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とある冒険者の漫遊記  作者: 安芸紅葉
第一章 初めての異世界「辺境の街」編
15/358

第14ページ 三者三様の力

残酷な描写があります。苦手な方はバックしてください。

「聞け!皆の者!」


後方から男の声がする。

それは知っている声だった。

それと同時にここで聞くはずのない声だった。

俺だけでなく全員が驚き、勢いよく振り向く。


「汝らは生まれも育ちも違うかもしれん!だが今この時!私の、いや!私たちの街を守ろうと集まってくれた!感謝する!そして誇る!これだけの数の戦士が集結し、あの程度の魔物どもを蹂躙できぬはずがない!諸君らは強力無比な騎士であり冒険者だ!その腕に覚えのある強者たちだ!!諸君らの勝利は疑うことのできぬものだ!故に!私は(つわもの)たちにただこう言うのみである!!」


辺りには先ほどとは違う沈黙。

誰もが思っている。

この男の言葉は最後まで一字一句逃さず聞かねばならないと。

そうさせるだけの力が男の言葉にはあった。


「宴の準備をして待つ!国の金で酒を飲むぞ!余興はさっさと終わらせろ!行け、兵たちよ!諸君らの力をあのバカどもに見せつけろ!!」

「「「「「ウォォォォォォォォォォォオ!!!!!」」」」」」


男の、アイゼン・フォン・ラッセン辺境伯の言葉が終わると同時に歓声が沸き立つ。

ラッセン辺境伯は満足気に一つ頷くと一度だけこちらを見て悪戯っ子のように笑った。

おそらく土魔法で造ったのであろう台座から降りていく。


総勢で200名にも満たぬ軍。

個々の力はこちらの方が上であろうが数では圧倒的に負ける。

勝てなくはないが相応の犠牲がでることは必至。

それ故に先ほどまでは暗い雰囲気が渦巻いていてそれは仕方なかった。


しかしラッセン辺境伯はその雰囲気を言葉だけで払拭させた。

これがラッセン辺境伯。これこそがアイゼン・フォン・ラッセンという男の力。


「久しぶりに見たが…衰えんな、金獅子の覇気は」

「金獅子?」

「ラッセン辺境伯の冒険者時代の異名だ。いや、今もなおその名は轟いているがな。誰よりも前に立ち、その背に、言葉に、あらゆる人物が震えた。愛する者を失った者に前を向かせ、友を失った者を立ち上がらせた。立ちふさがるものでさえその覇気に畏怖し頭を垂れた。今回は急であったために無理だったが、辺境伯が声をかければ自らの命を投げ打ってでも駆けつけるというものはこの国に大勢いる。その万民に慕われる人格。味方はおろか敵さえも跪かせるほどの覇気。王と呼ばれるに相応しい資質と能力。荒くれ者ばかりのまるで猛獣のような冒険者を従えるその姿から百獣の王になぞらえ、あいつの力強く輝く金色の瞳から、金獅子と呼んだのさ」


金獅子か。あの人にピッタリの異名だと思う。

自由を求める俺でさえもあの人の為に力を振るうなら…悪くないと思わせているのだから。

しかしあの人辺境伯城に引っ込んでおくよう部下からキツく言われてたはずなんだが…

あ、ギルバートは苦笑気味だ。なるほど勝手に出てきたのか。


既に魔物たちの容貌ははっきり見えるほどの距離となっていた。

およそ1kmといったところか。


「さて、酒が待っているそうだし、さくっと終わらせるかぁ!」


グラハムの身体から溢れる魔力。

馬から降り、数歩前に出る。


「俺が破軍と呼ばれる理由を教えてやるよ。クソ魔物どもが。俺のダチの街に手出そうとしてんじゃねぇよ!!」


腰を落とし、右手を振りかぶる

前方に向かっての正拳突き。

やったことはただそれだけ。

それなのに。


ドゴォォォン!!


大気が震えた。地面が揺れた。空間が爆ぜた。

空恐ろしくなるような爆音が響き、グラハム前と言える範囲のほとんどがふきとんだ。

俺はグラハムを視る。発動するのは審知眼。


―・―・―・―・―・―


グラハム 37歳 男

種族:人族

HP:7500

MP:1000

魔法属性:無

<スキル>

格闘術、無属性魔法、身体強化、魔力制御、気功、HP回復速度上昇、MP回復速度上昇、金剛体

<称号>

「徒手空拳」、「不屈の闘者」、「下克上」、「鋼の闘士」、「武を極めし者」、「破軍」


―・―・―・―・―・―


色々とツッコミたいところはあるのだが、一番は、あんたまだ37歳だったのか…

いやいや違うな。何この人化物クラスじゃね?

俺には及ばないステータスだがスキルやら称号がすごいのだが。


「は…はっ…はっ…」

「ギルド長!無茶しすぎですよ!」

「はっこれくらいどうってことねぇよ。シュウの代わりを引き受けたのは自分だ」


そう。俺の役目は魔法の効果範囲に敵軍が入った瞬間に広域殲滅魔法を放ち相手に大損害を出すことだった。

何故か辺境伯やギルド長といったトップのメンツは俺のことを信頼してくれているようでやると言ったら「面白い、やれ」と二つ返事で了承してくれた。

その役目をグラハムが代わってくれたわけだが俺がやるよりも多い被害を出しているのではないだろうか?


「回復したら俺もすぐ出る。それまで頼んだぞ」


グラハムが額に汗をかきながらも笑って言ってくる。

俺はそれに呆れながらも笑ってやる。


「それまで残っていたらな」


黒刀・斬鬼を抜き放つ。

漆黒の刃が陽の光を受け輝き、その美しい刀を見た後ろの何人かが吐息を漏らす。

グラハムもそれを見てにやりと笑い、馬に乗りなおすと少し後退した。


クレインに視線を向ける。

今まで浮かべていたどこか余裕を感じる表情は息を潜め、引き締まっている。

頷く。


ドーンに視線を向ける。

こちらは対照的に獰猛な笑みを見せている。

頷くと、わかっているというように手を振ってくる。


「行くぞ」


俺は一気に駆け出した。


「皆の者!遅れるな!行くぞっ!進めーーーー!!!」

「おらぁ野郎ども!ギルド長が開戦の合図をしてくれたぞ!その犠牲を無駄にするなよぉ!!」

「いや、別に俺死んでねぇけど…」


俺のあとをクレインとドーンが付いてくる気配がする。

その後ろでは騎士が、冒険者が、敵軍に向け走っているはずだ。


俺は意識を集中させる。

魔物たちの最奥に位置するゴブリンキング。

その横にいる地竜。

どうやら地竜は鎖を着けられているようだ。

ゴブリンキング程度が地竜を従えていることに違和感はあったんだがそういうことか。

だが地竜には知能と呼ばれるほどのものはないそうだ。

鎖を放たれた瞬間、敵味方関係なく暴れるだろう。

今でもかなり気がたっているのが見て取れる。

あれが俺の相手。

それ以外の雑兵になど興味はない。


グラハムのおかげで開いていた道が再び閉じ始める。

魔物の数は200は減っているだろうか。

それでもまだ800はいるのだ。すぐに埋まる。


だが…俺の邪魔をするなら斬るだけだ。

魔力は温存する。

ただの雑魚には必要ない。


馬術により俺と馬は正に人馬一体。

新しく得たスキル刀術により刀の扱いは達人となっている。


魔物の群れに単身飛び込む。

目の前のゴブリンをウォーホースが撥ねる。

俺が斬る。

撥ねる。斬る。撥ねる。斬る。


敵陣の真ん中くらいまで進んだとき、さすがのウォーホースも限界であったようだ。

速度が落ち、ついにはゴブリンナイトの剣をその身に受けてしまった。

俺は馬から飛び降りる。


まだ会ってから一日も経っていないというのに己の身を酷使してくれた相棒に視線を向ける。

相棒はブルルルと、まるで構わず行けと言っているかのように啼いたかと思うと、その屈強な蹄を使いゴブリンの頭を砕いていった。

だが、ウォーホースといえど馬一体で駆逐されるほど魔物というのは甘くなく、すぐに姿が見えなくなってしまった。

俺は心の中で相棒に感謝と敬意を送り、群がる敵を切り払う。


「どけ」


刀を持ち、一閃。

それだけで周りにいたゴブリンたちの首が飛ぶ。

ナイトだろうがお構いなしだ。

そもそもゴブリンナイトが着けているような鎧では斬鬼を防ぐことなどできない。

しかも俺の刀術により鎧の隙間、関節部分を寸分の狂いなく斬り飛ばせるのだ。


首が飛ぶ。鮮血が舞う。黒の刃が無慈悲に、確実に、その猛威を振るう。

大量の返り血を浴びながらなお前進する速度が緩まない。

化物というにふさわしいその姿は、後方の者たちに恐怖をもたらした。

知能を持たぬゴブリンでさえも近寄らなくなってくる。


俺は歩いて進む。悠々と。

そしてたどり着く。


そこらのゴブリンよりも一回り以上大きく3mはないにしても2mは超えているのではないだろうか。

わずかに知性を感じらさせる立ち振る舞い。

ゴブリンナイトやゴブリンジェネラルとも格の違いを見せるその姿。


―・―・―・―・―・―


[ゴブリンキング]ランクB

ゴブリンたちの王。

知性を身に付け、個体によっては言葉を話すこともある。

剣術や棍術などスキルを有している。

性格は個体によるがゴブリンであるために性欲、食欲が強く、所詮はゴブリンである。


―・―・―・―・―・―


「ガ、ニンゲン、オマエ、コロス。オマエ、ツヨイ」


ゴブリンキングは口を開き言葉を話す。

だが、そんなことにも興味はない。


俺は足に力を込め踏み込み、一瞬にして距離を詰める。

確認したわけではないが、おそらく今の俺にはスキル「身体強化」も加わっているはずなのだ。

異世界補正と合わせてその筋力は果たしてどれほどになっているのだろうか。

10mは離れていた距離を縮めるのにかかった歩数は一歩だけだった。


ゴブリンキングは反応すらできていない。

懐に入り斬鬼をで一息に斬り上げる。


「ガッ!?」


一太刀で絶命しなかったところはさすがというところだろう。

だが


「前座は終わりだ」


俺は上段に振り上げた刀を振り下ろそうとして


「GuRuuuuuuuuAaaaaaaaaaa!!!!」


竜が吼えた。

いつの間にか解き放たれていた地竜は、既に俺をターゲットに定めたようで俺に向かって突撃してくる。

それを見て俺は


「いいぜ?じゃあ、始めるかトカゲ野郎!」


ただ哂った。


黒葉周 17歳 男

冒険者ランク:G

HP:10000

MP:5500(up)

魔法属性:全

<スキル>

格闘術(shift)、剣術、槍術、棒術、弓術、刀術(new)

火属性魔法、水属性魔法、風属性魔法、土属性魔法、氷属性魔法、光属性魔法、無属性魔法(new)

馬術、身体強化(new)、魔力制御(new)、MP回復速度上昇(new)

<ユニークスキル>

天衣模倣マスターコピー完全なる完結ジ・エンド・オブ・パーフェクト全知眼オールアイ

<称号>

「知を盗む者」、「異世界からの来訪者」、「極致に至る者」、「武を極めし者」、「すべてを視る者」

<加護>


・―・―・―・―・―


一般人の平均ステータス

HP:250

MP:50


騎士の平均ステータス

HP:650

MP:100


魔法師の平均ステータス

HP:300

MP:500


となっています。

主人公のステータスはまぁチートですがグラハムも大概です。

グラハムはSSランクに上がることもできたのですが職員となることを選びました。その辺はSSとしてお届けできたらいいなと思います。

なお、グラハムの異名にして称号「破軍」は単身で軍を打ち破ることからつけられています。

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