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とある冒険者の漫遊記  作者: 安芸紅葉
第六章 迫り来る脅威「王都星天会議」編
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第113ページ シュウの戦い

「お前は何だ?竜人(ドラゴニュート)か?いや、違うな。奴らにはそのような姿はなかった」

「俺は人間さ」

「人間?なんだそれは?おかしなことを。だが、俺の前に立ったんだ。敵ってことでいいんだよなぁぁ!?」


言葉と同時に魔族の男が突撃してくる。

俺は、それを迎え討ち、魔族とぶつかるタイミングと合わせタックルしてやった。


半竜状態の俺と、強化魔法のかかっていない魔族。

どちらが勝つかは明白だった。


「ぐはぁっ」


突っ込んできた勢いよりも更に加速し、魔族が吹っ飛ぶ。

ちょうど開いていた扉から廊下に転がりだし、反対側の壁にぶつかるが、それでもなお勢いは止まらず、壁を突き破り屋外へ。


「シュ、シュウ君なのか…?」


後ろから前王が尋ねてくる。


完全には振り向かず、首だけを回し横目で後ろを確認。

シュレルン公爵以外は無事なようだ。


「そうです。このような姿で御前に罷り出た非礼をお詫び申します」

「そ、そんなことはよい!それよりその姿は一体…」

「事情は後ほど。公爵は大丈夫ですか?」


俺が間に合わなくて公爵に何かあったのだとしたら、後を任せてきたベンに後で殺されてしまいそうだ。

あいつは、今世の家族もとても大切に想っている。


「わ、私は大丈夫だ。それより、ベンはっ…」


その答えに、俺は思わず笑ってしまう。

やはり、親子ということなのか。


あいつの親だというと心配をかけられてばかりなのだろう。

同情を禁じ得ない。


「ご安心を。ピンピンしておりましたよ」


そう答えると、安心したように力が抜け、バタリと倒れ伏したまま動かなくなった。

慌てて、宰相と国王が駆け寄る。


どうやら命に別状はなさそうだが、しばらくは安静だろう。


「それでは、私は魔族を片付けて参ります」

「や、やったのではなかったのか!?」


侯爵の一人が甲高い声を上げる。

他の侯爵もだいたい似たような表情をしていた。

恐怖に染まった表情を。


「まだです。ですが、ご安心を。すぐに終わらせます」


後ろからかかる声を無視し、一歩の踏み出しで、先ほど魔族が飛び出た穴から外へと出る。


翼を広げ、眼下へ視線を向けると、目を爛々と輝かせた魔族が飛んでくるところであった。


「あのように吹き飛ばされたのは久しぶりだぞ、人間!」

「そりゃどうも!」


魔族の手にはどこから取り出したのか、赤い矛が握られており、俺も斬鬼を握る。


神剣を使えば、勝負はあっという間につくかもしれないが、あれは力がでかすぎて対個人には向かない。

通常サイズの人型のものと戦うのなら、斬鬼の方が戦い易いのだ。


斬鬼と矛が打ち合う。

こちらは竜の翼を用いて飛び、魔族は魔法で飛んでいるようだが、空中戦であることに変わりなく、上下左右もまるで関係なく斬撃が飛び交う。


先ほどまで上にあった頭が下にあり、蹴りかと思えば拳が飛んでくる。


上下運動を利用し勢いをつけ、上下運動を利用して勢いを殺す。


武器での仕合では勝負がつかないと思える程の互角。


こちらは「竜の化身(ドラゴンフォース)」を使っているし、向こうは身体強化の魔法も併用している。


魔法を使いっぱなしの分、魔族の方が不利であるかのように思えるが、先ほど一度全力を出したこともあり、俺の体力もあまり余裕があるというわけではない。


「くくっ、面白い。面白いぞ、人間!そうか、お前がスパンティウム様が危惧し、ガイゼンを殺った男か!」

「だったらどうした!」


ガイゼンというのは深淵の森で会ったあの男の名前だ。

特に覚えていたわけではないが、ちょうど会議の資料に名前が出ていた。

トマス辺りが報告していたのだろう。


「ならばまだまだ楽しめそうだということだ!簡単に死ぬんでないぞ!」

「なに!?」


魔族が懐から取り出したのは、何らかの結晶。

どこかで見たような光景に、俺はまた魔人巨兵かと思ったが、違った。


「魔人兵装!」


魔族が叫ぶと同時に、魔族の身体を紫の魔力が包む。

一瞬にして魔族の身体は見えなくなった。


魔力は徐々に硬質感していき、遂には鎧へと変わる。

それは、魔人巨兵が着ていたものと同種のものであった。


「ガハハっ!さぁ、続きをしようか!」


紫色の兜の奥。

両目を赤く光らせながら、魔族の男は笑いを含む声で告げる。


先ほどよりも遥かに大きな魔力を醸し出しながら。

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