第157ページ 地上戦
ゆっくりと白い手が掲げられる。
少し遅れて、黒白の王の背後から闇が生じた。
闇は辺りを包みこみ、一瞬にして夜が生みだされる。
「…やるしかないか」
俺は<全知眼>を発動。
以前は視えなかった黒白の王の詳細を視る。
―・―・―・―・―・―
[混沌より這い出しウィルオウィスプ・突然変異種]ランクX
名「 ・黒白の王」
人々の負の想いと彷徨う魂が具現化し生じた妖精の一種。
しかしながら、通常よりも遥かに強力な負の念から生まれたことにより、ウィルオウィスプとしてありえないほどの力を持ち、その生体も既に変化している。
更には魔神の欠片を取り込んだ迷宮核に支配されている。
―・―・―・―・―・―
「はっ、お前妖精だったのか!」
「えっ!?そうなんですか!?」
「みたいだぞ」
俺の上げた声に、ケイトが驚く。
まぁ確かにあの異形が妖精だと言われれば驚くだろう。
今まで俺が視た妖精は全員美しい姿をしていたしな。
黒白の王は、俺の軽口に答える気はないようで頭上にいくつもの魔法陣を展開した。
すぐに<全知眼>で詳細を知ろうとしたが、驚くことに<全知眼>を発動するまでもなくあの魔法陣の意味が理解できる。
これも<魔法>の効果なのか。
「気をつけろ、ケイト!あの魔法陣は威力増強の魔法陣だ!あれを通した魔法を喰らうと多分死ぬぞ!」
「了解!」
俺の言葉が終わるか終わらないかのうちに、黒白の王が魔法を発動する。
火と闇の複合属性<獄炎魔法>が放たれ、黒い炎が魔法陣を通りぬけ更に膨れ上がる。
「スー!」
「クゥァー!!」
スーから放たれた冷気が一瞬だけ、獄炎を押しとどめるが、相殺することはできずに白い蒸気の中を変わらぬ速度でこちらに向かってくる。
しかし、一瞬だけでも止めれれば、俺達には回避できる速度であった。
「もう!そろそろ起きてよ、エクス!」
「キュ?」
…そういえば召喚されてから姿を見ていなかったが、寝ていたのかあのハリネズミ。
もぞもぞとケイトのローブから出てきて肩に乗る。
「キュ!?」
状況がわかったのか驚きの声を上げ、同時に幾条もの雷撃が黒白の王に向かって放たれた。
だが当然といってもいいのか、そのような直線的な攻撃が効く相手でもなく。
白骨の腕を一振りするだけで雷撃が逸らされる。
「キュウッ…」
「エクスは防御をお願い!スーは回避を!<召喚>!」
ケイトの隣りに新たな魔法陣が生まれる。
出てきたのはエリュトロスより少し小さいくらいの竜。
黒い鱗と二本の角。
凶悪そうな牙と爪を持つ西洋竜だ。
「クロ!お願い!」
「キュルルゥ!」
呼び出されると同時に自分の役割を理解した黒竜は、ケイトの声に応えるように一瞬だけ口を閉じ、「ガァッ!」と強烈なブレス攻撃を放つ。
黒い色の閃光は、黒白の王に向かって進み、あいつが展開した障壁を貫き轟音を出しながら一撃を与えた。
「すげぇな…」
「クロは僕の友達で一番の攻撃力を持っていますから」
しかし名前クロっていうのか…
俺が黒白の王につけた名前と被っている。
安直だったのかな…
…あいつの名前変えるか。
「でも…」
「ああ」
ブレスによって生じていた煙が晴れた時、そこには堪えた様子のない黒白の王の姿が。
ギリギリで防いだのか、一瞬で治癒魔法を施したのか。
「効果ないみたいですね」
「そうだな」
やはりあの迷宮核との融合を解除し、黒白の王の意思を取り戻させるしかない。
だが視た限り、あれを取り出すにしろ黒白の王の動きが止まっていなければ難しいかもしれない。
ジレンマだな。
「彼の魔力が尽きる可能性は?」
「なさそうだ」
黒白の王が元来持つ魔力も相当な量であったが、それに加え迷宮核から魔力を供給されているようだ。
その迷宮核にしても周囲から魔力を取り込んでいる。
考えていると、闇色の槍が何本も飛んでくる。
アステールに回避を任せ、俺は更に考える。
応戦はクロがしてくれている。
ブレス攻撃と、その身体を生かした攻撃だ。
だが、どんどん対策をなされているようで攻撃する度に反撃を食らいやすくなっている。
「クロ!」
ケイトがクロを呼び寄せ、手を当てる。
その手が発光したかと思うとクロの怪我が薄くなっていった。
《スキル「従魔法」を習得しました》
《スキル「従魔法」がオリジンスキル「魔法」に統合されます》
なるほど、あれは従魔法の一種なのか。
しかしこれで俺も従魔法が使えるようになったということだな。
となると…
「ケイト、あいつとの契約は俺がやる」
「え?え、ええ。わかりました」
「クロにはブレスを撃ち続けさせてくれ。それからエクスにも雷撃で攻撃を頼む」
「ど、どうするつもりですか?」
「つっこむ!」
答えると同時に<竜の化身>を発動。
竜鱗で身体を覆い、防御力を高める。
同時に先程黒白の王が使った威力増強の魔法陣を展開する。
黒白の王と相性が良さそうな光魔法を発動し、俺も撃ち込む。
「えっと…もしかして…」
「力押しだ!」
弾幕攻撃で隙を作りその一瞬で俺が迷宮核との融合を解除する。
少々強引にはなるが、力ずくでやらせてもらおう。
まぁあいつなら大丈夫だろう。
「行くぞっ!」
アステールから飛び降り、自らの翼で飛行する。
黒白の王に向かって一直線に突き進みながら、同時に光魔法を幾つも展開し撃ちこんでいく。
後ろから黒色の閃光と、雷撃が俺を飛び抜け黒白の王へ。
ぶつかり、白煙が昇った瞬間に俺は方向を変え、黒白の王の背後へと回る。
「貰った!」
黒白の王の胸部を貫くように腕を突き出す。
俺へ対応する暇は無かったはず。
が
「何っ!?」
ガキンッと音を立て、黒白の王の手に握られた大鎌が、俺の竜腕を防いでいた。
突然のことに今度は俺に隙が生まれ、もう一方の手に握られていた大鎌への反応が遅れ、横薙ぎに払われる。
「ぐっ?!」
重い一撃が身体を揺らし、強制的に黒白の王から離された。
「…おいおい、お前接近戦もいけるのかよ」
両手に持つ大鎌を構えながら、空中に魔法を展開する黒白の王の姿がそこにあった。
黒葉周 17歳 男
種族:???
冒険者ランク:A
HP:11200
MP:∞
魔法属性:全
<スキル>
格闘術、剣術、槍術、棒術、弓術、刀術、棍術
身体強化、完全回復
馬術、水中行動、天足、解体、覇気、看破、隠形、危機察知、魅了、罠解除、指揮、並列思考
耐魅了、耐誘惑、耐幻惑、恒温体
礼儀作法、料理、舞踊
<ユニークスキル>
天衣模倣、完全なる完結、全知眼、識図展開、天の声、竜の化身、万有力引
<オリジンスキル>
魔法(+従魔法)
<称号>
「知を盗む者」、「異世界からの来訪者」、「武を極めし者」、「すべてを視る者」、「竜殺し」、「下克上」、「解体人」、「誘惑を乗り越えし者」、「美学に殉ず者」、「魔の源を納めし者」、「全能へと至る者」、「人馬一体」、「無比なる測量士」、「翼無き飛行者」、「竜の友」、「破壊神の敵」、「半竜」、「湯治場の守護者」、「妖精の友」、「底なしの動力源」、「戦闘狂」、「深淵へ至りし者」、「逸脱者」、「神…????」、「人を辞めし者」
<加護>
「??神の加護」、「創造神の加護」、「戦と武を司る神の加護」、「知と魔を司る神の加護」、「生と娯楽を司る神の加護」、「死と眠りを司る神の加護」、「大海と天候の神の加護」、「鍛冶と酒の神の加護」、「炎竜王の加護」、「妖精女王の加護」




