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とある冒険者の漫遊記  作者: 安芸紅葉
第六章 迫り来る脅威「王都星天会議」編
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第115ページ 医務室にて

目を開けると、見知らぬ天井であった。


「また、このパターンか」


だが、身体はあの時よりも酷い状態のようだ。

動こうとするが力が入らず、無理にでも動かそうとすれば激痛が奔る。


竜の化身(ドラゴンフォース)」を使ったことによる後遺症と、無理して力を使い過ぎたことによる倦怠感。

更に、無理な動きをしたことによる筋肉断裂といったところか。


どちらにしろ当分は動けそうにない。


「目がお覚めになりましたか?」


人の気配はしなかったのに、横合いから声が聞こえてきた。


身体が動かせないので、首だけをそちらに向ける。


そこには、金の長髪に翠の瞳をし、どこか儚げな印象を抱かせる女性がいた。

だが、その女性は一箇所だけ人と異なり、耳が長く尖っていた。


「エルフ?」

「はい。オフィーリア・チファラ・アマルディーと申します」

『アクィラです』


オフィーリアの後ろから、こちらも儚げな透き通る女性が姿を現わす。

青色の薄い衣を纏ったアクィラは、オフィーリアが契約している精霊だとわかる。

サラとは違う属性。おそらくは水の精霊。


「ここは王城の医務室です。あなたが眠っていたのは一日。本当に人なのか、呆れるほどの回復力でした」


……今サラッと毒を吐かれたか?

サラッとしすぎていて、一瞬吐かれたことにも気づかなかった。


「ベン君を呼んできますね。詳しいことはあの子から聞いてください」


とりあえず俺の聞きたいことだけを聞く前に教えてくれて、止める間もなく部屋を出て行くオフィーリアさん。

呆気に取られて何も言えなかった。


しばらく待つと、バタバタと走ってくる音が微かに聞こえる。

訓練されている足音が3人分。

ベンと誰だろうか?


「シュウ!」

「シュウ様!」


行動も口調も静かであり、すーっと去っていったオフィーリアさんと違い、バンッと大きな音を立て部屋へ入ってきたのは、ベンとフィオナ王女、そしてトマスであった。


「これはフィオナ王女、このような格好で失礼します」

「そんなことは構いません!お身体は大丈夫なのですか!?」

「え?ええ、動くことはできませんがそれだけです」

「いや、動くことできないって重体だから」


ベンが呆れつつも、ホッと息を吐いている。どこか顔に疲れが見えるな。

トマスも部屋に入ってきた時の緊張した顔よりは力が抜けており、安堵していることがわかる。

フィオナ王女も、疲れたような顔をして肩の力を抜いた。


「あまり心配をかけないでください」

「申し訳ありません」


笑って言ってやると、今度はフィオナ王女も呆れたように苦笑した。


「礼を言います。父を、王国を救ってくれたこと。真にありがとうございました」

「礼は確かに受け取りました」


一変して真剣な顔になった王女に、俺も真剣に返す。

ここの王家が威厳などよりも礼を重んじることはわかっている。

こう言っておかないとこの王女も引けない所のはずだ。


俺の想像通り、明らかに王女は安心したようで、柔らかい表情で微笑んだ。


「シュウ、俺からも礼を言うよ。でも、戦いはあれで終わりじゃなかったんだ」

「何?」


ベンはそれから、この一日で起こったことを話し始める。

それは、とても一日であったとは思えない内容で、ベンが疲れているのも納得できた。


まず俺が王城へ向かってからの話。

ベンは、空間魔法と精霊剣を使い、魔人巨兵を屠って回る。

予定であった。


しかし、最初に助けに入ったビクターには、楽しみを奪うなと言われ、次に向かったギルバートのところは、温度が上がりすぎており危ないから下がっていろと言われ、その次のオーバンには助太刀無用と言われる。


その間に三位以上の三人は、魔人巨兵が回復不可能な程に破壊しており、結局ベンがしたことは後片付けだけであった。


尚、魔導師長のところには元々向かわなかったそうだ。

あの人はどうせ、破壊せずに自分の力だけで捕獲しているだろうからということであり、その予想は当たっていた。


ベンが来てくれなかったから運ぶのが大変だったではないですか、と後で文句を言われたらしいが、運ばされるのもわかっていたから行かなかったのだと疲れたように言うベン。

場にいる全員から同情の視線を向けられる。


そのあと、他の七星剣は、王都外の警戒のためそのまま残り、ベンだけが王城へと戻った。

エリュトロスが召喚主の異変を感じとった為だ。


俺が力を使い切ったことによりエリュトロスは強制送還され、ベンが慌てて王都内へと入り、王城付近に転移したのが、ちょうど俺が降りていくところであった。

慌てて駆け寄り、俺を医務室へと運んでくれたのは、ベンとアステールであった。


先に治療を始めていたシュレルン公爵と一緒に、宮廷薬師長と、王都駐在の創造協会大司祭の回復魔法を持って治療される。

しかし、俺の方は外傷はあまりなく、内部がボロボロであったという話で、そこから宮廷薬師長が俺を、シュレルン公爵を大司祭がという役割分担がなされた。


シュレルン公爵は、俺の見立て通り命に別状はなかった。

だが、魔族に吹き飛ばされた衝撃で内臓に損傷を受けており、王城で治療を終えた後、自宅療養だそうだ。


俺はというと、宮廷薬師長の尽力もあったのだが、ユニークスキル「万有力引(エナジードレイン)」のおかげもあり、着々と力を回復していった。

これには宮廷薬師長も呆れるばかりであり、それを見た宮廷魔導師長が俺を研究したいとか言い始めて更に騒動になったそうだ。


「それで、宮廷薬師長のオフィーリアさんが面会謝絶にしたのが今日の朝。昼までには起きるだろうって言ってたけど本当に起きるなんてね」


それよりあのオフィーリアさんが宮廷薬師長だったのか。

オフィーリアさんの方がよほど儚げだったんだが、大丈夫なのか?


「でも大変だったのはそれだけではないのです」


フィオナ王女が鎮痛な面持ちで続ける。


一日経ち、魔族の襲撃がもうないと判断されたタイミングで結界を解除した。

それと同時に、王城の通信魔道具が鳴り始めた。

4つの辺境それぞれから通信があり、その内容は同じものであった。

曰く


『魔族の襲撃あり。至急戻られたし』


このうち、3つの辺境では防衛線が行われた。


西の辺境ガイアでは、冒険者と留守を預かる騎士団、何よりギルド長が大暴れをした結果、ほとんど町への被害はないそうだ。

襲撃の規模も前回の時より少なく、量より質であったようだが、ガイアに対するならば量を優先させた方がいい。

質では負けない面々がいるからな。


クインテス辺境伯の領地である、南の辺境・港町トウナールは、海より進攻があったようだが、クインテス辺境伯が鍛えたほぼ海軍と言えるような騎士団と、魔物であろうと退かずに戦う屈強な漁業組合の力によって退けられた。


北の辺境は、魔族の大陸と地続きであるが、危険な魔物も多数存在し、自然の猛威が吹きすさぶ雪山に阻まれ、魔族としてもあまり大規模な侵攻はできなかったようだ。

しかし、少数精鋭とでも言うように魔王直属の六魔将軍の一人が動員されており、一般兵には甚大な被害をもたらした。

どうにかこれを退けれたのは、第一王女の指揮能力と、王女が発見したオーパーツとも言うべき魔道具のおかげであるらしい。


問題は、東の辺境。

王国の鉱石事情の大半を占める多数の鉱山があるその地。


東の辺境、ブリシュナー辺境伯が治めるザルバニアは、鉱夫が多く、冒険者は少ない。

辺境伯が騎士団も引き連れて王都に来てしまったため、防衛の戦力となる者がほとんど残っていなかった。


東の辺境の先は大砂漠グランがあり、これまで襲撃などは一切なかった。

それ故に安心していたということもあるが、魔族はそこを狙い目とし、空から襲撃を行った。


空を覆うかのように襲撃してきた魔物と魔族の群れに、鉱夫たちはほとんど何もできなかった。

被害は甚大であり、この後何年かは再生出来ないほどの傷跡が残されたそうだ。


その報告が入り、ベンは空間魔法で各地に辺境伯を送り届けた。

警戒を終え戻ってきていた七星剣と一緒に。


西の辺境には、ラッセン辺境伯とギルバートが戻った。

南の辺境には、クインテス辺境伯と第五位ビクターが行く。

一番被害甚大であった東の辺境には、第三位ローレンスと第四位オーバンの二人が向かい、その際には更に何人かの騎士団幹部と辺境伯が連れてきていた主要な人員も戻された。


そして北の辺境には、イスベル辺境伯と第二位フィオナ王女が送られた。

これは姉を心配したフィオナ王女たっての希望であった。

しかし、いざ北へと行くとフィオナ王女は第一王女に追い返されることになる。

王族二人が王都を空けるわけにいはいかぬし、ここは私一人で事足りる。ということらしい。

なんて人だ。


というわけで第一位と第二位、第七位のベンが王都に留まる。

王都にベンが留まる理由は、何かあったときに空間魔法ですぐに駆けつけられるようにする為だ。


第一位は、王の傍を離れることを拒否したらしい。

更には、貴族たちが王都の守りを優先させるようにと圧力をかけてきたことも大きく影響しているようだ。


「あまり言いたくないんだけど、シュウと魔族の戦いの余波で王城周辺の損害がひどいことになってるんだよ」


気まずそうに言ってくるベンから目をそらす。

そらした先にトマスが、損害の概算表というものを出してきた。


白金貨で何枚必要なのか計算するのもめんどうになるような数字であった。

黒葉周 17歳 男 

種族:人間

冒険者ランク:A

HP:11200(100up)

MP:15400(3400up)

魔法属性:全

<スキル>

格闘術、剣術、槍術、棒術、弓術、刀術、棍術

基本六魔法、氷属性魔法、空間属性魔法、無属性魔法、神聖魔法、暗黒魔法、魔法陣術、召喚術

身体強化、魔力制御、完全回復

馬術、水中行動、天足、解体、覇気、看破、隠形、危機察知、魅了、罠解除、指揮

耐魅了、耐誘惑、耐幻惑、恒温体

礼儀作法、料理、舞踊

<ユニークスキル>

天衣模倣マスターコピー完全なる完結ジ・エンド・オブ・パーフェクト全知眼オールアイ識図展開(オートマッピング)天の声(アナウンサー)竜の化身(ドラゴンフォース)万有力引(エナジードレイン)

<称号>

「知を盗む者」、「異世界からの来訪者」、「武を極めし者」、「すべてを視る者」、「竜殺し」、「下克上」、「解体人」、「誘惑を乗り越えし者」、「美学に殉ず者」、「魔の源を納めし者」、「全能へと至る者」、「人馬一体」、「無比なる測量士」、「翼無き飛行者」、「竜の友」、「神掛(かみかけ)」、「破壊神の敵」、「半竜」、「湯治場の守護者」、「妖精の友」、「底なしの動力源」

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