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とある冒険者の漫遊記  作者: 安芸紅葉
第五章 王都までの道中「花の谷と妖精郷」編
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裏話 暗躍せし魔人

「うふふ。面白い子に会ったなぁ。あーあ!でも、蜂蜜のお菓子食べたかったなぁ」

「お前はいつも食い物のことばかりだな」


とある崖の淵。

足だけをプラプラと振っていた少女、グニトラの背後から、壮年の男が歩いてくる。


男が近づいてくるのをわかっていたグニトラは、ゆっくりと振り向き、ヒラヒラと笑顔で手を振る。


「はぁい、ラドイプ!お久しぶりね☆」

「そうだな」


ラドイプと呼ばれた男は、グニトラと同じくピンク色の髪をし、オールバックにまとめた短髪。

引き締まった体格は、白い肌を虚弱と見せない。


「ヴィーが裏切った」

「…へー?」


一瞬だけ驚いたように目を丸くしたが、グニトラはすぐに笑顔を取り戻す。

だが、その笑顔は今までのものとは違い、邪気を含んでいた。


「あいつは昔からどこか変だったもんねー」

「そうだな」

「これで私たちは4人になっちゃったのねー」

「ウロスは動くまい。実質3人だ」

「トーラスは?」

「魔大陸だな」

「なるほど…」


ここにはいないもう一人の仲間を思い浮かべる。

自分の姉のように思っている彼女は、今この世界でも危険地帯といわれる魔大陸にいるそうだ。


彼女の実力からして心配はいらないとは思うが、手伝いに行ったほうがいいだろうか?

いや、自分が行くと邪魔になりそうだ。


「あなたはこれからどうするの?」

「私はもう少しこの大陸にいる。火種はいろいろと転がっていそうだ。お前はどうする?」

「そうねーなら私は獣大陸に行ってみようかしら」

「3人で散る形か。悪くないな」

「それにあの大陸には美味しい料理があるって話だし♪」

「そっちが本音だな?まぁいいだろう。それではまたな」

「はぁい」


ヒラヒラと手を振ると、ラドイプの姿が一瞬にして消えた。

おそらくはまた火種を煽りに行ったのだろう。


「働き者ねぇ。自分が一番だと思っているくせにねぇ」


あるいは、だからこそかもしれないと考えながら、グニトラはかつての仲間たちに思いを馳せる。


この世界の住人であるなら、相手がどれだけいても勝てる自信がある。

にもかかわらず、既に三人死んでいた。


仲間ではあるが、そのことに胸を痛めたりはしない。

自分たちはそういった感情とは無縁なのだ。


「もうすぐ門が開ける。どうなるかしらね~?」


門が開けば大量の仲間たちがこの世界に来れる。

乗っ取りはたやすいはずであるが、先ほど会った異世界人を思い出す。


「一筋縄ではいかないかもね~」


勝てないとは言わない。

だが、勝てるとも言えないのが事実であった。


グニトラはそれでも笑みを浮かべながら、その姿を虚空に消した。

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