することが許されている。

例外処置ではあるが、きちんと前例もあるのだそうだ。


しかしSランク以上となると試験を受けることが大前提となる。

このSランク試験を合格すればその上から試験が無くなることも理由の一つ。


「貴方に課す課題はこの依頼です」


~~~~~~


至急〔特殊依頼〕王都衛兵隊での捜査協力

内容:最近頻発している娼婦連続殺人事件に関する捜査協力。

期間:未定

報酬:応相談、貢献次第

備考:捜査可能な特殊技能を持つ者求む。


~~~~~~


「……は?」


これは冒険者ギルドに出す依頼なのか?

衛兵が冒険者にヘルプ求めるのは一般的なのか?

というかこんなの冒険者の仕事じゃないだろう?


そう考えていると、フィリップが説明してくれる。


衛兵隊からこのような依頼が入ることは珍しくないらしい。

この国では、という注釈がつくが。


冒険者の中には盗賊職と呼ばれるような罠発見や気配に敏感な者など様々な特殊技能を有する者がいる。

そんな者の力を捜査に使えるのではないかということで帝国が冒険者ギルドに依頼を出したのが最初のこと。


使えるものは何でも使えという帝国の考えだそうだ。

実際、冒険者の力を借りて事件を解決することに成功した。


その事例を受け、王国もそれはいいと同じように冒険者ギルドに依頼を出すようになる。

もちろんそれは衛兵隊だけでは事件が解決できないと判断された場合の非常措置だが。


今回の場合、目撃証言もなく、証拠もない。

見回りを強化しても意味がなく、犯行が行われてしまう。


衛兵隊だけで解決できないのかと言われれば、いつかは解決できるかもしれないが、犠牲者が増えている現状、冒険者の手を借りてでも早く解決したいという意向で依頼が出されているそうだ。


王都の衛兵隊にも特殊技能持ちはいる。

彼らが手掛かりさえ掴めなかった事件の協力依頼ということで、Sランク級の依頼とされている。


つまり、俺の実践試験とすることに問題はない。

ないのだが…


「何故俺にこれを?」


見た限りSランクの依頼は他にもあった。

このような特殊技能が必要な依頼。

俺の眼のことを知っていなければわざわざ名指しする筈がない。


しかし、ギルドには守秘義務がありギルド内でも冒険者のスキルなどの情報がやり取りされることはないと聞いている。

俺の眼の情報をフィリップが知っているのはどういうことなのか。


「ギルドの支部長ともなるとギルド間だけでなく情報網を持っているものです。お気を付けください」

「…はぁ、忠言ありがたく貰っておくよ。お前に一番気を付けないといけなそうだが」

「私も情報を流布したりはしませんのでご安心を」


いい笑顔でそんなことを言われるが、どう安心しろというのか。

まぁいい。

これを達成すればSランクというのなら早く終わらせてしまおう。


眼を使うかどうかはまず事件の概要を聞いてから判断だな。

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