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とある冒険者の漫遊記  作者: 安芸紅葉
第六章 迫り来る脅威「王都星天会議」編
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裏話 月の下で

昨日は投稿しませんで申し訳ありません。

本当はフィオナの閑話を入れていたのですが、どうにも納得できず消去しました。

次の出番の後でまた改めて書きます。

「王都での騒動はとりあえず解決したようですよ」

「解決ね…東の辺境が壊滅したようだけど?」

「そんなことは知ったことではありませんね。私には関係ありません」

「確かにそうなんだけど…ぶれないね、君も」

「恐れ入ります」


月が輝く空の下。

ある森の中で二人の男の話声だけが響く。


虫や動物も息をひそめ、まるで森自体が眠ってしまっていかの状況。

それは(ひとえ)にこの二人が持つ力を感じてのことだ。


「貴方こそ、手助けはしなくてもよかったのですか?」

「…老人の出る幕ではないさ。今の世代に任せるよ」


話しかけられた男。

エルフ特有の長い耳、白金色の髪を肩で切りそろえ、その頭には樹で編まれたような円環。

手には木製の長杖を持ち、どういう原理か空中に浮いている。


「ところで、君は一体誰の味方なのかな?ニコラス君」

「私は誰の味方でもありません。私の興味があることを追求するだけです」


もう一人の男。

白衣を纏った黒髪の青年。

ニコラス・フラメルは、無表情にそう答える。


「うーん…君みたいなのが一番扱いづらいよね」

「恐縮です」

「褒めてないよ?」


呆れたように返すエルフに対し、ニコラスは少しだけ笑う。

そして、唐突に空を見上げた。


「どうやら勇者が本格的に活動を始めたようですね」

「ここから神聖教国の動きまで把握しているのかい?恐れ入るね」

「使い魔を派遣しているだけです。貴方も似たようなことをしているではありませんか」


それにエルフは答えず、ただ面白そうにニコラスを見やる。

だが、その顔にはどこか危険を孕み、この男をどうしようかと考えているのがうかがえる。

隠す気もないのだろう。


「どうにも、君にはここでいなくなってもらった方がいい気がするねぇ?」

「いやはや、どうすればそんな考えになるのか。ご老人の考えはわかりかねます」

「失礼だなぁ。君もあまり変わらないと思うけど?」

「いえいえ。私などまだ300年しか生きておりませんので。700以上は離れていると思いますが?」


普通の人が聞いたなら正気を疑うやり取りである。

それでもこの二人にとっては世間話程度の意味しか持ち合わせない。


「自分の歳なんて忘れちゃったよ」

「そうですか」


あっさりと返されるがニコラスは特に何も思わない。

年の功というやつだ。


「ところでそろそろ開かれる頃ではないのですか?魔導の集いが」

「どうだろうね?みんな忙しそうにしているからなぁ」


そう言ってエルフは楽しそうに笑う。

「みんな」の今を考えてのことなのだろう。

ニコラスも「みんな」の現状の立場を知ってはいるが、その中で会ったことがある者は今目の前にいる相手だけだ。


「それより…気付いているとは思うけど西でおかしな動きがあるよ。というかこれは…」

「また面白いことになっていますよ。あの冒険者もよくよくこういった騒ぎに巻き込まれるようだ」

「冒険者?」

「ええ。半年程前にこの世界に来た子ですよ」

「ふーん」


これから起こることを知っているかのように話すニコラス。

別に未来が視えるわけではない。


今ある情報を組み合わせた結果、容易に想像がつくだけだ。


「魔女は動くかな?」

「さすがに自分の住処で大騒ぎが起これば無視はできないでしょうが…」

「表舞台に出てはこないか…」


初めて二人の意見があったようで、同時に暗いため息を吐く。

二人の脳裏には魔女と呼ばれる一人の女の姿が浮かんでいた。


「それでも、彼がなんとか引っ張り出してくれるといいんですがね」

「君も人のこと言えないよね。いつまで裏で動くつもり?」

「それは貴方もですよね?」

「「…」」


二人は無言でお互いを見やる。

数分の沈黙の後、無言のまま二人は踵を返した。

それぞれ反対の方向へと向かう。


二人の姿が完全に見えなくなっても、森は静かなままであった。

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