第149ページ 従魔師の少年
「ありゃ?サンダース新しい友達?人と仲良くしてくれてるんだ!」
『違う。ただの客だ』
「友達とは違うかもな」
照れ隠しのようにブスッと答えるサンダースに、思わず笑ってしまう。
そんな俺をギロリと睨むサンダース。
おお、怖い怖い。
「初めまして、ケイト・トゥーリです」
トゥーリということはこの世界の奴かな?
黒髪はたまたまか。
この世界にも黒髪がいないということはない。
珍しいが王城にも何人かいる。
「シュウ・クロバだ。よろしく」
「クロバ?…あの、もしかしてですけど異世界の方ですか?」
「ああ、そうだ」
おや?この反応はやはり彼もなんだろうか?
「君もか?」
「はい!この世界に来たのは、4年前ですかね」
「なら先輩だな。俺がこっちに来たのは半年前だから」
「そうなんですね!それにしては馴染んでいるようですけど…」
ケイト少年は俺を下から上に見て、来ている革鎧や腰に差している刀、身につけている魔道具等を確認する。
確かにこっちに来て半年の割に装備が整っているな。
「いい縁があってな」
「はぁ…?」
どこか納得いかないように首をひねっている。
そんなケイトは軽装だ。
弓と矢筒だけ背負って鎧なんかは身に着けていない。
着ているローブが特別製なのかもと思ったが、どうやらそんなこともないようだ。
『ケイトは何をしに来たのだ?』
「ん?こっちに来る予定があったからサンダースの顔を見にだよ」
『そうか』
嬉しそうである。
この熊もこんな風に笑うことがあるんだな。
「そうだ!これお土産!」
そう言ってケイトが取りだしたのは蜂蜜。
見覚えのある瓶に入っている。
『おお!ギガントビーの蜂蜜か!ありがたい!』
…蜂蜜好きの熊?
俺の頭に黄色い熊が浮かび、目の前の巨躯と比べこみ上げる笑いをこらえるのが大変だった。
「女王がくれたんだ!僕のことまだ覚えてくれていたみたいで」
嬉しそうに言うケイト。
「女王ってサルベニーの?」
「あ、知ってますか!?そうですそうです!いい人ですよねー」
…人ではないとツッコむべきだろうか?
いや、やめておこう。
「ところでそっちの子はシュウさんの従魔ですか?」
「ん?ああ、アステールだ」
「よろしくね」
「クル」
ケイトが近づくとアステールが撫でろと頭を差し出す。
優しく笑ってケイトが撫でると、嬉しそうに喉を鳴らしている。
アステールは基本人嫌いというわけではないし、褒められると喜んだりもするが、これほど懐き易い訳ではない。
これはケイトの能力なんだろうか?
―・―・―・―・―・―
ケイト・トゥーリ 16歳 男
種族:人間
HP:5015
MP:150005
魔法属性:―
<スキル>
弓術、短剣術
従魔法、召喚術
MP回復速度上昇
<ユニークスキル>
親愛なる友人たち
<称号>
「冥王の寵児」、「友愛の使徒」、「異世界からの来訪者」、「翼敵の弟子」、「竜の友」、「竜人の友」、「神々の寵児」、「群れを率いる者」、「ドワーフの友」、「精霊の友」、「妖精の友」、「人狼の友」、「蜘蛛女の友」、「吸血鬼の友」、「蛇女の友」、「獣達の止まり木」、「エルフの友」、「世界一の従魔師」
<加護>
「冥王の加護」、「創造神の加護」、「生と娯楽を司る神の加護」、「死と眠りを司る神の加護」、「大地と豊穣を司る神の加護」、「大海と営みを司る神の加護」、「愛と美を司る神の加護」、「精霊王の加護」、「妖精女王の加護」、「獣神の加護」、「女王蜘蛛の加護」、「蛇女王の加護」、「黒竜の加護」
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おおう…すごいな。
特にMPと称号・加護。
スキルはそれほどでもないのに立派なチートだ。
おそらくはこのユニークスキルが一番の能力だろう。
誰とでも友達になることのできる能力か。
いや待てよ?
それを今発動しているなら、俺も使えるようになっている筈だ。
つまり今は発動していないのか?
ケイトが元々有している親しみやすさということなのか。
「従魔契約を結んでいるわけではないのですね。しかし、確かな絆で結ばれている。いい関係ですね」
ケイトがこちらを振り向いて笑顔で言う。
従魔師からしたらそうなんだろうな。
「世界一の従魔師から言われると嬉しいな」
俺がそう言うと、一転して困ったような顔になった。
「そんな大した者ではないんです。いつの間にか称号が増えてただけで何をやったわけでもないですし…」
「謙遜だな。何もやっていないのにそんな称号が出るものか。そうか、お前がベンの言っていた従魔師か」
「あ、ベンさんのことも知ってるんですね?だったら多分そうだと思います。こっちにはベンさんの依頼で来たような感じもあるんですよねー。頼んできたのは別の人でしたけど」
ベンの依頼?
なんだろうか?
あいつは俺がこっちに帰ることを知っていたのに何も言わなかったぞ?
「依頼って?」
「直接依頼されたわけではないんですが、深淵の森に行かないといけないんです」
「ほう?」
これはまた…面白くなりそうだ。




