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とある冒険者の漫遊記  作者: 安芸紅葉
第六章 迫り来る脅威「王都星天会議」編
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第124ページ 目的

「どうしたんだ、アレックス?ベンジャミンに、シュウ君もか」


アレックスがこちらに目を向けてくる。

俺はホッと息をつきながら首を横に振る。


この部屋にいる三人は魅了されていなかった。

アレックスとベンも一息ついて、状況を三人に説明する。

徐々に三人の顔が険しくなっていく。


しかし、こうなってくと敵の狙いが本当にわからないな。

王を洗脳して操ることでないとなると、何が狙いなんだ?


「むぅ、事情はわかった。よくやってくれたシュウ君」

「いえ」

「それで、私達はどうすればいいと思う?」

「シュレルン公爵家に避難していただきたく思います。フィオナ王女殿下もそこにいますので」

「相手が武力を用いているのならば、避難など御免ですが、魅了となると私には抗う術がありません。仕方ありませんね」


一番難色を示しそうだった第一王妃がすんなりと了承してくれたことで、三人はあっさりと公爵家への避難に同意してくれた。


「しかし、フィリップたちを置いていくわけにはいかんぞ?」

「それについてはほぼ解決したも同然かと。ベンがいますから」


王城内でも空間魔法が使えるベンがいれば回収即離脱ができる。

空間魔法万歳だ。


「わかった。それなら俺とシュウで跳んで回るってことでいいのかな?」

「私にも許可証をいただけるならば楽なのですが…?」

「そうしたいのは山々なのだが、あれは特別に作らせる必要があってな。予備などないのだよ」


仕方ないな。

この許可証は識別により、本人以外は使えないようになっているらしいし。


「じゃが、王族が狙いならば、第一にここに来るはずじゃ。それがないということは狙いは別ということじゃろう?」


そうだ。

結局敵の狙いがわからなければどう動くかもわからない。

王族だけは無事でした、ということになったら目も当てられないぞ。


「だが、フィリップたちの安全を確保することも必要だ。適任はベンジャミンとクロバしかない」

「悩んでいても仕方ありません。すぐに連れてきますので」


ベンと頷き合う。

残る王族は、第一王子、第二王妃、第三王妃、そして第二王子か。

いる場所はわかっている。


俺はベンに場所を教え、空間魔法で跳んだ。


---


「わっ!?ベン?いきなりどうしたんだ?城内で空間魔法を使うと、またマリユスに怒られるぞ?」

「緊急事態ですので。どう、シュウ?」

「問題ない。跳ぼう」

「え?え!?」


事情も説明せず、跳ぶ。

次は第二王妃のところだ。


---


「母上?!」

「何事ですか、フィリップ?」

「私にも何が何やら…」


事情説明を求められていることは重々わかっている。

が、時間もないし、まとめて説明させてもらいたい。


第二王妃も問題なし。

次だ。


---


「オギャーオギャー!!」

「な、何の騒ぎですか?エミエンヌ様…フィリップ様も…」

「さて?説明する時間も惜しんでいるということしかわかりませんわ」


聡明だな第二王妃。

第三王妃は、赤ん坊をあやすように揺らしている。

おそらくはあれが第二王子。


ここにも問題はないな。

こうなってくると本当に王族が狙いではないということになる。

目的はなんだ?


---


「そんなことになっていたのですか…」

「それで説明する暇もなかったのですね…」


理解はしたが、納得はしていないようで、第二王妃は説明もせず空間魔法で連れまわされたことを根に持っているようだ。

こちらをジロッと見てくる。


「では、敵の狙いは不明のままだと?」

「何かわかるか、エミエンヌ?」

「情報が少なすぎますわね」


それは確かに。

敵の正体すら不明のままだ。

だが、考えてみる必要がる。


魅了を受けていたのは、階段の見張りについていた騎士たち。

王都民。

そして巡回していた何人かの騎士。


室内で作業していた文官にはほとんどおらず、王族にも魅了はされていなかった。

王族が狙いでもなく、王都の機能を麻痺させることも目的とは違うようだ。


俺達を狙った王都民がただの足止めであったとして、俺が空間魔法を使えることは知らなかったようだな。


これだけの規模で魅了を使える時点で、魔力量はかなり多いと思われる。

おそらくは魔族。


そういえばベンたちは地下から上がって異変に気付いたと言っていた。


一階に洗脳を受けた人がたくさんいたのは、一階から洗脳が広がったからだと思っていた。

だが、この敵は、無駄に魅了を拡大したりしていないようだ。


となるならば、一階に被害者が多いことにも理由があるということだ。


…魔族。

魔族か…

そういえばあの男は…


「ベン」

「ん?何?」

「地下にいたと言ったな」

「そうだけど?」

「地下には…何がある?そこで何をしていたんだ?」

「え…地下には牢が…」


その場にいた全員がハッとして顔を上げる。


みんな俺の考えに思い至ったのだろう。

そう、魔族が仲間を助けに来たのではないか、という考えに。


ドォン!!!!


その結論がでた瞬間に、下から爆音が轟いた。



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