第103ページ 王家の事情
「フィオナ殿下は第一王妃様の二人目の子だね。洋服と甘いものに目がないよ」
…後ろの情報いるか?
一日一番街を散策したことで、今日は一番街エリア全てのマップを埋めることに成功した。
どこにどんな店があるのかも大体把握できたので、後は人気の店なんかの調査だな。
帰宅してベンとジェイコブさんと一緒に食事を摂る。
シュレルン家は、できるだけ家族で食事を摂るようにはしているが、みんなそれぞれ忙しい為なかなか難しいそうだ。
しかし、朝食は必ず全員で食べている。
当主であるシュレルン公爵の意向だそうだ。
今日あったことを報告すると、第二王女のことを少し教えてくれた。
在命の王族は、前王、国王、第一国王妃、第二国王妃、第三国王妃、第一王女、第一王子、第二王女、第二王子だ。
そのうち王女たちはどちらも第一王妃の子ども。
第一王子は、第二王妃の子ども。
第二王子は、第三王妃の子どもで、まだ1歳にも満たない。
第一王妃が男児を生まなかったことで、当時は何やらあったようだが、今ではそんなことはなく、第一王子が次期国王となることが決まっている。
第一王子は現在23歳。
第一王女は24歳。
第二王女は16歳。
この国は、男尊女卑というわけでもなく、閣僚の中には女性高官もいる。
しかしながら、女王というのは過去前例がないそうであり、第一王女が自ら身を引いたという話だ。
第一王女は、自分は王には向いてないからならないと、宣言してしまった為に、それまで第一王女派だなんだと言われ、第一王女を女王に召し上げ甘い汁を啜ろうとしていた輩は大慌てになったという。
結局今はそういった貴族のほとんどがお家断絶となっていた。
しかし、それだけではなく、同じように第一王子を祀り上げて利益を得ようとしていた者たちも処断された。
これにより、王家が一芝居打って、信用のおけない連中を一網打尽にしたのでは、という噂が流れたが、その真実を知るものは少ない。
ベンは知っているそうだが、さすがに教えてはくれなかった。
ただ、あの前王ならばそういうことは簡単にしそうであるし、ベンが知っていることから絡んでいるのだと思うと、もしそうであったなら、何か大きな事件があったのだとしても納得できる。
なんせこいつはトラブルメーカーだからな。
俺がそういう気持ちを込めてベンを見ると、伝わったのかベンの顔が不機嫌そうになる。
まったく、察しのいいやつだ。
「どうかした?」
「いや、王妃が多いなと思ってな」
「ああ、向こうの価値観からしたらそうかもね。でも、こっちではそれが普通だよ。むしろ高位貴族は正妻の他に側室を何人か娶らないといけないっていう感じ」
「だが、公爵は夫人だけだよな?」
「うちは特別だね。父はあれで一途な人だから」
「私には二人の女性を一度に愛せる程の器量はない。だが、君だけは幸せにしてみせる。だから結婚してくれないか?っていうのがあの人のプロポーズだったのよ~?」
「「お母さん!?」」
いつの間に来たのか、公爵夫人が後ろにいたようだ。
全く気付かなかった。
そして、プロポーズの言葉を暴露される公爵。
これは恥ずかしい。
聞かされた息子ふたりも複雑そうだ。
「お茶会は終わったんですか?」
「ええ。今日は早く済んだのよ」
公爵夫人は毎日のように出かけている。
それなりにお金がかかっているようなのだが、公爵家のお金からは一切出していないのだそうだ。
どこから出ているのかは聞かない方がいいと言われた。
「話しは変わるけど、そういえば最後のお客様が到着したようだよ」
「へー?ということは…」
「うん。明後日、王城で会議が開かれる。多分、シュウはラッセン辺境伯と一緒に登城することになると思う」
「わかった。明日辺境伯のところに顔を出してみるよ」
いよいよ王都に来た目的である会議か。
いや、ほんと俺が出る意味がよくわからない。
公爵はもちろん、ベンも七星剣として出席しなくてはならない。
顔見知りが何人かいるのが救いではあるな。
聞けば、星天会議と呼ばれるその会議に、冒険者が参加するなんて初めてのことだそうだ。
名誉なことだよって笑いを堪えながら言われても嬉しくはなかった。




