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とある冒険者の漫遊記  作者: 安芸紅葉
第一章 初めての異世界「辺境の街」編
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第13ページ 開戦に向けて

少し短めかもしれないです。

その翌日。

一日をかけてガイアの街の民を避難させた。

ラッセン辺境伯城は危機に際し街民を保護する役目もあるらしく十分なスペースとは言わないが全員を避難させることができた。

食事などの問題もあるかと思われたが備蓄があるそうだ。

もしもの備えまでをきちんと管理していたラッセン辺境伯は優秀だということだろう。

交易に来ていた商人や街の外に伝手がありそちらに行きたいという者は遠慮なく街から退避してもらっている。


騎士団と警備隊、ギルドの連携も見事だった。

もっとも警備隊は騎士団の下位組織であり警備主任は第二騎士隊長。

つまり警備隊=第二騎士隊だったらしいが。


流通も一時的にだがストップさせる。

仕事を放棄したがらない職人たちもいたらしいがなんとか説得したそうだ。

ちらっと見たその職人は知ったドワーフ顔だった。


関係各所への報告も済ませたそうだ。

近くの街や村には馬を走らせ、王都や大きな街には領主だけが使える通信用のマジックアイテムがあるらしい。

欲しいとは思うがアーティファクトと言われる古代の遺物だそうで複製はできていないと言われた(・・・・)


そして副ギルド長テメロアも帰還した。

ギルド御用達の馬屋からバトルホースという軍馬にも使われる力自慢の馬を借り並の馬を優に上回る速さで休みなしの強行軍だったそうで、普通の馬なら往復で2日はかかる距離を1日で走破しなさったそう。

それで疲れを見せず報告していたのだからもはや尊敬する。

付き合わされた冒険者は一応高ランクであるはずなのに疲労困憊だった。


これで俺の話の裏も取れた。

それに何故かはわからないが軍隊のように一定のペースで歩いて行軍しているようでガイアまでつくにはもう1日ほどかかるだろうということ。

本来魔物はそんな統率が取れた動きをするものではないらしいので率いている何者かの存在が怪しまれたが、情報がないため断定はできない。

ただいると過程して行動をすると決まった。


決戦はネレル森林を過ぎて徒歩半日ほどの場所に決まった。

ネレル森林を過ぎてから魔の森まで徒歩7日はかかる距離だそうでカルム大平原と呼ばれる平原が広がっている。

そこが決戦の舞台となる。


こちらの戦力は第一・二騎士隊。

冒険者がAランクパーティーが1、Bランクパーティーが4、Cランクパーティー5とソロの高ランク冒険者志願兵54名。

総勢で200にも満たない。


第三騎士隊は万が一の為に街および辺境伯城の警備に当たらねばならず、冒険者たちも高ランクパーティーはガイアの街には今これだけしかいないらしい。


これら混成部隊の総指揮官はラッセン辺境伯配下である武官長兼第一騎士隊隊長ギルバート。

その補佐に就くのがテメロア副ギルド長。


最前線に立ち、戦闘指揮を執るのは


「ワハハハハ!やっと暴れられる!」

「はぁ…この人の補佐なんて僕には無理ですよ、武官長」


冒険者ギルドガイア支部長グラハムとその補佐に第二騎士隊隊長クレイン。

これは戦力バランスを考えた結果ではあるのだが、グラハムがゴリ押しした感もある。

そこでまたテメロアとどちらが行くかで揉めたがこの間は我慢したからという子どもみたいな理由でグラハムが出ることになった。

驚いたのはラッセン辺境伯まで前線に立つとか言い始めたことだ。

あの人も昔冒険者をしていたらしくその時のランクがA。だがそのまま続けていればランクSにも上がれた可能性があるらしい。

なぜこの街の権力者たちはみんな強者なのか。

辺境だからこういう事態にも備えてということらしいが正にといったところだろう。

まぁそれはいいとして


「なんで俺が最前線なんだ?俺はまだGランクなんだが?」

「ふん!お前の実力はGに収まるわけねぇだろう。今のままでもおそらくB、もしくはそれ以上だ。遊ばせとくには惜しい人材だ」


ということで、俺は最前線で戦闘指揮を執る二人のすぐそばに配置されていたりする。

まったく型破りな。周りからのあいつは誰だという視線がすごい。


「よぉお前強いんだってな?」

「誰だ?」


後ろから声がかかり振りむく。

そこには2mはありそうな身長のがっしりとした中年の男。

背に身の丈ほどもありそうなメイスを担いでいる。


「俺はドーン。ランクAパーティー『巨人の槌』のリーダーをしている」

「ああ、お前が。シュウだ。強いかどうかはあとのお楽しみってとこだな」


巨人の槌。今回参加している唯一のAランクパーティー。

そのリーダーで自身もAランクであるドーンの評判は他の奴らから聞いていた。

とにかく力押しでありながらその実力は確かでありAランクの中でも上位の実力者だそうだ。Sランクにランクアップするという噂もあると聞いた。


「そうだな。今はこっちが優先か」


ドーンは未だ何も見えないが着々とこちらに向かってきているであろう方向を見る。

聞いていた通りその性格も問題なくみんなにも慕われているそうである。


俺は千里眼を発動。

このスキルによる情報収集も俺の役目である。


「大多数はゴブリンだな。ゴブリンの上位種であるゴブリンメイジ、ゴブリンナイト、ゴブリンアーチャー、ゴブリンジェネラルも見えるな。それに…トロールとオーガもか」

「ゴブリンどもはまだしもトロールにオーガ…下手するとBランクにも届くやつらがいるのか」

「最後尾にはもっと手ごわそうなのがいるがな」

「何?」

「これは…ゴブリンキングか。あとは…っ!?」

「何だ?」

「・・・アースドラゴンがいる」

「なんだとっ!?」


地竜と呼ばれる魔物。下位ではあるが竜種に分類される飛べない竜。

しかしながらその鱗は竜の何ふさわしいほどの強度を誇る。

個体によりランクは違うが、今見ている大きさにしてランクA相当であろう。


「予定を変更するか…地竜がいるなら俺か巨人の槌が出ねばならんだろう」

「そうですね。他の人では束になってもまず勝てないでしょう」

「だがそうなると他はどうするんですかい?オーガやトロールも十分にやっかいな魔物ですぜ?」

「…」


前線に落ちる沈黙。

だがただ一人。俺だけが笑う。


「俺がやる。あの竜は俺がやる」

「…できるのか?」

「ああ。この刀の斬れ味を確かめたかったところだ」


武器は得た。この刀であれば地竜の鱗をも斬り裂くだろう。

魔法は覚えた。昨日一日遊んでいたわけではない。

俺は城の訓練場を借り、魔法の練習に励んでいた。そのおかげか魔力も少しあがっている。俺の魔力を用いれば竜種のブレスにも対抗できるだろう。

さすがに上位の竜種は無理だろうが、今の俺ならアレはもう十分に戦える相手だ。

ならば、こんな面白そうなことを逃してたまるものか。


そんな感情を乗せ、俺はただ不敵に笑う。


「そういうことならお前のやる予定だった役は俺がやろう」

「いいのか?」

「問題ない!俺もそういう役は好きだ」


グラハムが笑う。その笑みは悪人顔ではあったが人を惹きつける魅力があった。

それに返すように俺も笑う。

そんな俺たちを見て周囲は少し呆れた様子だった。


視界には既に千を超えるであろう蠢く影と砂煙が入っている。

開戦は近い。

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