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とある冒険者の漫遊記  作者: 安芸紅葉
第六章 迫り来る脅威「王都星天会議」編
118/358

第97ページ 再会

長くなりませんでした。

キリのいいところまでとなるとこれの倍以上になってしまいそうで…

翌日。

予定通り、ラッセン辺境伯は、ギルバート、クインテス辺境伯、それにお付きの騎士たちを連れて王城へと向かった。


今回の緊急会議、星天会議というらしいが、その会議の参加者である侯爵以上の諸侯は、あらかじめ宿泊場所を決められてあり、王都で一番の高級宿に泊まっている。


その付き人である騎士や、俺のような冒険者は各自で寝床の確保をしなければいけないが、それもある程度は融通が効くようだ。


しかし、間の悪いことに俺たちの前に王都入りをしたブリシュナー辺境伯が引き連れてきた人員で、辺境伯たちが泊まる宿の周辺の宿も埋まってしまっていた為一苦労あったが、どうにか宿の確保はできていた。

さすがに王都というだけあって、宿の多さも尋常ではない。


ただ、俺の場合はアステールがいることもありかなり無理を言って、いい厩がある宿を見繕ってもらった。

唯一一部屋だけ空いていたので滑り込みセーフというやつであろう。


そんなわけで、今日は俺とアステールと二人での王都観光となっていた。


王都は、今まで行ったどの都市よりも大きく、にも関わらず、どの都市よりも人で賑わっているから恐れ入る。


「さて、どこに行こうかね?」


と言っても、案内人がついているわけでもなく、王都の観光マップがあるわけでもない。

どこに何かあるかなどさっぱりわからないので、適当に散策するだけだ。


王都は、ガイアと違い、ちょっとずつその大きさを増やしていったらしく、ジャンルごとの区画整理が行われていない。

代わりに、王城を中心としており、それを囲むように一番街、二番街、三番街と円上の街となっている。


一番街は、貴族や貴族が利用する高級店。

辺境伯たちが泊まっている宿もこの区画にある。

そのほか、有名な武器防具店や、魔道具店もあるが紹介状がなければ入ることも難しいらしい。


幸い俺は、ラッセン辺境伯という国内有数の貴族の知り合いがいるため、買い物はできるが、あまりアステールを連れて歩くことはお勧めできないと言われた。


もちろん、店の人は、従魔を連れた冒険者とて客であることは変わりないので、邪険に扱ったりはしないが、一部そうは思わない貴族もいるようで、そういうプライドだけが高い貴族と遭遇すると、十中八九めんどくさいことになるそうだ。


俺も極力貴族というものに関わりたくないため、一番街をうろつくのは止めた。

俺の泊まっている宿は、二番街である。

基本貴族というものは、一番街から出ないそうなので、二番街にいれば安心ではある。


逆に、三番街まで行くと、今度は平民の居住区が多く、店もあまり見て面白い物はないようだ。

住民の為の店が多いようで、店自体もあまり多くない。


自然、俺は二番街をうろつくことになるのだが、そう考える人は多いので、どこであろうと人でひしめき合っている。

前に修学旅行で行った地球の首都よりはマシであろうが、この世界でこういった光景は初めて見た。

アキホでさえ、これよりはマシだったというのにだ。


「うーん…ここら辺は工房が多いなぁ」


今いるところは二番街の南西部辺りになるだろう。

最初はアステールが臭いに誘われ、料理店が乱立している方へと連れて行かれた。


なんの肉かわからない串焼きを買ってやると、満足したのかその後は黙って付いてきていたが、人の少ない方へと進んだ結果、商業が盛んではない場所に来てしまったようだ。


偶に、店舗と工房が一緒になっている店もあるにはあるが、あまり惹かれるようなものはない。


どうも貴族街にある店がいい店すぎて、こちらにはあまりいい店が入っていないようだ。

と言っても、質が悪いわけではなく、一般的にみれば良い物に入るのだろうが、ガイアの親父さんの剣やアタミ伯爵の魔道具など最高品物を見ていると、そこまで欲しいとは思ってこない。

贅沢な悩みだよな。


結局俺は、とりあえず識図展開の地図を埋めることにする。

二番街だけでも今日だけで回りきれるわけではないので、地図だけ作っておいてやることが終わってからゆっくり回ろうと思う。


そんなわけで、一日かけて王都の地図作りに励んだのだが、二番街さえ埋まらずに戻ることになった。

ちょっと広すぎるし、何より飯の時間になるとアステールが飯屋に異常な力を発揮して行ってしまうので、思ったように地図製作が進まなかったのだ。

まぁおかげで俺もうまい飯屋を見つけることができたからよしとする。


---


「おかえりなさいませ。お待ちしておりました」


宿に戻った俺を出迎えたのは、宿の人でも、王都に一緒に来た者でもなかった。

しかし、まったく知らない相手ではない。


「……何故お前がここにいるんだ、トマス?」


宿のロビーで俺を待っていたらしい人物。

この国で二家しかないシュレルン公爵家、その次男でありとある依頼で俺の友となったベンジャミンの従者をしているこの青年。


今日は、騎士のような鎧を着てはおらず、栗毛色の肩にかかる程度の髪を後ろでくくり、身なりのいい格好をしている。


トマスは一礼していた姿勢からゆっくりと体を起こすと、ニッコリと笑って告げる。


「ベンジャミン様、及びシュレルン公爵が晩餐の準備をしてお待ちです。馬車がございます、ご案内いたしますのでどうぞ、シュレルン家へ」


やはりそういう用事か。

拒否権はないらしい。


というか、俺が断るなんて微塵も考えていないようだ。

これは、別に強制というわけではないし、トマスにしろ公爵家にしろ俺を強制的に従わせる権限はない。


断ってもいいのだが、ベンが折角招待してくれているというのだ。

ご相伴に預からせてもらおう。


どうせベンには話したいことがたくさんあったのだからな。

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