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とある冒険者の漫遊記  作者: 安芸紅葉
第六章 迫り来る脅威「王都星天会議」編
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第112ページ ベンの戦い

今回はベン視点でお送りします。

「いきなりなんのさ!」


手が空いたからシュウを手伝いに来たのに、またしても全て押し付けられた!!

あいつは本当にそういうとこあるよね!?


「それで!?君がエリュトロスさん!?どういうことか説明してくれるよね!?」

『う、うむ』


初めて見る火竜ではあるが、シュウが火竜と召喚契約を結んだことは聞いていた。

ここには他にアステールしかいない以上、この火竜がエリュトロスということになる。


どこか気後れしたように感じるエリュトロスがここまでの経緯を説明してくれる。


「王城に…侵入者?」


あそこには、父さんがいる。

他にも、騎士団や宮廷魔法師に友人もいるし、国王陛下や、閣僚方にはお世話になってばかりだ。


みんながいるあそこに…侵入者?


「っ!ぐっ…」


咄嗟に踵を返し王城へと向かおうとする足を止める。


王城にはすでにシュウが向かっている。

俺はシュウからここを任された。


今俺がやるべきは、ここで魔人巨兵を倒すこと。


その時、後ろから何か強大な力が感じられた。

思わず振り向くと、何やらすごい姿をした人型の何かが結界を破ろうとしている。


「な!?」

『ふむ。使ったか』

「え!?」


敵かと思い、飛び出そうとした瞬間に、エリュトロスのどこか穏やかな声が。

それは、あれの正体を知っているということを意味していた。


「あれは…シュウなの?」

『そうだ。ユニークスキル「竜の化身(ドラゴンフォース)」。魔力が枯渇した状態で、我らの魔力を注ぎ込まれたことによりシュウの中に新たな力が生まれたのだ』


そんな話は聞いたこともなかった。

そもそも竜が珍しい存在であるし、竜が自ら人を助けようとして魔力を渡すとは。


『元々あいつは竜の因子を持っていた。竜殺しという形でな。その因子と我らの魔力。そして、あいつの能力、器、様々な要因が重なり合って生まれた、奇跡とも言える力だ』


目の前で起こっている現象が信じられなかった。


あの結界は、特級魔法にも耐えられる仕様だ。

それを、ただ一人で破る?


人の形をした竜が、右手に持つ刀を振るう。


その刀からも、尋常ではない力が感じられ、あれが自分の持つ精霊剣と同格以上の力を持つことがわかる。


刀の刀身が一瞬伸びたかと思うと、遂に結界が一部だけではあるが、破壊された。


シュウは、自ら開いた入口から強引に中へと侵入。

俺でも目で追うのがやっとの速度で王城へと飛んで行った。


「…ふ、ふふ…もう、俺では勝てないよ」


自分とシュウとの間にできてしまった力の差を再確認し、逆に清々しい気分になる。


そんなことできるのかはわからないが、いつか絶対に追いついてやるという思いを固め、魔人巨兵へと向き直る。


完全に起き上った二体の魔人巨兵。

しかし、あれを見たあとでは、脅威だとは思えなかった。


「悪いけど、俺の糧になってもらうよ」


精霊剣を抜き、魔力を集注する。


精霊剣が持つ、特殊能力。

精霊への指揮権が発動する。


「集え我が下に」


周囲から色鮮やかな光球が集まってくる。


何度見ても飽きないその幻想的な光景に、頬が緩む。


「行くよ」


精霊に呼びかけると同時に、空中を走る。


シュウが使っているようなスキルではない。

これは空間属性魔法だ。


「〈空間凝固(ソリッド・ディメンション)〉!」


本来は、空間を固めることで敵を拘束し、動けないようにする魔法であるが、俺はそれを用い、足場を作ることで空中を駆けることができる。


空間魔法の発動には、通常のものより遥かに神経を使う必要がある。

ここまで器用に使えるようになったのは、やはり師匠のおかげであった。


師匠が遺してくれた物がなかったら、自分はこれだけの力を得ることはできなかっただろう。


改めて、随分昔に逝ってしまった師匠に感謝し、今は敵を倒すことだけに集中する。


空間切断(ディメンション・カット)


剣戟に魔法を乗せ、放つ。

空間を切り裂く魔法は、魔人巨兵を捉え、何もさせないまま一瞬にして巨大な体躯を切断する。


エリュトロスは、魔人巨兵の復活の法則がわからなければキリがないと心配していた。

でも、俺の場合はそんな心配をする必要は特にない。


魔人巨兵を生け捕りにする必要もないし、必要ならグラスさんが確保しているだろう。

あの人の力なら余裕だ。


だからこそ、排除するだけでいいのなら、勝負は簡単につく。

切断が成った時に既に勝敗は決していたのだ。


異次元形成(アナザーワールド)


別次元へのゲートを開き、切断した魔人巨兵の身体を押し込む。

全て入れたら閉じてしまえば終了だ。


これは師匠の必殺技でもあった。


さすがに魔人巨兵全体を入れれるほどの大きなゲートは俺では開けないので、切断する必要はあったが、大抵の相手にはこれで片がつく。


ゲートが閉じた後には、何も残らない。


「エリュトロスさん。俺は、他の皆の所へ行く。状況も伝えないといけないし、王城へはシュウが行ったからね。君はどうする?」

『…我らは、シュウの下に向かおう。必要はないかもしれぬが、一応今は主なのであるからな』


そう言うエリュトロスに頷き、俺は次の戦場へ向け走る。

一番心配なのはビクターさんだ。


俺は戦いを愉しむ為に自分の怪我など気にもしないあの愉快な人の所へと走っていた。


ユニークスキル「見稽古(マスターコピー)」を「天衣模倣(マスターコピー)」に変更しました。

スキル効果に変更はありません。

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