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とある冒険者の漫遊記  作者: 安芸紅葉
第六章 迫り来る脅威「王都星天会議」編
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第143ページ 後処理

特級氷属性魔法〈サウザンドアイシクル〉。

その氷は、千年溶けることない干渉不可の牢獄となり敵の全てを完封する。


特級魔法は放つのに精密な魔力操作と多大な魔力を必要とする。

が、その分威力は上級以下の魔法とは一線を画す。

魔導師長が咄嗟に放ったのはそんな魔法であり、魔導師長の魔力を大半消費して発動されたそれはメーアの捨て身の魔法ごと見事に封じてみせた。


しかしながら本来ならあのように操られた直後、疲弊した状態で使っていいようなものではなく、代償として魔力枯渇によって死んでもおかしくない状況であった。

それを回避できたのは、魔力波調の近いエルーシャがおり、魔法研究所で魔力の受け渡しという研究をしていたからだった。


寸でのところでエルーシャからの魔力供給が間に合い、二人は今王城のベッドで仲良く眠っている。

エルーシャの総魔力量に対し、ポラリスの魔力量は圧倒的に多く、姉に魔力を渡した結果ダウンしてしまったのだ。

もっとも、魔力さえ回復すれば元気に戻るということなので心配はいらない。


「問題はこいつらをどうするか、か」


氷柱に封じ込められたままのメーアと、空間魔法により隔離しているシェンツィアートだ。


「違うよシュウ。問題は師匠が敵側にいることだ」

「どういうことだ?」


ベンの説明では、師匠であるエイブラハムの魔法〈魔洞門(ゲート)〉には空間魔法阻害の結界が効果を為さない。

魔洞門(ゲート)〉は点の魔法であり、結界内部に直接門を開ける。

ベンはいくらやっても習得できなかったそうだ。


「師匠がいる限り、拘束なんて意味ない。四六時中はりついていたとしても、師匠がその気になれば奪還されるよ」

「厄介すぎないか?お前の師匠」

「敵に回るとこうも厄介だとはね…」


疲れたようにベンが言う。

結局シェンツィアートには魔法使用を禁じる魔道具(マジックアイテム)で拘束し、城へ幽閉。

地下監房ではなく、兵の詰め所に設置された簡易牢だ。

常時誰かがいる状態なので何かあればすぐ知らせることができる。

エイブラハムに対し、対抗策はそれくらいしかないようだ。


もう一人、メーアだがこちらは氷を解除できるのがポラリスだけだ。

力技を用いれば別だが、それをした場合中のメーアを傷つける可能性がある。

コールドスリープ状態であり生命維持には問題がないということなので、とりあえず放置。

城の地下へと安置する。


これで一応は一段落といったところか。

エイブラハムがもう一度取り返しにくるかもしれないが、現状できることは全てしている。

これからのベンの主な仕事は王都における空間魔法の揺らぎを探ること。

いち早く空間魔法が使われたことを察知することになるそうだ。


だがそれでもエイブラハムの魔法を防ぐことにはならない。

故に、アレックスも何かあればすぐに動けるように城に詰める。

完全に後手ではあるのだが、アレックスとベンが駆け付けるまでの時間は一般兵でも稼ぐことができる、かもしれないということだ。


---


「シュウ殿、貴殿には大変世話になった。借りは増えていくばかりであるな」

「報酬はいただきますので貸し借りなど思わないでください」


俺の言葉に、王と宰相は苦笑する。

フィオナ王女は、面白そうに笑っている。


騒動が終わり翌日。

俺は王城にある謁見の間ではなく王の執務室に呼ばれていた。

いるのは国王、宰相、そしてフィオナ王女だけだ。


第一王妃と第一王子は、昨日の事件の後始末に追われているらしい。

王と宰相もこれが終わり次第仕事に戻るそうだ。


そんな忙しい中わざわざ時間を割いてもらう必要もなかったのだが、いつまでも王都にいるわけにもいかないだろうとして配慮してくれたらしい。

転移でいつでも来れるから大丈夫なんだがな。


「報酬か…既に一冒険者に渡すような報酬では済まないような気がするのだがな」

「そうですね。弊爵し貴族領でも与えませんといけないかと」

「いえ、そういうのいいので。金銭か魔道具(マジックアイテム)でお願いします」


貴族にでもなったら自由にこの世界を楽しめないではないか。

それどころか貴族同士の政争にでも巻き込まれたらめんどくさいことこの上ないぞ。


「言うと思っていました…」

「ふっ。よかろう、王城の魔道具保管庫を開かせよう。好きな物を持っていくがよい」


二人ともガッカリしているようだが、どこか予想通りといった感じ。

あまり話したことは無いが、既に俺の性格は知れ渡っているようだ。


「フィオナ、案内してあげなさい」

「はい、陛下」


国王に一礼し、俺とフィオナ王女は部屋を出る。

そのまま魔道具の保管庫とやらに行くそうだ。


そこには、迷宮から発見された物や、遺跡から発見された物。

献上された物や譲渡された物など様々な物が置かれているが、性能は保障されている。

中には使い途がわからないものもあるようだが。


「改めてお礼申し上げます、シュウ殿」

「礼はいらないと言っただろう?それに今回、俺はほとんど何もしていない」

「いいえ、死者たちを送ってくれただけでも」


少し哀しそうに微笑むフィオナ。

まったく敵わないな。


「こちらが保管庫です。中にある物の説明は管理人のテルーマーにお聞きください」

「保管庫の管理を任されております、テルーマーと申します。本日はこの中よりどれでも好きな物お二つをお選び頂くということで聞いております」

「二つ?」

「ええ、前回の王城襲撃事件と今回の事件の報酬ということです」

「太っ腹だな」


俺達は中に入る。

フィオナ王女も入る機会はあまりないそうで、珍しそうに見て回っている。


さて、どんな物があるのかね?

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