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とある冒険者の漫遊記  作者: 安芸紅葉
第六章 迫り来る脅威「王都星天会議」編
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第114ページ 半竜vs魔人兵装

遅くなって申し訳ありません。

「ガハハッ!さぁ、続きをしようか!」


言葉と同時に、弾丸のような勢いで飛んでくる魔族の男。

どうにか反応するが、その速さは、竜の化身(ドラゴンフォース)を発動していなければ目で捉えることすら難しいだろう。


「避けるか!そうでなくてはなぁ!」


魔族は、楽しくてしょうがないと言わんばかりに、笑いながら再度突撃してくる。

先程は不意打ちだったが、今回は割と余裕を持って避け、カウンターに胴を薙ぐ。


ガキンッと音がし、鎧に斬鬼が弾かれた。


「なっ!?」


斬鬼は地竜の鱗でさえも容易に斬り裂いた。

鉄など論じるまでもない。


その斬鬼が、半竜状態であり、さらには相手の速度を利用したカウンターの斬撃をして、斬れなかった。

それは俺にかなりの衝撃をもたらした。


もしこれが斬鬼のように並々ならぬ高度を持つ刀ではなく、ただ切れ味のよいだけの刀であったならば、刀が折れていただろう。


「ガッハハッハ!無駄だ!この魔人兵装はとにかく硬いんだ!」


ガンガンと胸を叩きながら笑う魔族の男。


「だが、それならそれでやりようはある」


今度はこっちから攻める番だ、と俺は魔族に向かって飛ぶ。

それに対し今度は魔族が迎え撃つ構えを見せた。


俺は鎧の隙間を狙って斬鬼を振るう。

四肢と首、一瞬にして五振りするがあえなく鎧に阻まれる。


普通の鎧ならば、確実に通るはずの斬撃であったが、魔人兵装は普通の鎧ではなかった。


「無駄だ!魔人兵装は鎧のような関節などついておらん!これは鎧でありながら鎧でない!そういう意味ではお前のように鱗という感覚に近いかもしれんな!」


…魔族というのはみんなこんなに説明してくれるのだろうか?


「ふぅ。確かに、お前を斬鬼で斬ることはできないようだ」

「ほう?諦めるのか?」


魔族の男の返答には、隠そうともしない失望の色があった。

だが、それに俺はニヤリと笑って答えてやる。


「斬ることはな!」


斬鬼をキーの中に仕舞うと同時に、空を飛び、魔族に近付く。


「むっ!?」


最高速に近い速度であった為に、さすがの魔族も反応が遅れた。

魔人兵装とやらの硬度を信じていたせいもあるのだろう。


竜の爪撃(ドラゴンクロウ)


俺の爪が鋭く尖り、完全に竜のそれとなる。

その刃は、速度に乗れば斬鬼以上となる。


「がっ!?」


竜の膂力と合わさり、吹き飛ぶ魔族。

魔人兵装には、腹から肩にかけて三本の爪痕が残されていた。


「おやおや、自慢の鎧とやらも竜の力には敵わなかったと見えるな」

「く、くくく。面白い。そうでなくてはなぁ!」


ドンと音を立て、魔族の男は魔力を更に滾らせる。

常人であるならば、耐えることなど不可能な圧が生まれる。


「名を聞いておこうか」

「シュウ・クロバ。ランクA冒険者だ」

「その強さでランクAだと?ギルドとやらの基準はおかしいようだな!俺はダルバイン・クエーデ!六魔将が一人、メーア・ソトランク様一の配下!お前を殺す男だ」


尚も笑う魔族、ダルバインにこちらも笑ってやる。


「できたらいいな」


どちらからともなく踏み込み、空中で激突する。


いくら竜の鱗と化していても、こちらは生身だ。

当然、痛みは直接受ける。


だが、向こうの鎧とて、硬いだけであり、攻撃を通さないわけではない。

衝撃はきちんと中へと届いているはずだ。


それでも、俺達は純粋な膂力だけで殴り合いを続ける。

このダルバインという男は、魔族にしては珍しく肉弾戦が好きらしい。


俺が魔法を使わないのは、この魔人兵装というものにも、どうやら魔力吸収の機能がついているようだからだ。

魔法を吸収し、自らの力とするのか、それとも相手に向け放つのかはわからないが、どちらにしろ厄介なことには変わりない。


だが、そろそろ決着をつけねばなるまい。

前王の爺さんにすぐに終わらせると言ったのだ。


見る余裕はないが、俺達が飛び出した穴から心配そうに見ているのはわかっている。

本当ならさっさと安全なとこに避難していてもらいたものだが、安全な場所がどこかと聞かれると答えにくい。


ならば、こいつを倒し、この場を安全な場所とするまでだ。


「そろそろ終わりにするぞ!」

「ぐっ、ははぁ!楽しくなってきた所じゃねかよぉ!」


力では向こうが上。

だが、速さではこちらが上だ。


飛べば飛ぶほど速さは増しており、既にダルバインはこちらに攻撃を当てることが難しくなっている。

空中であるということもあり、上下左右を飛び回り、それこそ袋叩き状態であるのだから、当然だ。


むしろ竜の力で殴られながら、まだ原型を保っているのがすごい。

魔人兵装の硬度には呆れるばかりだ。


「いいや、これで終わらせる!」


右拳に力を集中させる。

あの結界は、神剣の助けがなければ破壊できなかったが、こいつは違う。


殴り合ってわかったが、あの結界ほどの強度はない。

竜の力だけでいけるだろう。


竜の驀進(ドラゴンチャージ)!」


速さで翻弄し、左の拳や脚で攻撃を入れながら、隙を作り、ダルバインの胸に思いっきり右拳を突き込んだ。


「ぐほぉっ!?」


一瞬の停止の後、力を後ろに逃さず全て相手の身体に叩き込んだことにより、ダルバインは吹き飛ばずに、ただ空中での制御を失い落下する。


俺の方も、今ので力がつきたので、ダルバインを追うように下へと降りる。


「はぁっはぁっ…」

「ぐっごっほ…」

「チッ、まだ息があるのか。なんて頑丈さだ」

「がっ、へっ、もう何もできやしねぇよ。すげぇじゃねぇか。久しぶりに楽しかったぜ」


ふらつきながらも立とうとしていたダルバインは、その言葉を最後に背中から倒れた。

しかし、どうやら気を失っただけのようだ。


魔人兵装が解除されていくが、まだ胸が上下している。

まったくなんていう生命力だ。


「ぐっ、はぁあ!疲れた…」


俺も膝をつき、仰向けに倒れる。

目を閉じる前に、駆け寄ってくるベンの姿が見えていた。


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