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とある冒険者の漫遊記  作者: 安芸紅葉
第八章 更なるステージへ「Sランク昇格試験」編
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第170ページ 舞踏会開始

「とてもよくお似合いです、シュウお、シュウ様!」

「?ああ、ありがとう」


今何か言いかけなかったか?

なんだろうか。


ダンスパーティーまではもう時間がない。

続々と出席者も到達してきている。

主催者の侯爵は自らお客の迎え入れをしているところだ。


同時に使用人たちはそれぞれ持ち場に着き、落ち着きをみせる。

警備の者も配置についたみたいだ。


警備には冒険者でなく侯爵が商会の専属護衛に雇っている人が来ている。

20人くらいだろうか。

少ない気もするが全員が冒険者ランクで考えるとC以上の実力者だ。

どうにかなるだろう。


参加者もそれぞれ護衛を連れてくるようだし、何よりも…


「本日はお招きいただきありがとうございます」

「この度はこのような小さな会にご出席頂き誠にありがとうございます、殿下!」


今まさに、侯爵家へと到着した一人の人物。

いつもの薄水色のドレスではなく、銀色にきらめくドレスに身を包んだ美しい少女。


「あら、どこの王子様かと思えば…お久しぶりですね。シュウ殿」

「ご無沙汰しております、フィオナ殿下。世辞はよしてください」


この国の第二王女にして、国有数の武芸者。

フィオナ王女殿下の登場であった。


---


「それで、シュウ殿がここにいるということはまた何かの事件ですか?」

「人をトラブルメーカーみたいに言わないでいただけませんかね?」

「これは失礼。それで今日は何を?」


フフフと笑うその感じからは全く謝られている感じはしない。

まぁいい。この人はそういう人だ。


「依頼を受けただけです。護衛依頼ですよ。この子のね」

「は、はじめまして、フィオナ殿下!ルーリ・フォン・トルミナと申します!」

「まぁ!初めまして。丁寧な挨拶ありがとうございます。ルーリ様」


俺の影に隠れるようにしていたルーリを押し出してやると、たどたどしくもしっかりとした自己紹介をする。

そこでフィオナ王女は、ようやく気付いたというリアクションを取る。

さっきルーリのことをチラっと見ていたくせに白々しい。


膝を曲げルーリに目線を合わせてから彼女の手を取り挨拶を返す。

その行動にルーリがはわわわわとなっているのが微笑ましい。


王族に手を取られるなんて想像もしていなかったからどうしていいかわからないようだ。

笑っているところを見るとわざとやっているなこの人。

どうやら予想と違わず子ども好きらしい。


そんなことをしていると、出席予定者が全員到着したようだ。

ミアに案内されダンスホールへと移動する。


「殿下は、ワールという怪盗をご存じですか?」

「ワール?ああ、ハングドマンのことですか」

「ハングドマン?」


吊り人?

どういうことだ?


「怪盗ワールはハングドマンと呼ばれています。と言っても呼んでいるのは国の上層部と騎士、兵だけですけど」

「国に関わる人物なのですか?」

「…いいえ、その正体はわかりません。ですが怪盗ワールの目撃者は口を揃えてこう言います。彼は逆さまだった、と」

「逆さま…」


よくわからないが、それがそいつの能力ということか?

しかし殿下も何かを隠しているような気配がある。

これは下手に手出ししない方がいいか?


「貴方がその話を口にするということは、護衛依頼は怪盗ワール関係ということですか?」

「それもあります」

「というと?」

「実は…」


俺は侯爵に嵌められ、ルーリに近付く悪い虫なんかからの護衛も含まれていたことを話す。


「ぷっあははははっ!」

「笑いすぎです、殿下」


お腹を抱えて笑われた。

周りの貴族が何事かとこちらを注目する。

勘弁してくれ。


「はぁはぁ…ああ、おっかしい。天下の竜殺しもまだまだ腹芸の得意な貴族には敵いませんか」

「ええ、特に貴方のお爺様とかには。今回のことは勉強になりました」


俺が目を伏せてそう言うと、また肩を揺らして笑っているのがわかる。

今回は口に手をやりどうにか我慢しようとはしているようだが。


と、俺達がホールの壁際でそんな話をしていると、トルミナ侯爵がステージへと上がる。

このダンスホールは一般的な学校の体育館のような作りをしている。

きらびやかさは全く違うが。

広さは学校の体育館よりも少し狭いくらい。

いや、テーブルやらがあるからそう見えるのかも。


前方にあるステージには楽師達が楽器を手に待機しており、その前からだいたいホールの半分までがダンス用に空けてあるスペース。

それよりも後方、入り口付近のこちら側にはいくつかのテーブルが置かれ、その上には所狭しと料理が。

こちら側では普通に立食パーティーが楽しめるといった感じだ。


「皆さん!本日は当家主催のパーティーへお越しいただき誠にありがとうございます!」


侯爵家のパーティーだけあって、参加者もなかなかのメンツだ。

公爵である宰相の姿も見えるな。

他にも会議で見た顔がいくつか。


おや?

シュレルン公爵家からは誰も来ていないのか?

いや、レーケル公爵夫人が来ているようだ。

後で挨拶しておかねば。


トルミナ侯爵の仕事柄、ここには貴族だけでなく商人なんかも呼ばれているようだ。

変わったところでは常駐の他国大使なんかもいるそうで、顔の広さが窺える。


「今宵はどうぞご存分にお楽しみください!」


侯爵の挨拶が終わり、ついにパーティーが始まる。

さて、怪盗ワールはどう動くのか。

その時俺は、どう動けばいいのか。

いつでも動けるようにはしておかないといけないな。

これからが本番でございますが、明日は200部記念SSの投稿となります。

本編続きは明後日からとなりますのでご了承ください。

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