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とある冒険者の漫遊記  作者: 安芸紅葉
第七章 秘められた真実「深淵の森再び」編
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第162ページ エピローグ

「えっと…それでこちらの方が?」

「ジャック・クラウンだよ!よろしく!」


フレンドリーに右手を差し出すジャック。

その手はもちろん白骨だ。

顔を引き攣らせながらラッセン辺境伯がその手を握る。


まぁ相手が世界中から恐れられている黒白の王で、更にはその相手が気さくに握手を求めてきたのだからそうなるのもわからなくない。

むしろ普通に握手を返せる辺境伯を褒めるべきだろう。

白骨を握るのも一般人にはかなり勇気がいるような気がする。


「…説明してくれるか、シュウ?」

「ああ、もちろん」


深淵の森から戻り、俺はそのまま辺境伯城に訪れた。

ケイトとは街の中で別れ、あとで会う約束をしている。

辺境伯城にも誘ったのだが断られてしまった。

敷居が高いのだそうだ。


俺は辺境伯で森にあったことを全て説明する。

地竜王の件は秘密にするべきなのかも、と一瞬だけ考えたが秘密にしろと言われたわけではないし、ガイアの領主ならば知っておくべきだと判断した。


案の定辺境伯は「そんなことが…」と思案している。

何代か前か知らないが、喪われてしまった話を聞けてよかったと思っているのは確かなようだ。


「この話は私だけに留めていていいとは思えん。しかし、軽々しく触れ回ってもいけない。陛下にだけ報告し、判断は任せるとしよう」


今回は大丈夫だったといって封印がこれから先も大丈夫な保証はない。

そのためにSSS(トリプル)ランクのイザベラがあそこに詰めているからといって、安心はできない。


けれど、遥か太古の昔から封印が機能しているのは事実であり、今更騒いだところで何ができるわけでもない。

余計な不安を国民に与えるべきではないというのもあるのだろう。


更に迷宮のことも報告する。

もっともこちらは踏破してしまっている。

迷宮核(ダンジョンコア)が壊された迷宮は緩やかに崩れて消えるそうだ。

次行った時、あそこにはもう何もないということだな。


だが魔神の欠片や、迷宮踏破以上にやはり黒白の王を従魔にしたという事実に驚かれた。

更に黒白の王の現実についてもだ。

前に報告書で友達になったとかって書いたと思うんだがな。


「…事情はわかった。それでこれからどうするんだ?」

「それなんですが…ジャックはこの世界をぶらりと生きたいと言っています」

「ぶらり?」

「一人で色んな人と関わる旅がしたいと」

「…それはシュウ君と一緒ではダメなのか?」


辺境伯の疑念もわかる。

ジャックを一人にして大丈夫なのか、ということだ。

俺は大丈夫だと思っているが、はいそうですか、とはいかないだろう。


「シュウと一緒の旅は楽しいだろうけど…僕は冒険者としての活動は興味ないからね」


その生き方は本来俺がしたかったものだが、魔物と人ではやはり生き方に差が出てしまうのか。

身分の保証という意味で、俺には冒険者カードが必要だった。

ジャックは関門やら国境やらは空間魔法で跳ぶから気にしないでと言っている。

フリーダム。


「心配はいりません。何かあれば私が止ます」


空間魔法は使えなくなってしまったが従魔法で繋がっている為、強制的に召喚するということが可能だ。

暴走でもしようものなら俺の目の前に呼び出して押さえつける。


「こいつが制限の無い状態で暴れればどうかはわかりませんが、今は俺の従魔ですから」

「ふふふ」


不敵に笑うジャック。

先の戦い、魔神の欠片や迷宮核(ダンジョンコア)との融合は、むしろジャックにとってはハンデ戦だったらしい。

魔神がジャックの性能を全部引き出せていればどうなっていたのかは考えたくもない。

そうなればイザベラが出てきていただろうから結局結果は変わらなかったと思うとジャックは言うが、彼女の信頼を裏切っていた可能性というのも怖い。


「わかった。この件もあまり広められないな…」


なんだか辺境伯が頭を押さえている。

うーん、ご迷惑おかけします。


「しかし、その姿は目立つだろう…?」

「そうですね…」


確かにローブを着ただけの白骨というのは目立つ。

だがその件に関しては考えがある。


俺はディメンションキーの中からある腕輪を取り出す。


「それは?」

「先日の報酬で貰ったものです。王族が街に出る時など騒ぎにならない為に姿を変えるものだそうです」


名前は「幻夢の腕輪」。

これは本人だと認識されないというもので印象を変えるものだが、白骨を誤魔化すことはできる。


「服は…」

「それなら大丈夫!」


言うが早いか、ジャックの身体を闇が包む。

突然のことで辺境伯は緊張したが、俺は何が起きるのかとしか思えない。


闇が消えた時、ジャックの姿は一変していた。

その姿は完全にスーツ姿だ。

ただし、ジャケットもシャツもパンツも靴も黒だが。


「どうだい?闇で服を作ってみたんだ」

「便利だな。だが、全身黒はやめておけ」

「そう言われても闇でしか作れないからなぁ…」

「ならシャツだけでも買いにいこう」


ネクタイは…この世界あるのだろうか?

まぁいいか。

これで服装は大丈夫だろう。


「これでどうする?」

「まぁいいだろう。報酬はどうする?うちにはもうシュウが喜びそうな魔道具(マジックアイテム)はもうないんだが…」

「現金でも構いませんよ」


あれだけお金を持っていたが、湯水の如く使っている為なくなるペースも速い。

問題はアステールの食費である。


「そうか、それはありがたい。いや、幾らが適正なのかもわからん大事件だから少し時間は貰いたいがな」

「ええ、構いません。もうしばらくはガイアにいます」


空間魔法が使えなくなった為、王都までは自力で行かねばならない。

アステールに乗ってだからそれほど時間はかからないが、余裕を持ってついておきたいからもう少しだけだな。


「わかった。ギルドに話を通しておくから後程受け取ってくれ」

「わかりました」


辺境伯に指名依頼書にサインしてもらい、これで晴れて依頼達成だ。

薄々わかってはいたが、今回も大した依頼にはならなかったな。

もう諦めるしかないというのか。

王都に行くまではゆっくりしよう。


今日はもう休むことにしよう。

正直疲れた。

俺はジャックとアステールを連れ、「雄牛の角亭」へと戻る。

その間ジャックは街並みやら人やらに興味津津だった。

七章終了です!

やっと二章でやった伏線回収できました。

少し閑話を挟んで八章は王都に舞台が移ります。

こちらもあまり長くする気はありませんが。

これからもどうぞよろしくお願いします。


ところで200部記念SSのリクエストまだまだ募集しています。

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