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とある冒険者の漫遊記  作者: 安芸紅葉
第六章 迫り来る脅威「王都星天会議」編
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第128ページ 魔法研究所

「エイブがいる以上、ここも完全に安全だとは言えない。あいつは人の魔力を指標として跳べるからな。ジェームズがいるとはいえ、あいつ相手だと不安がある。故に私は、エドガーから離れることはできない。ポラリスもいるんだ、お前達が行くだけで十分だろう」


というわけで魔法研究所に行くのは俺とベン、そしてフィオナ王女殿下ということになった。

アレックスの言うようにこの三人と、グラス魔導師長がいて対処できないような事態はまずないだろう。


ベンの空間魔法で跳ぶ。

魔法研究所は、驚くことに鉄筋コンクリート造りであるようだ。

この世界では初めて見たな。


「気持ちはわかるけど、今は早く中に入ろう」


ベンに促され、俺達は中へと走る。

不思議なことに、倒れている者などはおらず破壊されたような跡もない。


「おかしいですね」

「そうですね。襲撃があったようには見えません」

「それもそうなのですが…音が聞こえません」

「音?」

「魔法研究所は常時なんらかの魔道具が発動していることが普通です。研究員たちも大勢いるはずですのに、誰も見かけません」


それは確かにおかしいかもしれない。

研究員たちがいないのは、どこかの部屋に閉じ込められているや、避難しているなど考えられはするが、魔道具が止まっているというのはおかしい。

襲撃犯がわざわざ止めるだろうか?


「とにかくポラリスさんを探しましょう」

「シュウ、わかる?」

「ああ。一番奥の部屋にいるようだな」


識図展開(オートマッピング)を使用して、目的の人物を見つける。

この時気付いたのだが、地図にも赤点は表示されていない。

いったいどういうことなのか。


「その部屋に他の研究員たちもいるようだ」

「それは好都合ですね。すぐに参りましょう」


この距離ならば魔法を発動するよりも、走った方が速い。

俺を先頭にして全速で走る。


確かヒールであったはずなのに俺達の全力疾走に普通に付いて走れるフィオナ王女殿下にビックリする。

この人はどれだけ強いのであろうか。


「そこだ!」


すぐに目的の部屋は見え、扉を蹴破るように中へと入る。


中の様子は、一言で言い表すならば白かった。


雪が舞い、室温は氷点下となっているのではないのか。

部屋を半分に両断するように氷の壁が立ちはだかり、奥にグラス魔導師長が、手前側には20人程度の研究員たちが立っていた。


部屋へと入った瞬間、研究員たちが一斉にこちらをぐるっと振り返った。

その目に生気はなく、ステータスを見るまでもなく操られているのだということがわかる。


「ああ、来てくれましたか。ですが、気をつけてください。彼ら正気ではありませんので」


どこか平穏としたグラス魔導師長の声が響いたと同時に、研究員たちが俺達に向かって跳びかかって来た。

だが、そこで発動準備していたベンの魔法が発動する。

俺達三人は空間魔法によってグラス魔導師長の隣りへ。


「便利ですよね、空間魔法」

「それは置いておいて、どういう状況なんです!?」

「詳しくは私にもわかりません。気付けばこのような状況でした。ただ、私がここに引っ込んだあと、魔族の女が一人来ました」

「その女は今!?」

「わかりません。私にいくつか質問したあとどこかへ。研究員を盾されていたので、何もできませんでした。申し訳ありません」


どんな時でも冷静な表情を崩さなかった魔導師長の顔に悔恨が浮かぶ。

何もできなかったというのがかなり悔しいようだ。


「民の命を守って頂いたこと、礼を言います」

「殿下…」

「貴方が研究員たちの命よりも、魔族捕獲を優先していたら簡単だったのでしょう。ですが、貴方はそれをしなかった。貴方が取った行動は最善でなかったのかもしれない。けれど、私は誇りに思います。職務よりも民の命を優先してくれてありがとうございます」

「…大切な部下たちですので」

「はい」


照れたように言うグラス魔導師長に、わかってるというように微笑むフィオナ王女殿下。

美しいシーンだ。

だが、それ故に雑音が邪魔だな。


「グラス魔導師長、合図したら氷壁を解除して貰えますか?」

「わかりました。状態異常回復の魔法も使えるのですね」

「ええ、先程視たので」


いつでも使えるように魔法を準備し、グラス魔導師長に頷く。

頷き返し、手を振ると氷壁が上から溶けていくかのように掻き消えていく。


「〈アブヒレール〉!」


氷壁が解除されていき、魔法が届くようになった瞬間に状態異常を回復する光魔法を放つ。

本来〈アブヒレール〉は、単体に向けた魔法であるのだが、少し改良して範囲魔法にさせて貰った。

魔導師長が目を輝かせているが後にして頂こう。


魅力が解かれた研究員たちが正気に戻っていく。

魔導師長が大丈夫か、と問うているが問題はないようだ。


その中で二人の研究員が魔族の女と男を目撃したと話す。

男というのは、ダルバインでもエイブラハムでもない人物のようだ。

一言で表すならば丸という体型をしており、白金色の髪を逆立て白衣を着た研究者風の男だったそうだ。


魔族たちは、魔人巨兵の研究をしていた区画で何やらしていたようだ。

それが何かはわからんが、とにかく行ってみるしかあるまい。

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