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とある冒険者の漫遊記  作者: 安芸紅葉
第七章 秘められた真実「深淵の森再び」編
179/358

第153ページ 魔法

「説明してくれるんだろうな?」

「ええ。何を聞きたいの?」

「まず第一に、SSS(トリプル)ランク冒険者がここで何をしているのか、ということだ」


確かにSSS(トリプル)ランクであるならば深淵の森に居を構えていても問題はないのかもしれない。

しかしだからといって、わざわざこんな場所に家を建てる気がわからなかった。

何かここでなければならない理由があるとしか思えない。


「見張っているのよ」

「見張り?」

「そう」


それ以上は語るつもりがないのか、俺の詳しくという視線をがん無視してカップを傾けている。

カップの中に入っているのは紅茶だ。

俺たちが家の中に入ると、どこからともなくカップとティーポットがふよふよと飛んできて、勝手にセッティングがされた。


家は空間拡張の魔法がかかっているようで、外から見たよりも遥かに広く、アステールまで中に入れた。

その割に物は少なく、テーブルとベッド、棚が二つあるだけだ。

棚には少量の本と、よくわからない植物、薬草だと思われる植物が置かれている。


魔女の家にあるような大きな鍋でもあるのかと思ったが、あったのは一般的な鍋だけだ。

その他にもいくつかの調理器具が竈近くに置かれている。


「それで他に何か?」

「あ、ああ…オリジンスキルとはなんだ?」


隣で聞いていたケイトが首を傾げる。

ケイトはオリジンスキルという存在そのものを知らないようだ。

王都やガイアの図書館でスキルについて調べたが、俺も知らなかったから一般的ではないと思う。


しかし、彼女が浮かび上がるところを見てオリジンスキル<魔法>を習得したのだ。

彼女が<魔法>を使ったというのは明らかである。


「…オリジンスキルは全ての元になったスキルよ。発現するにはある一定以上の極めて難しい条件が必要なのだけど、あなたのユニークスキルは反則ね」

「俺のスキルを知っているのか?」

「私のステータスを視て(・・)みるといいわ」


俺は言われた通りイザベラに全知眼を行使する。


―・―・―・―・―・―


イザベラ・フェンガリ 628歳 女

種族:人族

HP:12666

MP:∞

魔法属性:全

<スキル>

杖術、家事、薬術、錬金術、医術、並列思考、高速演算

<ユニークスキル>

全知不知(ハイドアンドシーク)

<オリジンスキル>

魔法

<称号>

「深淵へと至りし者」、「真理を知る者」、「中心到達者」、「知らざるを知る」、「魔女」、「魔法使い」、「魔の頂」、「君臨者」、「絶対者」、「最果ての守り人」、「精霊の友」、「妖精の友」、「エルフの友」、「竜の友」、「知と魔を司る神の僕」、「契約せし者」

<加護>

「創造神の加護」、「生と娯楽を司る神の加護」、「死と眠りを司る神の加護」、「大地と豊穣を司る神の加護」、「愛と美を司る神の加護」、「精霊王の加護」、「先代妖精女王の加護」、「古神龍の加護」、「地竜王の加護」


―・―・―・―・―・―


「ろっぴゃ!?」

「そこはいいのよ!」


思わず年齢を叫びそうになった俺に、どこからともなく現れたハリセンがぶつかる。

この世界にもあるのか、ハリセン。

かなりの威力だったぞ。


「なるほど。このユニークスキルで俺を視たのか」

「ええ。あなたの持つ<全知眼(オールアイ)>と、隠蔽・隠密系統合スキル<不知体(アンノウン)>が合わさったスキルよ」


何それ欲しい。

そのスキルによって俺の地図にも映らなかったというわけか。


「あんたのユニークスキルも大概だな」

「今私が発動すればすぐに習得できるくせに何を言っているの」


俺の天衣模倣(マスターコピー)は、発動の瞬間を視ることでスキルを習得できる。

既に発動していたりすると、視ても習得できないのだ。


「それも善し悪しみたいだけれど」

「どういう意味だ?」

「<魔法>の習得に絶対必要な条件があるわ。真理を知ることよ」

「真理?」


そんなものどうやって知れと?

いや、イザベラの称号に「真理を知る者」というのがあった。

つまりイザベラは知っているということか。


「その方法は教えられないわ。あなたならいずれ辿り着くでしょう」


それならまぁいいか。

いずれがいつになるかはわからないが心に留めておくべきだろう。


「けれど、真理を知らなかったことで矛盾が生じた。今、<魔法>の全てを使うことはできないと思うわよ?」

「…何?」

「今まで通りに魔法は使えないってことよ」


俺は驚き、その場で魔法を発動する。

と言っても、影響がないように風を少し操る程度のものだ。

魔法は問題なく発動。

それどころか、前よりも発動が楽にスムーズになった気がする。


「発動できるぞ?」

「基本属性はそうでしょうね。それから発展属性も大丈夫でしょう」

「発展属性?」

「氷、雷、木なんかの属性のことよ」

希少属性(レアマジック)のことですか?」

「いいえ。希少属性(レアマジック)というのはただ人が呼んでいるだけだもの」

「俺は元々雷や木なんて魔法は使えなかったぞ?」

「今は使えるはずよ」


言われたように俺は電気をイメージし、指を広げてみる。

と、指の間をバチバチと電気が奔るのが見えた。


「けれど、次元や(ことわり)に属する魔法は使えない筈よ。例えば空間魔法とかね」

「何っ!?」


俺は即座に<物的引寄(アポート)>を発動する。

任意の物を手元に引き寄せることができる魔法で、重宝していたのだが発動しなかった。


これはまずい。

空間魔法を使うつもりはあまりないとはいえ、何かあった時に使えるのと使えないのでは大違いだ。


「俺のユニークスキルはスキルを十全に使うことができるはずだが?」

「君、無意識の内にそのスキルをセーブしているんじゃない?」


自分ではわからない。

だが、言われてみれば思い当たることはいくつかあった。


「それにそもそもおかしいのよ。魔法が何故発動できるか知っている?」

「いや…」

「魔法を発動するには理解が必要なのよ。その魔法への理解がね」


理解?

今までそんなこと考えたこともなかった。

それに読んだ本にもそんなことは全く書いていなかったぞ?


「普通は知らないでしょうね。私も真理を知るまでは確信があったわけではなかったもの。貴方は異世界人だから、こちらの世界の人よりも多く知識を持つ。その分適正も多いのね」

「…あのぉ僕適正がないんですけど…」

「…ごめんなさい」


ガクリと肩を落とすケイト。

そうか、ケイトは適正がなかったのか。

そういえばベンも空間魔法の適正しかなかったような…

それはそれですごいということになるのか?


「話を戻すけれど、あなたのスキルはその理解なくして発動させることができた。けど、オリジンスキルの<魔法>は今までのように結果だけを出すことができず条件が必要であった。それ故に、あなたが理解している魔法については発動可能となり、それ以外はできなくなったのでしょうね」

「なるほど…」


納得はできる話だが、困る話だ。

<魔法>を覚えるよりも空間魔法を使えたままでいたかった。


「けれど<魔法>によって使える魔法は今までよりも使い易くなっているはずよ」


確かに。

無詠唱は当然として強固にイメージを固めなくても発動ができるようになっている。

俺のイメージが世界に伝わりやすくなったとでもいうのか。


そう思っていると、ゴゴゴォォォォと一際大きな地震が起こった。


深淵の森に来てからも地震は起こっていたのだが、今までよりも格段に大きい地震な気がする。

いや違う。これは…


「震源が近いのか…?」

「そうよ」


イザベラが椅子から立ち上がり、外へと出る。


「ついておいで。さっきは詳しく説明しなかった最初の質問に答えるわ」


イザベラはそう言うと、家から出てきた俺達に今まで見たことのない真剣な表情を見せた。

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