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とある冒険者の漫遊記  作者: 安芸紅葉
第五章 王都までの道中「花の谷と妖精郷」編
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第93ページ 魔人

魔人について、俺は悩んだ結果、今は話さないことにした。

ラッセン辺境伯に相談してからにしよう。


俺と会った時の反応からして、辺境伯も魔人という存在を知らないのではないかと思う。

異世界人について文献を調べたこともあるが、魔人については何もなかった。

詳しいことがわかるまで広めるべきではないだろう。


結局今回のことはわからないことだらけだ。

グニトラは菓子目当てだと言っていたが、彼女の力ならばあのような陽動工作をせずとも菓子の強奪くらいできたはずだ。

空間魔法を使えるのであるならば、それこそ容易に。


わざわざ危険を冒して子ども達を使ったり、人を操って使ったりする必要がないはずなのである。


だからこそ、俺はフランチャー子爵に首謀者には逃げられたとだけ伝えた。

悔しそうに告げる俺に、フランチャー子爵は気にしなくていいと言ってくれたが、そういうわけにもいかない。


目の前でむざむざと逃げられてしまったのだ。

少し自分の力を過信していたようだ。


初めから竜の化身(ドラゴンフォース)を使っていれば捕えられただろうか?

言っても仕方ないことだが、あの謎の存在を謎のまま逃がしてしまったことは後々かなりの失敗となりそうな気がする。


---


宿に戻った俺を、ラッセン辺境伯が出迎えた。

色々と話を聞きたそうにしているが、とりあえず町を出発することにする。

一日二日はどうってことないようだが、予定より少し長く滞在してしまったからな。

話は道中でもできるし。


出発するという俺たちを、忙しいはずの子爵が見送ってくれた。

その際、今回の件の報酬として蜂蜜と洋菓子を頂く。


首謀者を捕まえれなかったからと、断ろうとする俺に、依頼したのは蜂の巣に魔法薬を使った犯人を見つけることで、それは見事に達成してくれたからと押し付けてきた。

ありがたく貰っておくことにする。


サルベニーを出るときに、ふと視線を感じてそちらを見ると、黄緑色の服を着た少年と、ピンク色の服を着た少女が嬉しそうにこちらに手を振っていた。

俺も笑って手を振ってやると、更にブンブンと手を振ってくる。


一瞬、ほんの一瞬だけ、少年たちの後ろに綺麗な女性の姿が見えた気がした。

気のせいかな?

また会いに行かないといけないな。


---


「魔人か…」

「そう名乗っていた」


サルベニーを出発してほどなく。

俺は辺境伯とギルバートに事件の顛末を説明していた。


「それは確かに言わなくて正解だったかもしれんな。魔人なんてものはお伽噺だと思っていたよ」

「…」

「お伽噺?」


---


闇より来たりて、人に化け、人となりて闇へと拐かす。

月のない夜は出歩くな。

奴らは君の隣にいるかもしれない。

昨日の友は、隣人は、恋人は、今日も君の知っている人とは限らない。


----


「へー?」

「子どもに注意を促す類の作り話だと思っていたんだが…」

「実在したと…そんで、あんたは知っていたみたいだな?ギルバート」

「何?そうなのか、ギルバート?」


沈黙していたギルバートに疑問を向ける。

ラッセン辺境伯も知らなかった事実をギルバートが知っていた理由。

七星剣という立場から国の危険について機密情報を知っていてもおかしくはない。


「はい、存じておりました。こうなってはお話しないというわけにもいきますまい。しかし、始めに申しておきますが、私とて詳しいことを知っているわけではありませぬ」


---


初めて魔人という存在が確認されたのはもう何百年も前の話。

その時は、居合わせた錬金術師と名乗る男により未然に防がれたが、魔人の狙いはこの世界の乗っ取り。

魔人たちの世界は決して住みやすい場所ではなく、この世界を求めている。


魔人の能力については様々であり、個体によって違う模様。

魔人は自らの能力をスキルではなくアビリティと称している。

しかし、その全てが強力な物であり、魔人の基本戦闘力も軒並み高い。


何より恐るべきは、魔人が人を取り込み化ける能力を持っている点。

一度取り込まれた人は助からず、魔人の擬態は識別方法が今のところ判明していない。


---


「……」


かなり詳しくわかっていると思うのは俺だけなんだろうか?


「最近の話ですと、ベンジャミン殿も魔人を一人倒されていた筈です。この話は代々各国王族と七星剣のような各国主要戦力にのみ伝えられている情報で、私がこの話を聞いたのも七星剣として任命された直後になります。機密とされていましたので話せず、申し訳ありませんでした」


ギルバートが辺境伯に頭を下げる。

だが、ラッセン辺境伯は手を振ってそれを止めさせた。


「いい。このような話が広まれば混乱を招くことは必至だ。秘密にしなければならないのもわかる。何より王の命令なのであれば、私がどうこう言う話ではない」

「はっ、ありがとうございます」


魔人か…

王都に行ったらベンに話を聞いてみないといけないか。

あの魔人を倒したのだから、さすがというべきだな。

逃げられた俺が話を聞きに行くのは何とも恥ずかしいが、仕方ない。


王都まではあと少し。

議題がもう一つ増えた気がするが、俺のせいではないはずだ。

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