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とある冒険者の漫遊記  作者: 安芸紅葉
第一章 初めての異世界「辺境の街」編
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裏話 暗躍する男

「あれは一体なんだ…?」


男はその光景を理解できなかった。

人族の男が単騎で地竜と渡り合う。

普通の人間なら視認も難しいほどの速さで迫る尾を避け、腕をいなす。


「あれは本当に人間なのか…?」


答えはない。

ここにいるのは男しかいないのだから当然だ。

答えを求めたわけでもないだろうが、男は声に出さなければいられなかった。


男は自分が他者とは格が違う存在であると自負している。

自分の種族の中でも圧倒的強者であることもわかっている。

今、この場で介入すればあの人族の男を殺すこともできるだろう。

しかし、恐るべきことに地竜と対等に渡り合っている今なお。

あの男は成長途中だとはっきりと思わせる。


「あれはここで殺しておかなければならない」


そう思いながらも男は動けなかった。

主からただ一つかけられた命令。

「決して見つかるな。悟られるな」


あそこには人族の中でもトップクラスの実力を持つ男がひとりいる。

ガイアの街のギルド長のことは男も知っていた。

過去にやり合ったこともある。

その時は決着が着かなかったが今なら勝てるだろう。

老いたあの男と時間の流れが違う自分。

勝つのは間違いなく自分であるが、それでも時間がかかる。

自分ひとりで奴ら全滅させることは難しい。

それがわかっているから男は少し無茶をして魔物をかき集めてきたのだ。


「無理か…」


男は呟く。

ここで殺しておかなければと本能が伝えてくる相手と主の(めい)を天秤にかけ主の命が重たかった。

ならば、いつか必ずこの手で殺す。

どんな手を使ってでも。

男は決意する。


視線の先では地竜の首が断たれ倒れ落ちるところだった。

達人級の剣技と自分でさえも操れるかわからない魔法。

それを行える魔力。

あれは異常だと感じ、このことを早く報告しなければと男は身を翻す。


「待っていろ、人族の男よ。私の計画を台無しにしてくれた礼は必ずこの手でつけてやる。全ては、魔王様の御為に」


呟いたあと、男の姿はまるで煙か何かのように掻き消えた。

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