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とある冒険者の漫遊記  作者: 安芸紅葉
第七章 秘められた真実「深淵の森再び」編
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第158ページ 空中戦

「第二ラウンドってところかね?」


両手に大鎌を携え、隙なく構える黒白の王。

上空に展開される魔法陣は様々であり、それぞれが凶悪な意味を持っている。

同じように、あとは発射を待つだけの魔法郡も相当な威力だ。


「…これはヤバイかもな?」


考えてみると、いや考えるまでもなく黒白の王と呼ばれ、世界中から畏怖されている相手に俺とケイトだけで挑むというのはかなり無謀な話だ。

せめてイザベラがいてくれたらと思うが、彼女には行けない理由があったのだから仕方ない。


「あーケイト?作戦会議といこうか?」

「そんな暇ないみたいですよー」


ケイトのどこか間の抜けた声と共に、幾本もの闇色の槍が降り注ぐ。

一本一本の威力はそれほどでもないが何より数が多い。

更には威力がそれほどでもないとはいえ、投げ槍程度の威力はあるのだ。

直撃して竜鱗が貫けるのかは疑問であるが、楽観視できるものではない。


「くっ」


翼を羽ばたかせ全力で飛ぶ。

迫りくる闇色の槍を、腕で払い、翼で打ち、尾で軌道を変える。

完全に人の戦いではないな。


今更ながら人間離れしている自分を隅で認識しつつ、とにかく今は本能に従い身体を動かす。

一瞬だけ翼を折りたたみ、回転しながら槍と槍の隙間を通る。

俺が通る隙間だけを残し、身体の周りを槍が通過する。


すぐに翼を広げ一気に上空へと飛び上がる。

普通であるならば重力で内臓が潰れるような動きをしているが、<竜の化身(ドラゴンフォース)>状態では内臓までも強化されている。


高高度まで浮かび上がるが、休むことはできないようだった。

雲を突き抜け槍が飛んでくる。

更には


「お前飛ぶのか!?」


白い雲の一点から突き抜けるように飛び出してきた黒い影。

大鎌が鈍く輝く。


おそらくは魔法によって飛翔しているのだろうが、その速度は今の俺と変わりない。

この状態だと音速は超えるスピードが出ていると思うのだがあの骨何故平気なんだ。

一体どれほどの魔法を同時発動すればあんなことができるというのか。


右手から振るわれる大鎌。

咄嗟に斬鬼を召喚し、大鎌の刃を受け止めるが、大鎌という武器の特性上受け止めるという行為ですら危険極まりない。


安堵する暇もなく、逆側からも大鎌が迫りくる。

だが、右手の大鎌にも力が加わっており、ここで斬鬼を離せば一瞬にして俺の首は狩り取られるだろう。


「チッ!」


俺は空中維持を放棄し、下へと逃げる。

空中にいたからこそできる芸当だ。


だが、黒白の王はそれも予想していたかのように振るわれていた左手の鎌の軌道が変更され俺へと迫る。


「ぬあっ!」


どうにか刃の側面を蹴りあげることで更に軌道を変えるが、足から伝わって来た威力はとても骨しかない腕で振るわれたものとは思えないほどだった。

自身に無属性魔法「身体能力強化」、大鎌に風属性魔法「加速」がかけられているからこそだ。


「なっ!?」


攻撃を凌いだのも束の間。

いつの間にか大鎌を手放しこちらに向いていた左手に闇が凝縮されていく。

野球ボールほどの大きさになった瞬間。

圧縮された闇のエネルギーが俺に向かって放たれた。


「がっ…ぁ…!」


咄嗟に腕を交差させ防ぐが、竜鱗が砕け後ろに吹き飛ばされる。

幸い腕自体の損傷はひどくなかったが、感覚がほとんどなくなっている。

吹き飛ばされながら腕に治癒魔法をかけ、翼を広げる。


「シュウさん!」

「来るな!」


下からこっちへ向かってきているケイトに声をかける。

この高高度での戦いにケイトがついていけるとは思えない。

彼自身の戦闘力はそれほど高くないのだ。


「グルゥ!」

「ギャウ!」


アステールとクロが俺を通りぬけて進んでいく。

彼らなら滅多な事にはならないとは思うが、危険であることに変わりは無い。

どうにか翼を用い勢いを殺して、俺も急いで取って返す。



「クルゥ!?」

「ギャッアゥ!」


アステールが大鎌の柄部分で殴りつけられ、クロが闇魔法を喰らっているのが見えた。

どちらも致命傷にはならないだろうが、この一瞬でAランクのアステールとS以上であろうクロが一蹴された現実に戦慄する。


「アステール!」

「クロ!」


アステールはおそらく骨が折れていながらも気丈に飛び続けている。

クロも戦意を失っていない。


「<召喚(サモン)>!エリュトロス!」


叫ぶと同時に俺の前方に魔法陣が出現。

赤い鱗の竜が姿を現した。


『黒竜だと!?それにあの黒衣の者っ!!どういう状況だ!?』

「説明は後だ!黒い奴に向かってブレスぶっ放せ!」

『黒い者が多すぎるぞっ!?』

「黒と白の奴だ!!」


俺が返すと間髪入れずエリュトロスは炎のブレスを放つ。

火炎が一直線に黒白の王へと飛ぶ。

だが、やはりそれも手を払うだけで防がれる。


『なんという…』

「魔神と呼ばれる程の存在だ。これくらいはやるだろうよ」


これどうすれば勝てるんだ?

無理ゲーではないか?

魔力が尽きることがなくなったとはいえあちらも似たような条件であるらしいし。


俺とアステール、エリュトロスとクロで黒白の王を包囲しているような形になる。

実際には包囲できていないにも程がある笊さだが、空気を読んでくれたのか黒白の王は動かない。

膠着状態だ。


『わずらわしい子蠅共め』


訂正。

空気を読んでいたわけではないようだ。

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