第16ページ エピローグ
今回で第一章は一応の区切りとなります。
次回からは短めの閑話が3つほど入り、二章となります。
拙い文ですが読んでくださる皆様に感謝を。
これからもどうぞよろしくお願いします。
「ん…ここは?」
目が覚めるとそこは見覚えのない天井だった。
覚えているのは地竜を倒したところまでだ。
それからの記憶がない。
見回してみると窓から見えるのはガイアの街だとわかる。
建物の位置からだいたいの場所もわかったのでここは
「辺境伯城か…」
居場所がわかった所でどうしようかと考えていると廊下からこちらに近づいてくる足音がする。
複数の足音は迷いなくこちらに向かってきているようなので事情はその人たちに聞けばいいだろう。
ノックがされドアが開く。
「シュウ様!お気づきになられたのですね!」
顔を輝かせて近づいてきたのはララシーヌだった。
その後ろには辺境伯とエルーシャもいる。
二人もホッと表情をなでおろしている。
「すまない。心配をかけたようだな」
「いや、大丈夫だ。お前がぶっ倒れてからまだ一日と経ってねぇよ」
「いえ!私は心配しましたっ!もうこんな無茶はしないでくださいっ」
「聞いたぞ。地竜と一対一で戦ったそうだな。まったく、呆れてものも言えん。それで勝ってしまうなど冗談にしか聞こえんよ」
辺境伯は笑って、ララは泣きそうな顔で、エルーシャはほんとに呆れ顔だ。
俺はベットに手をつきこちらに身を乗り出しているララの頭をポンポンと叩きもう一度「悪かった」と声をかけた。
気のせいか頬が赤くなっている気がする。
それにしても一日経ってないのか。
意外だな。てっきりもう少し経っているのかと思った。
窓から見える街には既に人が活発的に活動しているのが見えたからだ。
「さて、お前が倒れてからのことを話そうか」
俺が倒れた後、戦況は一気に傾いたそうだ。
地竜が倒れ、オーガとトロールもクレインとドーンの手により倒されていた。
ゴブリンキングは俺と地竜との戦いに巻き込まれて死んでいたらしい。気づかなかった。
統率するもの、格上のものがいなくなったゴブリンたちは逃げの一手だった。
そこに復活したグラハムがもう一発でかいのをぶち込み第一騎士隊隊長ギルバートが得意の火属性広域殲滅魔法を放った。
それでほとんどのゴブリンは死亡、焼失。
残党もすぐに狩りつくされたそうだ。
俺はどうやら魔力欠乏により意識を失ったそうで、命に関わる状態でもあったようだ。
テメロア副ギルド長が魔力を分けてくれ一命を取り留めた後、ラッセン辺境伯の馬車で急ぎガイアへと戻り街一番の薬師を呼びつけ、更にララの治癒魔法をも使って怪我を癒したそうだ。
革鎧を着ていたとはいえ地竜の一撃や、ブレスの余波により身体は限界だったようで、骨や内臓に損傷が見られていたそうだ。
こんな状態で戦っていたとは信じられないとの言葉をもらった。
その間にラッセン辺境伯はことの顛末を報告。
冒険者と騎士団が魔物の素材剥ぎやら後始末を終わらせて帰還したのが今日の朝だった。
今はだいたい15時だそうだ。
死者は3名。あの規模の戦争といってもいい状況では格段に少ないらしい。
それでも、3人死んだ。戦いだから仕方ない。とはいえ、一緒に戦った名も知らぬ戦士に冥福を祈る。
「それでは、竜殺しの英雄くん?」
「…なんだそれは」
「お前の異名というか渾名だな。街では有名人だぞ?」
困った。自由に生きたい俺としてはあまり目立ちたくはないんだが。
「仕方ないだろう。単騎で地竜を倒すGランク冒険者なんて話題になるに決まっている」
ほとほと呆れたという顔でこちらを見てくるエルーシャに何も言い返せなかったので肩をすくめてやると、やれやれという顔で首を振っている。
「それよりお父様!そろそろ準備があるのではありませんの?」
「おお、そうだった。シュウ、今日は宴会だからな。楽しみにしてろよ」
「まったく。一日くらい休ませてやれよ」
「こういうのは早くやったほうがいいんだよ」
辺境伯は笑いながら部屋を出て行った。
ララとエルーシャは残っている。
「シュウ様、身体の具合はいかかですか?」
「ああ、もう大丈夫だ。治療してくれてありがとうな」
「い、いえ!これくらいは!前に助けていただいたこともありますし!」
「そんなこともあったな」
俺がここに来てからまだ一週間も経っていないのにもう懐かしく思う。
ここ数日は色んなことがありすぎたな。
「それではシュウ様、また夜に」
「無理はするなよ」
色々と他愛ない話をしてからララとエルーシャが一言かけて出て行く。
エルーシャも一応心配してくれてたようだ。
ツンデレってやつかな?
陽が沈んできている。
ラッセン辺境伯城は街の最東端にあるため夕日がよく見える。
最西端にある教会に陽が差込み影となっているのもまた美しく思える光景だ。
「ほんとに、この世界は…退屈しなさそうだ」
俺はカメラが手元にないことを残念に思いながら、目を閉じてもう一度横になった。
「この世界なら、俺はやっていけそうだよ」
誰もいない部屋でもうどこにもいない俺の家族に向け呟く。
窓から入る夕日が俺の身体を優しく照らしてくれていた。
黒葉周 17歳 男
冒険者ランク:G
HP:10200↑
MP:6000↑
魔法属性:全
<スキル>
格闘術、剣術、槍術、棒術、弓術、刀術
火属性魔法、水属性魔法、風属性魔法、土属性魔法、氷属性魔法、光属性魔法、無属性魔法
馬術、身体強化、魔力制御、MP回復速度上昇
<ユニークスキル>
天衣模倣、完全なる完結、全知眼
<称号>
「知を盗む者」、「異世界からの来訪者」、「極致に至る者」、「武を極めし者」、「すべてを視る者」、「竜殺し」(new)、「下克上」(new)
<加護>